もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

核戦略の変化を考える

2022年10月28日 | 軍事

 アメリカの核戦略指針が見直されたことが報じられた。

 従来の指針では、核使用は「敵の核攻撃の阻止や反撃に限る」とされていたが、ウクライナ事変でロシアが「通常兵器による戦場での核兵器使用」を示唆したことから、今回の指針では「米国や同盟国の重大な利益を守る『極限の状況』では核使用を考慮」と変更された。また、同盟国に対する『核の傘』も強化すると明記されて、例えば中国の通常兵器による台湾・先島諸島への侵攻に対しても核兵器の使用が選択肢の一つに加わることになったと理解している。
 先日のブログで、アメリカの次期政権以降には日韓両国の核保有が議論される可能性があると書いたが、自分の想像を超えるスピードで世界の核戦略は変化しているようである。
 「同盟国の核の傘強化」に関してアジア地域を考えると、日韓の核保有までは至らないものの、少なくとも両国に対する「核共有」を前提にしていることは明らかと思える。
 核保有の現状を調べると、核の提供国はアメリカのみで共有国はNATO加盟国のドイツ、イタリア、オランダ、ベルギー、トルコの5か国であるが、アメリカ・トルコの関係が悪化化している現在は簿外の事項があるのかもしれない。また、核共有システムについては、核兵器は共有国内の米軍管理下の施設に保管、起爆に必要なコードはアメリカが保有、核兵器運搬は保有国が運航、核兵器使用についてはNATO・アメリカ・共有国の協議によるとされ、前述の各国には合計100個の戦術核が配備されているとされている。

 総理を辞した安倍氏がテレビ番組で「核共有の是非について国会で議論すべき」と発言した時、一部識者は挙って安倍氏を核武装推進論者と非難したが、その反対論の多くは冷徹な世界情勢に目を閉じた「唯一の被爆国が・・・」というお涙頂戴式の幼稚なものであったと記憶している。立民の泉代表は「核兵器は通常兵器の補完たり得ない」と述べて牽制したものの、抑止的な「通常型敵基地攻撃兵器」の保有にも反対であったことから、政治家として真剣に国家すなわち国民の生命・財産を守る気があるのかと疑問に思ったものである。

 非核3原則に核装備の議論封印を加えた「非核5原則」については尊重し、核攻撃されても潔く死ぬ覚悟を以っても非核5原則を堅持される方には敬意を払うものの、非核3原則が40年以上前の「核の手詰まり感から生まれた一時的な小康状態」の冷戦時に、国防に関する確たる議論もないままに政局収拾のために作り出されたものに過ぎないこと思い起こし、その上で世界情勢に応じて柔軟に見つめ直して欲しいと願っている。
 アメリカの核戦略の見直しには対中国牽制の意味も大きいと思うが、自由主義社会に対する警鐘も含まれているように思えてならない。