緊急事態条項の議論が、憲法改正を軸に加速している。
自然災害に対しては、災害対策基本法によって物価統制、配給、通行疎外車両除去等の一時的処置が行えるが、東日本大震災においても発動されることは無かった。憲法に記載されていない処置を取ったために起こるであろう種々の問題を恐れて、菅直人首相が決断できなかったとされている。また、武力紛争の場合は、今後の有事法の制定を待たなければ何もできない状態にある。緊急事態においては指揮の一元化が不可欠であるが、通常の行政機構で対処すると指揮系統が錯綜するとともに、現地部隊に命令が到達する時間も各省庁の通信能力差によるタイムラグにより一層の混乱を引き越すことが予想される。各国では緊急事態条項の中核に『戒厳令』と『軍』を規定している。軍(自衛隊)の強点は、初動においても相当の自己完結機能を持っており、兵力、食糧、医療、通信等において資源を即座または短時日に集中できることである。
憲法を改正して、緊急時には首相に権限を集中して、個人の権利を一時停止できる体制作りを行うことが必要と思う。また、緊急条項による負荷と重圧に耐え得る信念を持った政治家が、首相を目指す風土を醸成しなければならない時期が来ていると思う。