もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

言霊はあるか

2021年08月06日 | 社会・政治問題

 JOCのファイン・プレイが報じられた。

 ファイン・プレイは、JOCのホームページに「JOCはメダルが食物でないことを公式に確認しました」と書いて、メダルを噛むパフォーマンスをチクリとしたもので、複数の外国メディアが「JOCの大発見」と好意的に配信しているとされている。これまでの日本の伝では、何らかの理由を冠して「お止めください」的な表現になるであろうことを、さらりとウイットを効かした言い回しは世界を知るJOCならではのことかと思う。外国に対しては有効なメッセージであったが、残念ながら名古屋市の河村市長には届かなかったようで、表敬に訪れたソフトボール選手の金メダルを噛んで炎上している。
 今朝のテレビで菅総理が「緊急事態を全国に広げることは考えていない」と談話していた画面に、思わず「いやいや考えて下さい」と独り言ちた。
 諸外国の指導者が決定や決意を述べる際には「全ての選択肢を排除しない」とか「全ての選択肢はデスク上に置かれている」等と表現して、状況の変化によっては更に強硬手段を採ることに含みを持たせるのが一般的であるように思う。イランに対する報復攻撃如何を問われたトランプ大統領は「攻撃命令書は既にデスク上にある」と、硬軟何れの対処も可能な表現を使用した。
 また、日本語に堪能な中国外務省高官は「日本の大使に”ゲンメイ”した」と日本語でメディア発表して、言明なのか厳命であるのか如何様にも取れるし如何様にも言い逃れできる用語を意図的に使用したケースも有る。
 病床逼迫の現状に照らして菅総理のコメントを眺めると、「現在のところ」と付けるのを忘れたものであるならば、現状打開のために国民の更なる活動自粛を求めるには甘すぎる表現に思えるし、額面通りに「考えていない」のならば現状認識の甘さと捉えられかねない。野党のように煽情的に危機感を煽ることは避けるべきであろうが、既に露わになっている危機に対しても官僚表現・永田町言語に終始する迫力の無さは如何なものであろうか。指導者の言葉と迫力が危機管理や改革に対する大きな潮流を作り出すことは、「抵抗勢力排除」「自民党をぶっ壊す」とした小泉劇場が示しているように思える。

 菅総理は、事実を淡々と述べる官房長官としては出色の存在であり平時の調整型宰相としては平均点を得ることができるように思っているが、時にトップダウン型行動力が要求される動乱・有事の宰相としては、今少し「腹を割った」「情義に訴える」話術・レトリックを発揮することが望ましく思える。
 数字に明るくコンピュータ付ブルトーザーと異名され、浪曲を師に吃音を矯正して希代の演説家となった田中角栄氏が総理であったならば、どのような施策と表現で世相統一・挙国一致を図っただろうか。


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