米軍のアフガン撤収作業が数日中にも完了する見通しと報じられた。
先に第7艦隊の空母ロナルド・レーガンが撤収作業支援のために抽出(スイング)されることに際して、撤収作業の長期化の場合は極東地域の米海軍兵力の空洞化を懸念すると書いたが、杞憂に終わりそうな状況である。
報道によれば、既に輸送機896機分の機材輸送が完了しているとされているので、米軍の代表的な長距離輸送機のペイロードを調べて見たら、C-17(グローブマスター)/77㌧t、C-5(ギャラクシー)/122㌧、となっていたので、1機当たりの搭載量を50㌧としても45000㌧の資器材を持ち帰った計算になるが、重要な軍用器材を除いてはアフガン政府に供与するのであろうから米軍が投入・維持していた資器材は膨大なもので、他国への本格的な軍事支援には莫大な経費・資器材が必要であることが窺える。
ちなみに、自分が関わったカンボディアPKO撤収では作業車両の多くを現地に供与したとはいえ、要した兵力が旧型輸送艦2隻であったことを考えれば、支援米軍の規模が殊更に実感できる。
記事では、撤収後も大使館警護に650人、カブール国際空港の警備支援に300人の米軍人が残留するとされている。アメリカのアフガン撤退の前提は、アフガン政府抜きで行ったタリバンとの和平合意であるが、ここ数週間でタリバンの支配地域は政府側の約1.7倍に拡大したともされており、米軍撤収後には再びアメリカ介入前の内戦状態・タリバンの国に戻ることは確実であるように思える。その際にはアメリカ協力者に対する凄惨な報復が行われるだろうことは過去の例から見ても確実視されているが、家族を含めれば数千・数万人に及ぶであろう彼等の避難・出国は時間的・手続き的に見て不可能ともされているので、国際空港警備支援要員の残留は避難路確保・維持のための措置かも知れない。
サイゴン陥落時にはアメリカ政府に保護された米軍協力者の高官を除く一般市民の多くがボートピープルとなって洋上に逃れ、少なからぬ人が亡くなったであろうが・少なからぬ人が新天地への逃避に成功した。しかしながら、内陸国アフガンでは国境を接するパキスタンを始めとする国が米軍協力者を積極的に受け容れることは望めないように思えるので、アメリカは彼等の避難に対して米軍人の撤収と同等の努力を傾ける必要があるように思える。