もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

中国の神隠しに思う

2018年10月08日 | 中国

 中国での神隠しが相次いで報じられた。

 最初は国際的女優ファン・ビンビン(范冰冰)氏、次いで国際刑事警察機構(ICPO:インターポール)総裁の孟宏偉氏、いづれも中国当局による拘束が確実であるにも関わらす、中国は拘束の事実・罪状・安否すら公表しなかったものである。今日になって、范冰冰氏の罪状が脱税であり150億円近い未納税金と追徴金を年末までに納付すれば刑事罰が科せられないことが明らかにされた。また、孟宏偉氏はICPOに総裁辞任を伝えてきたためにICPOが総裁辞任を認めたことも明らかとなった。まさに”神隠し”と云うべき出来事であったが、上記2氏は国際的に知名度と国民の関心が高いことから比較的早期に動向が明らかとなった。しかしながら、中国では神隠しは常態化しているのは公然とされており新疆ウィグル自治区等では100万人単位の神隠しも取り沙汰されている。ソ連邦の崩壊とともに、東側社会で横行していた秘密警察による不満分子の摘発・隔離は、今も中国では健在と思われる。更には、いかに初犯と雖も范冰冰氏が追徴金を納付すれば刑事訴追されないことも、現代の法治国家では考えられない司法手続である。孟宏偉氏については更に不幸な結末が予想される。氏は、国家間にまたがる中国高官の腐敗・不正摘発を察知・立証して習近平主席の腐敗運動撲滅を加速させるために中国から送り込まれたものであり、習指導部の暗部を含めて高官の不正に関する多くの情報を持っているものと推測されるので、全ての情報を吐き出した後には罪状はおろか、生死すら明らかとされることもないだろう。日本では「人命は地球よりも重い」として保護されるが、死刑の費用まで刑死した家族に請求されるという中国では、人命よりは銃殺に要した銃弾の方が高価とされているようである。

 日本でも、天狗の仕業とされる神隠しの逸話が残されているが、神隠しの実態が拉致であったり、性犯罪であったことが明らかになったケースも多い。我々庶民は、歯向かうことなど思いもよらない権力者や狂信者の所業を、天狗の仕業として無理に納得していたものであろう。おそらく現在の中国人も天狗の正体が共産党指導部であることは知りつつ、同じ諦観の下に生活しているのであろうが、なんとも切ないものである。