◆知的障害者にとってのバリアフリーとは。
◇絵文字や写真活用 行動につながる手がかりに
住まいのバリアフリー(障壁の除去)といえば、段差がなく、手すりがついているなど物理的なバリアーをなくす工夫がなされた家を、多くの人は思い浮かべるだろう。歩行の困難な高齢者や身体障害のある人が、車椅子でも生活しやすくなり、超高齢社会に進む今後、ますます重要になる。
一方で、福祉先進国のスウェーデンでは知的障害者や認知面にハンディを持つ高齢者にとってのバリアフリーデザインに基づいた暮らしの工夫もされ、日本でも注目され始めている。
●小さな工夫で
「知的障害のある人の生活も、ハード面のちょっとした工夫で暮らしやすくなります」。「知的障害のある人のためのバリアフリーデザイン」(彰国社)の共著があり、スウェーデンの実情に詳しい医療福祉コンサルタントの二井(にい)るり子さん(51)=大阪府豊中市=は話す。二井さんは、夫で1級建築士の「二井清治建築研究所」(06・6336・0523)所長、清治さん(62)と多くの福祉施設の設計に携わってきた。
知的障害がある場合、抽象的な概念や言葉が理解しにくいという特性がある。そこで、行動に直接つながる具体的な手掛かりを示すことが重要になる。二井さんが挙げるのが、分かりやすい空間設計とともに、マークや絵文字(ピクトグラム)、写真の活用だ。
写真Aのトイレは、足形のマークで立つ位置を示すことで、周囲が汚れないようにする。言葉で「汚さないでね」と注意するよりも、これなら一目で分かる。
写真BとC、Dはいずれもスウェーデンでの絵文字と写真の活用例。Bは、針の時計を読むのが難しい人のために、24時間を赤い目盛りで示す砂時計式の電光表示時計。目盛りの横に、「スイミング」などの絵文字を張り、時間と予定が分かる仕組み。Cは1週間の予定を曜日別に「掃除」や「レストラン」など絵文字で示す。終わったら木札を裏返していき、次の行動を認識しやすくしている。Dは、電話の相手先の顔写真を張っておくことで、簡単に電話ができる。
大阪府内で知的障害者のケアホームを運営する社会福祉法人「創思苑」(東大阪市)理事長の林淑美さん(58)も「持ち物の整理整頓が苦手な人に、洋服や靴下などタンスに入れるものの写真を張ってあげると分かってもらいやすく、写真の活用は効果的だと感じます」と話す。
●「スヌーズレン」
空間の心地よさも重要だ。写真Eは、スウェーデンの児童施設にある「スヌーズレン」コーナー。スヌーズレンとは、光や音、感触などで五感を心地よく刺激する環境設定で、北欧などで障害者や高齢者のケアに活用されている。二井さんは特別な「スヌーズレン」でなくても、感覚刺激に敏感な人には、内装、照明、音響などでやわらかな空間を作り、自然の緑を取り入れたり、アロマテラピーを使うなどリラックスできる環境が大切だという。二井さんは「こうした工夫は施設だけでなく、家庭でも取り入れることができる。初めて訪ねてきた人でも分かりやすく、快適に感じる家が、知的障害のある人にとってもバリアフリーな住まい空間になる」と話す。【遠藤哲也】
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■+α
◇求められる「面」での整備
障害者や高齢者が暮らしやすい町づくりの法整備も進んでいる。
公共建築物などを対象にした「ハートビル法」と、駅など公共交通機関対象の「交通バリアフリー法」が統合・拡充され、バリアフリー新法(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)が06年に施行された。
旧法の対象者が高齢者と身体障害者だったのに対し、知的・精神・発達障害も加わった。建物など「点」のバリアフリー化だけでなく、道路や路外駐車場、都市公園など連続性のある「面」的な地域整備を求めている。
◇絵文字や写真活用 行動につながる手がかりに
住まいのバリアフリー(障壁の除去)といえば、段差がなく、手すりがついているなど物理的なバリアーをなくす工夫がなされた家を、多くの人は思い浮かべるだろう。歩行の困難な高齢者や身体障害のある人が、車椅子でも生活しやすくなり、超高齢社会に進む今後、ますます重要になる。
一方で、福祉先進国のスウェーデンでは知的障害者や認知面にハンディを持つ高齢者にとってのバリアフリーデザインに基づいた暮らしの工夫もされ、日本でも注目され始めている。
●小さな工夫で
「知的障害のある人の生活も、ハード面のちょっとした工夫で暮らしやすくなります」。「知的障害のある人のためのバリアフリーデザイン」(彰国社)の共著があり、スウェーデンの実情に詳しい医療福祉コンサルタントの二井(にい)るり子さん(51)=大阪府豊中市=は話す。二井さんは、夫で1級建築士の「二井清治建築研究所」(06・6336・0523)所長、清治さん(62)と多くの福祉施設の設計に携わってきた。
知的障害がある場合、抽象的な概念や言葉が理解しにくいという特性がある。そこで、行動に直接つながる具体的な手掛かりを示すことが重要になる。二井さんが挙げるのが、分かりやすい空間設計とともに、マークや絵文字(ピクトグラム)、写真の活用だ。
写真Aのトイレは、足形のマークで立つ位置を示すことで、周囲が汚れないようにする。言葉で「汚さないでね」と注意するよりも、これなら一目で分かる。
写真BとC、Dはいずれもスウェーデンでの絵文字と写真の活用例。Bは、針の時計を読むのが難しい人のために、24時間を赤い目盛りで示す砂時計式の電光表示時計。目盛りの横に、「スイミング」などの絵文字を張り、時間と予定が分かる仕組み。Cは1週間の予定を曜日別に「掃除」や「レストラン」など絵文字で示す。終わったら木札を裏返していき、次の行動を認識しやすくしている。Dは、電話の相手先の顔写真を張っておくことで、簡単に電話ができる。
大阪府内で知的障害者のケアホームを運営する社会福祉法人「創思苑」(東大阪市)理事長の林淑美さん(58)も「持ち物の整理整頓が苦手な人に、洋服や靴下などタンスに入れるものの写真を張ってあげると分かってもらいやすく、写真の活用は効果的だと感じます」と話す。
●「スヌーズレン」
空間の心地よさも重要だ。写真Eは、スウェーデンの児童施設にある「スヌーズレン」コーナー。スヌーズレンとは、光や音、感触などで五感を心地よく刺激する環境設定で、北欧などで障害者や高齢者のケアに活用されている。二井さんは特別な「スヌーズレン」でなくても、感覚刺激に敏感な人には、内装、照明、音響などでやわらかな空間を作り、自然の緑を取り入れたり、アロマテラピーを使うなどリラックスできる環境が大切だという。二井さんは「こうした工夫は施設だけでなく、家庭でも取り入れることができる。初めて訪ねてきた人でも分かりやすく、快適に感じる家が、知的障害のある人にとってもバリアフリーな住まい空間になる」と話す。【遠藤哲也】
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■+α
◇求められる「面」での整備
障害者や高齢者が暮らしやすい町づくりの法整備も進んでいる。
公共建築物などを対象にした「ハートビル法」と、駅など公共交通機関対象の「交通バリアフリー法」が統合・拡充され、バリアフリー新法(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)が06年に施行された。
旧法の対象者が高齢者と身体障害者だったのに対し、知的・精神・発達障害も加わった。建物など「点」のバリアフリー化だけでなく、道路や路外駐車場、都市公園など連続性のある「面」的な地域整備を求めている。