ベラルーシとポーランドの国境が緊張している。
国境での混乱は、ポーランドがベラルーシからEU諸国への入境を目指す4000人の中東難民を阻止しているためであるが、真相はベラルーシのルカシェンコ大統領がEUを混乱させるための戦術とされている。
ベラルーシはEUから人権弾圧問題で非難・制裁を受けているが、EU側から越境を阻止されることは確実である中東難民にEUへの通過ビザを与えて国境に集結させ、難民を受け入れないEUこそ人権を蹂躙していると主張する布石とする一方で、後ろ盾であるロシア国営放送に「EUが難民受け入れを渋っている」と報じさせるとともに、国境上空にロシア爆撃機を示威飛行させて緊張を作り出している。
緊張を作為し、経済、情報・宣伝、武力を連携した一連の動きはロシアお得意のハイブリッド戦略の好例であるが、人権弾圧と云う弱点をブーメランとして相手に投げ返す戦術はしたたかである。
この自分の弱点を相手の非に転嫁する手法は近年の中国でも盛んで、閉鎖的国営経済でありながら開かれた自由貿易の枠組みであるTPP加入を申請、最大の温室効果ガス排出国でありながら先進的な排出規制を打ち出し、孔子学院の蔓延非難には日本人学校の多さで応じ、ウイグル族弾圧にはアメリカの黒人差別を、と様々な場面で展開している。
政治や外交の場において、自己の非を転化して相手に同等以上のダメージを与えるため、真実を覆い隠すため、深く静かに進行するため、等に対してハイブリッド戦術は極めて有効な手段であり、IT技術の進歩に応じて更に巧妙化するものに思える。
改めてハイブリッドとは《異種のモノを組み合わせ・掛け合わせることによって産み出されるモノあるいは生き物を意味し、ラテン語の「イノブタ」を語源》となっている。
過去にも、豚と猪から「イノブタ」、馬とロバから「ラバ」、ヒョウとライオンから「レオポン」、ライオンとトラから「ライガー」などが有名であり、現在のペット犬猫の大半は交配によるハイブリッド(雑種)とされている。
相乗効果を産み出すハイブリッドは全能かと云えば、記憶しているトマトとジャガイモが同時に採れることから食糧危機解決に寄与する未来の野菜と注目された「ポマト」、両端に耳掻きと爪楊枝を合体させた商品は、ハイブリッドと雖も結果は捗々しくなかったようである。
現在、工業製品でハイブリッドといえばエンジンとモーターを組み合わせるハイブリッド・カーに代表されるが、電動アシスト自転車も人力+モーターを組み合わせたハイブリッド軽車両と分類されるそうである。
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