大阪府内箕面市に財団法人箕面市障害者事業団がある。そこが編集企画している「障害者事業団だより」(第36巻、2009年07月31日)が送られてきた。ここに掲載されている記事の中に、障害者の就労支援のノウハウが記載されている。現場では当たり前のことと思うが、私にとって興味深かったので、紹介する。
■ 現場での多様な仕事から障害者にとって得意な仕事を探す
機関誌の中に「事業団日誌」がある。今号は「実習事業」を特集している。ある人を喫茶るうぷライフプラザ店で実習してもらった記事がある。タオルや布巾をたたむ仕事や洗い物・スタンプ押しなど、いろいろな仕事を行なってもらった。そのうちに得意な仕事が見つかったという。それはテーブル拭きの作業という。また別な人は、ナプキン折りの作業が得意だそうだ。
こうした得意な作業を見つけることは、現場で障害者たちと触れ合った人にのみ、できることだろう。ちょっとした仕草や表情から、この人はどんな作業が得意なのだろうか、とカンを働かせることは難しいと思う。でも、その人にできる作業を見つけることは、障害者の就労支援にとって必要なことだろう。
得手な作業だと、丁寧にできる。仕事が立派になり、汚い部分が美しくなるとお客様からも誉められる。誉められると、より一層励みになる。さらに、自分の力で達成感を自分でも感じると、関連する別な作業も得意になるだろう。
■ お客さんとのコミュニケーションがなかなか出来ない
機関誌の別な所には、記事を就労支援課が書いている。そこでは、施設の中では他人とのコミュニケーションの経験はないという。相手とコミュニケーションを取るのに不便でない人ととにかく相手とのコミュニケーションをとりにくいと感じる人があるが、その枠内では収まらないようだ。
喫茶るうぷ(ライフプラザ店)で同様にトレーニングを行なった訓練生の感想にも「お客様と話をするのは、とても緊張しました」という一節がある。先の「事業団日誌」でも「いらっしゃいませ」と大きな声を出すことが唯一の苦手なことと書いてある。やはり、他人と話をすることが苦手という障害者は多いようだ。
施設でも訓練をしているはずだが、なぜコミュニケーションが苦手なのだろうか?多分、施設内訓練においては、まったく見知らぬ人(職員や同僚)が存在しないのかとも思う。どうも施設内訓練では限界があるということだろう。同じ事を聞いたことがある。障害児だけが行く養護学校(今は特別支援学校と呼ぶそうだ)などの出身者では、同僚であるかお客であるかは別にして、健常者の前では緊張するということが多くあるようだ。成人してから共に働くためには、子供の時に共に学ぶことが必要条件だという。
■ 仕事の分業化を把握してその人に合った作業を見つける
一般に、仕事は分業化が進むとその産業が成長するという。一般論では仕事の分業化は人の能力を高めることにつながる。仕事を作業に分割すると、それ専門に作業を進めていた人の効率を上げることになり、産業に従事していた集団の力を引き上げる。専門に作業をしていたところでは、人手による作業だけではなく、専門的な機械化が進む。機械に置き換わった人力がより能率を高める。
障害者に得意な作業を見つけることは、仕事全体の流れから、部分に細分化して仕事を見ることになる。とすると、多くの作業が含まれている仕事が障害者の働き口を探すには有利だとなる。たとえば、パンやクッキーを製造する仕事を考えてみると、粉をひたすらこねる作業、ミルクを注ぐ作業、焼くだけの作業、裁断する作業、さらに包装紙でくるむ作業、箱入れの作業、配達する作業、お店で商品を売る作業などがあろう。現場ではもっと細かく分かれるだろう。さらに障害者と共に働く人たちは、それぞれの障害者にふさわしい作業を見つけることに精通しているだろう。もしおよそ100程度の作業とするなら24時間交代勤務であれば、それぞれに3人は必要になる。とすれば、300人の雇用先が見つかる計算になる。そんな風に上手くは行かないとしても。
とすれば、障害がない人も全部の仕事を行なわなくてはならず、本当は苦労していることにもなる。自分の得意の作業を専念させてくれれば、もっと利益に貢献できるし、自分も楽しいと思うだろう。その意味で、障害者の雇用を考えることと同時に分担を考えると、多少は楽になるかとも思う。
