韓国文大統領の動向に注目していたが、理解できない言動が多すぎるように思えてならない。
韓国の頭越しに進んでいた米朝首脳会談の開催が見送りとなった時に、文大統領が韓国の存在を印象づけるために米朝の橋渡し・調停役を買って出たことは当然のパフォーマンスであろう。しかしながら、当時の文大統領の立ち位置と主張は、北朝鮮の即時かつ非可逆的な核兵器放棄を進め、朝鮮戦争の終結宣言や南北の統一は北の非核化実現後のテーマとする日米の要求や時程表に合致するものであったと思う。しかしながら、米朝首脳会談の開催促進を調停するはずの南北首脳会談で北朝鮮から「朝鮮戦争終結宣言」「平和協定締結」という望外の提案を受けた文大統領は舞い上がってしまい、あっさりと北の主張する朝鮮半島の段階的な核放棄にシフトチェンジしてしまった。北の主張は国境を確定して南北分断を恒常化するとともに、内戦の休戦状態を監視する国連軍と在韓米軍を半島から駆逐することを目指しているのは明白であるにも拘らず、易々と金正恩の思惑に取り込まれてしまった。かねて掲げる南北統一理念と相反する要求を文大統領が認め、理論破綻した政治姿勢を露にした真意は全く不明であるが、以後の中国訪問や国連主導の経済制裁すら無視するかのような対北支援を見れば、韓国を北に差し出すことも視野に入っているのかも知れない。その証拠に、北の侵攻作戦に利するであろうDMZ内の地雷撤去にまで踏み切ってしまった。今や親北姿勢を隠そうともせずに北が廃棄した寧辺核施設の対価をアメリカに迫る文大統領は、西側諸国から北朝鮮の主席報道官とも揶揄されているが韓国国内では依然として50%近い支持率を維持している。朴政権下では一部の人間に対する利益誘導疑惑が大規模デモに発展し、大統領罷免にまで追い込んだ韓国世論が、全国民の安寧を脅かしかねない文政権に寛容であることも自分の理解を超えている。
日本でも、憲法論議よりもモリ・カケを重視するように、野党政治家は将来に亘って成否が不確かな国家の経綸を論じるよりも、閣僚の失言と役人の不祥事を追求することに熱心な傾向がある。日本の安全保障に重大な影響を及ぼすであろう南北朝鮮の動向について、真剣な議論が行われないのは何故だろうかと思案するものである。