オーストラリアのモリソン首相の発言に注目した。
モリソン首相は、中国海軍の艦艇がアラフラ海においてオーストラリア軍哨戒機にレーザーを照射したことに関し、記者団に「起こってはならない無責任な行為だ。威嚇以外の何ものでもない」、「政府は融和的な道を歩まない」と語ったと報じられている。
レーダー波とレーザー光線の違い、照射艦艇が友好国(?)か非友好国の違いはあれ、海自哨戒機に対する韓国駆逐艦の射撃用レーダー照射事件と同様の行為であるが日豪の対応の違いが際立っている。
韓国駆逐艦の射撃用レーダー照射事件で日本政府は、例によって極めて遺憾と表明する傍らで、原因究明と再発防止を求めたが、オーストラリアはそれ等については何も求めていない。
モリソン首相の発言は、軍艦・軍用機は在外公館と同様に治外法権に守られる国家そのものであり、それ等に対する一切の妨害行為(単純ミスを含む)は「国家の確固たる意思に基づく国家への敵対若しくは侮辱行為と看做す」という世界基準に則ったもので、それらの全てを理解していることが後段の「融和拒否」に籠められているように思う。
中国艦の行為は、素人が見ても明らかに中国政府のオーストラリア揺さぶりであり、在豪華僑の政治的活動排斥、貿易摩擦、AUKS枠組み、原潜導入・・・等々、冷え込んだ豪中関係においてオーストラリアがどの程度の反応を示すかの瀬踏みで、日本政府と同程度の反応であれば「恫喝可能」「交渉の余地あり」と判断することになったであろうが、問答無用の判断を示されたことで、新たな方策を検討することになるのであろう。
日本の場合には、総理以下が軍艦の性質と行為の因果について無知であったのか、意識的に排除したのかは不明であるが、国威を損なった失態は見逃せない。
日本の国会で中国・ロシアを名指ししない人権決議がなされ、一部には大人の対応と歓迎する向きもあるが、中国政府からは列国の名指し非難決議と同様な拒否声明を引き出したに過ぎないことを見れば、「日本人的大人の対応」という演歌・浪速節的腹芸によって言外の非難や意思を伝えるという遣り方は、国際関係において効果がない以上に有害であると思う。
冷え込んだとはいえオーストラリアにとって対中貿易は依然として大きなウエイトを占めているが、今回のモリソン首相の言からは、そのこととは別に国際的な条約・法規・慣例の違反には断固反対する理性と決意が感じられた。
日本国内で、政治家がモリソン首相のような発言をすれば、国内の一部勢力が中国以上の反意を大合唱し、右翼・国粋主義者のレッテルを貼って中国に阿るのは間違いないように思える。
慰安婦強制連行、靖国合祀、徴用工強制労働・南京虐殺・・・その火元の多くが日本発であることを付して、口説終了。