大谷強さんの文書を転載
■ 現場での多様な仕事から障害者にとって得意な仕事を探す
機関誌の中に「事業団日誌」がある。今号は「実習事業」を特集している。ある人を喫茶るうぷライフプラザ店で実習してもらった記事がある。タオルや布巾をたたむ仕事や洗い物・スタンプ押しなど、いろいろな仕事を行なってもらった。そのうちに得意な仕事が見つかったという。それはテーブル拭きの作業という。また別な人は、ナプキン折りの作業が得意だそうだ。
こうした得意な作業を見つけることは、現場で障害者たちと触れ合った人にのみ、できることだろう。ちょっとした仕草や表情から、この人はどんな作業が得意なのだろうか、とカンを働かせることは難しいと思う。でも、その人にできる作業を見つけることは、障害者の就労支援にとって必要なことだろう。
得手な作業だと、丁寧にできる。仕事が立派になり、汚い部分が美しくなるとお客様からも誉められる。誉められると、より一層励みになる。さらに、自分の力で達成感を自分でも感じると、関連する別な作業も得意になるだろう。
■ お客さんとのコミュニケーションがなかなか出来ない
機関誌の別な所には、記事を就労支援課が書いている。そこでは、施設の中では他人とのコミュニケーションの経験はないという。相手とコミュニケーションを取るのに不便でない人ととにかく相手とのコミュニケーションをとりにくいと感じる人があるが、その枠内では収まらないようだ。
喫茶るうぷ(ライフプラザ店)で同様にトレーニングを行なった訓練生の感想にも「お客様と話をするのは、とても緊張しました」という一節がある。先の「事業団日誌」でも「いらっしゃいませ」と大きな声を出すことが唯一の苦手なことと書いてある。やはり、他人と話をすることが苦手という障害者は多いようだ。
施設でも訓練をしているはずだが、なぜコミュニケーションが苦手なのだろうか?多分、施設内訓練においては、まったく見知らぬ人(職員や同僚)が存在しないのかとも思う。どうも施設内訓練では限界があるということだろう。同じ事を聞いたことがある。障害児だけが行く養護学校(今は特別支援学校と呼ぶそうだ)などの出身者では、同僚であるかお客であるかは別にして、健常者の前では緊張するということが多くあるようだ。成人してから共に働くためには、子供の時に共に学ぶことが必要条件だという。
■ 仕事の分業化を把握してその人に合った作業を見つける
一般に、仕事は分業化が進むとその産業が成長するという。一般論では仕事の分業化は人の能力を高めることにつながる。仕事を作業に分割すると、それ専門に作業を進めていた人の効率を上げることになり、産業に従事していた集団の力を引き上げる。専門に作業をしていたところでは、人手による作業だけではなく、専門的な機械化が進む。機械に置き換わった人力がより能率を高める。
障害者に得意な作業を見つけることは、仕事全体の流れから、部分に細分化して仕事を見ることになる。とすると、多くの作業が含まれている仕事が障害者の働き口を探すには有利だとなる。たとえば、パンやクッキーを製造する仕事を考えてみると、粉をひたすらこねる作業、ミルクを注ぐ作業、焼くだけの作業、裁断する作業、さらに包装紙でくるむ作業、箱入れの作業、配達する作業、お店で商品を売る作業などがあろう。現場ではもっと細かく分かれるだろう。さらに障害者と共に働く人たちは、それぞれの障害者にふさわしい作業を見つけることに精通しているだろう。もしおよそ100程度の作業とするなら24時間交代勤務であれば、それぞれに3人は必要になる。とすれば、300人の雇用先が見つかる計算になる。そんな風に上手くは行かないとしても。
とすれば、障害がない人も全部の仕事を行なわなくてはならず、本当は苦労していることにもなる。自分の得意の作業を専念させてくれれば、もっと利益に貢献できるし、自分も楽しいと思うだろう。その意味で、障害者の雇用を考えることと同時に分担を考えると、多少は楽になるかとも思う。
大谷強さんの文書を転載