もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

ウクライナの抗戦に思う

2022年02月26日 | ロシア

 ウクライナ情勢が激変した。

 プーチン大統領が、ウクライナの東部2州の親ロ勢力実効支配地域を「ドネツク人民共和国」「ルガンスク人民共和国」と国家承認した荒業を知って入院、1日後退院した時には既にロシアはウクライナに侵攻していた。
 有識者や東欧専門家ですら予想しなかった2地域の国家承認であるが、ロシアからすればミンスク停戦合意の当事者でない国からの軍派遣要請と強弁できる名分を手にしたもので、条約を逆手に取った今回の方法は、過去にも例がないのではと思っている。
 侵攻されたウクライナは、ロシアに対話を求めるとともに、国家総動員法を発令、一般市民の銃器所持を認めて徹底抗戦を主張しているが、ロシア軍は1日で首都キエフに突入し首都陥落も間近とみられる。ロシアは、ウクライナの中立が確保されれば軍を引くとしているが、それであっても2つの新設国家はロシアの版図に組み込まれる以上に、中国以外は国家承認しないだろうことからロシアが併合吸収するのは確実と思う。
 この事態を招いた遠因は、米英仏にあるように思える。1991年のソ連崩壊時、ベラルーシ、カザフスタン、ウクライナにはソ連の核兵器が大量に残され、特にウクライナは世界第3位の核保有国となったが、核物質や核技術者の中東諸国等への流出が相次いだことから、1994年に欧州安全保障協力機構会議で前記3国は核不拡散条約に加盟して核兵器をロシアに移転するかわりにアメリカ、ロシア、イギリスが3国に安全保障を提供するというブタベスト宣言に署名し、中国とフランスも個別にウクライナの安全保障を約している。その精神に立てば米英仏はウクライナの保全に責任を果たすべきと思えるが、ウクライナがNATOに加盟していないことを理由に、弱いバイデンのアメリカは近隣国への兵員増派と武器ではない軍需品の支援という体のいい「傍観」を決め込んでいる。
 日本の対応も決意を欠くもので、政府は制裁とは名ばかりの第一次対ロ制裁を表明、侵攻が現実となった25日に漸く若干の効果が期待できる追加制裁を発動した。国会でも、先に経済交流に配慮してロシアを名指し非難しない決議を行ったが、侵攻の現実に大慌てに非難決議を再度決議する動きとされているように、極めて動きが鈍く対岸の火事としているように思う。
 また、西側(G7)の経済制裁についても、イランや北朝鮮の経済制裁にみられるように、掟破りの国や企業が現れ実効性が損なわれるのが現実である。

 隣国ハンガリーに脱出したウクライナ国民の姿が報道されたが、国家総動員法の発動によって18~60歳の男性は出国が許されないことを嘆く以上に、夫は・父親は国を守るために国に残ったとする婦女子の姿が印象的である。先日のブログで「日本でもレジスタンスの準備として民兵育成を考えるべき」と書いたが、兵役経験の有無に拘わらず国家存亡の危機にあっては銃を執って戦うのは世界基準であるように思える。ウクライナでは200発以上の圧倒的なミサイル攻撃によって侵攻劈頭に軍の通信・監視施設が壊滅して組織的な反撃が頓挫し、1日で首都にロシア軍が進軍したことを思えば、大規模侵攻の前には自衛隊単独での防衛も自ずから限界があるように思える。