もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

海上保安庁法25条を考える

2022年12月22日 | 軍事

 政府が閣議決定した安保3文書に関連し、有事における保安庁の存在・統制が議論されている。

 海上保安庁法第25条には「この法律のいかなる規定も海上保安庁又はその職員が軍隊として組織され、訓練され、又は軍隊の機能を営むことを認めるものとこれを解釈してはならない。」と規定されており、有事においても自衛隊が海保を統制して統合運用することを禁じている。
 同法立法の由来に関しては無知であるが、何らかの改正が必要ではないだろうか。
 これまで、縦割り行政の弊害として、同一の目的・目標達成のための制度に「行政割に従った複数の機関・制度が並立」し、非効率のみならず混乱を招いた事例が多い。
 海上保安庁は、大型巡視船と雖も40㍉機関砲どまりの武装しか持たないので、もし自衛隊の統制下に配されても戦闘艦艇との直接交戦は不可能であるが、有事において自衛隊が海保を統制下に置くことはメリットがあるように思える。
 現在、有事における島嶼住民の避難が憂慮されている。国民の生命を守るという目的では、海保・自衛隊が等しく責任を有していると考えるが、その場合にあっても、避難させるべき島嶼の選定や護衛する自衛艦の配備等、協調・共同は不可欠であるように思える。また、海保はヘリコプタ搭載の巡視船を有しているが、狭い海域で複数のヘリコプタの運用が想定されるので、ヘリコプタの飛行管理についても何らかの統制も必要である。
 また、海警行動が発令された場合にあって、巡視船が対応不能の武装船団を発見しても、現行の指揮系統に愚直に従えば、その情報は巡視船⇒海保司令部⇒海上保安庁⇒国交省⇒官邸⇒防衛省⇒自衛隊⇒司令部⇒艦艇と伝達され、さらには各結節で状況判断や逡巡が加えられれば、情報事態が伝達されずに消滅するおそれもある。
 「なだしお」衝突事故を契機として自衛隊⇔保安庁間の通信手段が設定されたが、それは現在でも118番の海難事故通報程度ではないだろうかと推測している。

 日本の巡視船に相当する中国の公船は中国海警局所属とされているものの、武装警察部隊の傘下として中国共産党・海軍の指揮下に置かれている。
 自分が参加したリムパック時の日米共同訓練にはコーストガード所属の「ジャレット」が参加していたが、指揮管制(通信)、艦隊運動、対潜訓練なども、海軍艦艇と同様にこなしていた。
 同一目的のために行動する政府機関の指揮管制は、迅速な意思決定と効果的な対応のためにシンプルに一元化されるべきで、保安庁法25条は安保文書の思想を以って改正すべきであるように思う。


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