もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

二刀流考

2021年07月15日 | 社会・政治問題

 MLBオールスター戦で大谷翔平選手が1番DH・先発投手の二刀流で魅せた。

 残念ながら奪三振・安打もならなかったが、中継で見る限り出場選手・観客は伝説のベーブルース以来の快挙として大谷選手に大きな敬意を払って声援を送っているように感じた。
 日本のオールスター戦でも、二刀流を果たした選手がいる。
 1996(平成8)年のオールスター第2戦・9回表・2死・売り出し中の松井秀喜選手(巨人)の打順、全パの仰木彬監督(オリックス)はライトを守っていた至宝イチロー選手(オリックス)に登板を命じた。全セ野村克也監督(ヤクルト)が松井選手と会話する等逡巡する動きを見せたので仰木監督はベンチ前で野村監督を挑発した。しかしながら、野村監督は松井選手の代打に高津臣吾投手(ヤクルト)を送って、仰木監督の挑発を躱わしたものの、観客の反応は、投手交代を大歓声で受け止めたが代打指名で一挙に大ブーイングに変わったとされている。
 この背景には、「オールスター戦は勝負よりもファンが望む最高のショーであるべき」と考える仰木監督に対して、野村監督は「オールスターは選ばれ選手が真剣勝負する夢舞台」という意識の違いがあったとされているが、観衆の大歓声と大ブーイングの対比を見る限り、野村監督のファンを無視した独りよがり・自慰行為でしかないように思われる。このことは、MLBのオールスター戦では選手が最高のショーのための全力プレイに徹しているのが明らかであるのに対して、JPBではショウー・プレイのいずれにも中途半端な怠慢プレイが随所に見られる実状からも明らかであるように思える。

 仰木・野村両監督の采配にも明らかであるように、プロ野球をショーと観るか勝負の世界と観るかについては野球界でも分かれているようであるが、自分としてはショーの要素に重きを置くべきと思っている。昭和30年代、西鉄ライオンズは智将と呼ばれる三原監督が率いていたが球団自体は野武士軍団と異名され、大下弘、中西太、豊田泰光、稲尾和久等々の型破りなスター選手が在籍していた。仰木彬内野手も堅実なプレイスタイルながら破天荒な私生活で野武士軍団の一員として光彩を放っていた。イチロー投手の起用についても野武士軍団気質の一面を垣間見せるもので、自身を月見草になぞらえる野村監督とは相容れないものであったのだろう。個人のパフォーマンスを優先する智将三原監督の系譜を継いだのは、権藤博・大沢啓二・大島康則監督くらいで、その他の監督は三原監督と対極的な管理野球の代名詞とされる水原監督(巨人)の系譜に属しているように感じられる。
 そういえば、日本シリーズの8回まで完全試合を続けていた山井投手を岩瀬投手に交代させ、達成すれば長く語り継がれるであろう山井投手の快挙を犠牲にしてまで眼前の1勝に拘った落合博満という監督もいた。