もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

追悼演説を学ぶ

2022年08月26日 | 歴史

 秋の臨時国会で行われる「安倍晋三氏追悼演説」を、誰が行うのかが耳目を集めている。

 当初は自民党の甘利議員が行うとの報道があったが、立憲民主党の西村幹事長が人選に異を唱えたことから、慣例に則り野党第1党の立憲民主党議員が行うこととなった。
 自分は故人に対して行われる国会演説はすべて追悼演説と思っていたが、衆院は追悼演説と呼ぶのに対して参院は哀悼演説と呼ぶ慣わしであるらしい。
 新憲法下での追悼(哀悼)演説は、衆参でこれまで約400回行われているとされているが、次のような慣例とされている。
〇演説の日取りは遺族の希望を聞いた上で、議院運営員会理事会で決定
〇衆院での演説者は、1998年に議院運営委員会理事会で「遺族の意思を尊重して決める」と申し合わせている。
 演説者の変遷を眺めると、中選挙区制時代には同じ選挙区の対立政党の議員が、小選挙区制導入以降も中選挙区制時代に同じ選挙区で争っていた近隣選挙区の選出議員が行っていたが、平成後期頃になると対立政党議員が行う慣例も少なくなって、党派の別なく選挙区選挙の初当選議員が行うのが一般的となったらしい。
 しかしながら、党首経験者クラスの場合は対立政党党首が行うという慣例は廃れていないようで、西村幹事長の主張が大勢を決して甘利氏降壇に至ったもののようである。
 前述のように400回にも及ぶ追悼(哀悼)演説で、現在まで名演説とされているのは、暴漢に刺殺された浅沼稲次郎氏(日本社会党党首)に対する池田勇人氏(自民党総裁・総理)の追悼演説(1960(昭和35)年)と、山本孝史参議院議員(民主党)に対する尾辻秀久議員(自民党参議院議員会長・元厚労大臣)の哀悼演説(2008(平成20)年)くらいであるらしい。2件の演説はいずれも党派・確執を超えて好敵手・論敵を称えるもので送られる者と送る者双方の事績と哀悼を明らかにしたとされている。

 慶應義塾大学教授で元民主党参議員(鳩山内閣官房副長官)の松井孝治氏がフェイスブックで「立憲民主党が乗り越えなければならないのは、(国民から)追悼演説でもまた口汚い批判を繰り返すのではないかという疑念だと思う」と書き込んでいるらしい。文意は将に声なき声を代弁していると思っているが、泉代表が行うであろう(かもしれない)追悼演説も、政敵・論敵を葬送するに相応しく格調高いものであって欲しいものである。