宇部に就労支援A型事業所
「障害者の真の自立のためには、生きていこうという強い意欲と経済的裏付けが必要だ」。こんな考えを基本に掲げる障害者作業所「第二夢つむぎ就労支援センター」が、宇部市西宇部南2丁目に開設された。リサイクルのアルカリ乾電池を製造・販売する事業を通じて、働く喜びと責任感を作業者に育てていく。作業者と雇用契約を結ぶ県内7カ所目の就労継続支援A型事業所だ。
第二夢つむぎ就労支援センターは広さ約70平方メートル。定員は20人で現在、11人が登録している。所長の斎藤和彦さん(37)や職業指導員、生活支援員の3人がサポートする。
「ぼくらはメーカーだ」。10人の作業者を前に、高田猛さん(50)は言った。センターを開設した北九州市のNPO法人「夢つむぎ」の代表理事。「障害者であっても働く以上、責任感を持ってもらいたい。社会のシステムを覚えてほしい」。そんな願いから自覚を促す一言だった。
センターでは、リサイクルアルカリ乾電池を製造している。使い捨てカメラのストロボから取り出した乾電池の傷の有無や電圧を北九州市の作業所でチェックし、基準を満たしたものが宇部に送られてくる。宇部ではパッケージを組み立て、電池をふいてパッケージに詰め、さらにクリスタルパックに入れて製品として完成させる。10本詰めで100円。北海道から沖縄まで安定的な販路を確保できているという。「ていねいにやってね。買ってくれる人に頭を下げるんだ。体が大事、無理をしないで、仲良くね」。高田さんが教えるのは、企業人として最低限の心構えだ。
作業は当面、1日2時間。県の最低賃金、時給669円が支払われる。1カ月20日働いて2万6760円。「もっと出してやりたいが……」と高田さん。それでも県内の就労継続支援B型事業所の月額の平均工賃1万5789円(08年度、県調べ)を上回る。「給料はちゃんと確認するんだよ。権利はちゃんと主張するんだ」。一人前の社会人の常識を高田さんは説く。
「夢を持っているかい?」。高田さんの問いに、作業者は誰も答えなかった。現実の社会の中で拒まれてきた傷が、そこに見えた。「チャレンジするものを見つけてほしい。ダメだったら戻ってくればいい」と高田さんは言う。北九州市の作業所では、ヘルパー2級の資格をとった作業者もいるという。障害者手帳で認められる障害等級は軽度になったが、「それが働くということだ」。いつか、夢を語りかけてくるのをスタッフは待っている。
□■ 就労継続支援A型事業所 ■□
かつての通所授産施設。A型は原則として雇用契約を結ぶが、B型はその必要がない。A型は労働基準法の適用を受けるが、最低賃金については障害の形態などで除外されることもある。県によると、県内には4月1日現在、A型6カ所、B型65カ所がある。
朝日新聞
「障害者の真の自立のためには、生きていこうという強い意欲と経済的裏付けが必要だ」。こんな考えを基本に掲げる障害者作業所「第二夢つむぎ就労支援センター」が、宇部市西宇部南2丁目に開設された。リサイクルのアルカリ乾電池を製造・販売する事業を通じて、働く喜びと責任感を作業者に育てていく。作業者と雇用契約を結ぶ県内7カ所目の就労継続支援A型事業所だ。
第二夢つむぎ就労支援センターは広さ約70平方メートル。定員は20人で現在、11人が登録している。所長の斎藤和彦さん(37)や職業指導員、生活支援員の3人がサポートする。
「ぼくらはメーカーだ」。10人の作業者を前に、高田猛さん(50)は言った。センターを開設した北九州市のNPO法人「夢つむぎ」の代表理事。「障害者であっても働く以上、責任感を持ってもらいたい。社会のシステムを覚えてほしい」。そんな願いから自覚を促す一言だった。
センターでは、リサイクルアルカリ乾電池を製造している。使い捨てカメラのストロボから取り出した乾電池の傷の有無や電圧を北九州市の作業所でチェックし、基準を満たしたものが宇部に送られてくる。宇部ではパッケージを組み立て、電池をふいてパッケージに詰め、さらにクリスタルパックに入れて製品として完成させる。10本詰めで100円。北海道から沖縄まで安定的な販路を確保できているという。「ていねいにやってね。買ってくれる人に頭を下げるんだ。体が大事、無理をしないで、仲良くね」。高田さんが教えるのは、企業人として最低限の心構えだ。
作業は当面、1日2時間。県の最低賃金、時給669円が支払われる。1カ月20日働いて2万6760円。「もっと出してやりたいが……」と高田さん。それでも県内の就労継続支援B型事業所の月額の平均工賃1万5789円(08年度、県調べ)を上回る。「給料はちゃんと確認するんだよ。権利はちゃんと主張するんだ」。一人前の社会人の常識を高田さんは説く。
「夢を持っているかい?」。高田さんの問いに、作業者は誰も答えなかった。現実の社会の中で拒まれてきた傷が、そこに見えた。「チャレンジするものを見つけてほしい。ダメだったら戻ってくればいい」と高田さんは言う。北九州市の作業所では、ヘルパー2級の資格をとった作業者もいるという。障害者手帳で認められる障害等級は軽度になったが、「それが働くということだ」。いつか、夢を語りかけてくるのをスタッフは待っている。
□■ 就労継続支援A型事業所 ■□
かつての通所授産施設。A型は原則として雇用契約を結ぶが、B型はその必要がない。A型は労働基準法の適用を受けるが、最低賃金については障害の形態などで除外されることもある。県によると、県内には4月1日現在、A型6カ所、B型65カ所がある。
朝日新聞