もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

パルチザンを学ぶ

2022年08月21日 | 軍事

 ウクライナのパルチザンがクリミヤ奪還のための攻撃を行ったことが報じられた。

 クリミヤ回復の軍事行動が、ウクライナ軍ではなくパルチザンとされているのかを知るために、パルチザンについて勉強した。
 侵略者に対する抵抗については、レジスタンス、パルチザン等の言葉が使用されるが、厳密な区別(線引き)は困難であるように思える。一般的には、レジスタンスが市民主体の自発的・散発的な抵抗破壊工作であるのに対して、パルチザンは組織化された非正規軍と区別されているが、過去のパルチザンの興隆を眺めれば、少人数のゲリラ活動が賛同者を得てレジスタンスと呼ばれる運動に達し、さらに各レジスタンス細胞の糾合・組織化によって肥大化してパルチザンと呼ばれる規模に発展するケースが殆どであるように思える。そのために、抵抗運動の全てをレジスタンスとして、強力な組織・活動のみパルチザンと称する意見もあるようである。
 対独戦で有名な、チトーが率いたユーゴスラビア・パルチザンは、終戦前には男女合わせて80万人にも上り、4個軍と52個師団を編成して正規軍の戦闘に参加し、終戦直前の1945年の3月には全てのパルチザンがユーゴスラビア正規軍として再編されていることを思えば、パルチザンと正規軍の線引きも危ういものになる。このことは、ベトコンの成長過程と北ベトナムの関与を眺めても明らかであるように思える。
 結論的には、レジスタンス、パルチザンは正規軍の補完能力や国家の関与・認知度の大小による呼称に過ぎないのではないだろうかと考える。
 従って、小火器程度の武装にとどまるレジスタンスに対して、パルチザンは正規軍と同程度の重武装で、戦闘指揮を含めて正規軍との共同作戦が行えるとされている。

 では、何故にクリミヤ反攻作戦をパルチザンが行っているのかを考えれば、西側諸国の武器支援が「ウクライナ軍はロシア領を攻撃しない」という前提でなされていることであろうと思っている。ゼレンスキー大統領にすれば、正規軍の装備は近代化し・軍需品も充実し・何より国民の継戦意思も堅い今が、失地回復の好機で今を逃せばクリミヤ奪還は不可能となるのは明らかであり、西側支援国との約束を守るためには、正規軍でないパルチザンという隠れ蓑を纏ったものであろう。
 クリミヤに対する攻撃につぃて、今のところロシアも偶発的な爆発事故としている。クリミアを自国領とするロシアにとって、攻撃が正規軍によるものであるか否かを問わずにウクライナ側からの自国領攻撃がなされたと認めることは、事変のさらなる拡大と悪化に繋がることを懸念しているのであろう。
 しかしながら、西側諸国の支援も鈍化の兆しを見せている現在、ウクライナ事変は新たな局面に変化しつつあるように思う。