脳性まひなどで手足が不自由な人も楽しめるスポーツ「ボッチャ」が、県内で広がりつつある。ボールを投げられなくても、自分の意思を介助者に伝えてゲームに参加できるため、障害者支援施設や特別支援学校などで重度障害者の生きがい作りに役立っている。来年2月には県内初の大会も開催される予定で普及に弾みがつきそうだ。
車いすに乗った男性が真剣なまなざしで白ボールめがけて赤ボールを投げた。隣に転がる青ボールにぶつかってボールの位置関係が変わると、喜びの声が上がった。北区祇園の障害者支援施設「竜ノ口寮」の食堂で、毎週金曜日に利用者十数人がボッチャを練習する。竜ノ口寮は06年、日中の活動を充実させようとボッチャを導入。08年に県内唯一のチーム「岡山ボッチャクラブ」を立ち上げた。
生活支援員の永島義久さん(36)によると、竜ノ口寮の利用者は脳性まひが約6割を占め、施設生活が長く活動の機会が持てない人もいた。ボッチャは意思表示ができれば参加できる。最初はビデオを見ながら試行錯誤し、選手同士の駆け引きや試合展開が読めない面白さに「やればやるほど引き込まれた」という。利用者の表情も変わった。日々の生活では職員が先回りして介護しがちだが、ボッチャは選手の指示がないと介助者は動けない。永島さんは「ボッチャは利用者が主役になる。社会参加と自立の切り札です」と話す。
練習に参加していた片岡三徳さん(46)は、首を痛めて電動車いすサッカーから転向した。脳性まひで手が不自由なため、専用の器具ランプスを使ってボールを転がす。片岡さんは「小さいころからいろいろスポーツをやったけど一番はまっている」と語った。
「ボッチャは命」。クラブ代表の杉本正治さん(59)はその魅力をこう表現した。脳性小児まひのため80年から寮で暮らす杉本さんは約3年前にボッチャを始めた。当初は軽い遊びのつもりだったが、ボール1球で試合の流れが変わるおもしろさに夢中になった。週1回の練習が待ち遠しい。現在はろっ骨を骨折して練習を休んでいるが間もなく復帰する。杉本さんは「ボッチャで初めて楽しみが見つかり、生活が変わった」と笑顔で話した。
竜ノ口寮がボッチャを始めて4年。小学校との交流試合や講習会などを開き、競技者の輪は広がりつつある。来年2月に北区いずみ町の桃太郎サブアリーナで大会が予定され、練習に一層熱が入っている。
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◇ボッチャ
パラリンピック正式種目の球技。欧州で重度脳性まひや四肢重度機能障害がある人のために考案された。日本では97年に日本ボッチャ協会が設立され、99年から全国大会が毎年開かれている。ジャックボールと呼ばれる白ボールを投げ、赤と青のボール6球ずつを投げたり転がしたり、他のボールにぶつけるなどして、いかにジャックボールに近づけるかを競う。手足が動かせなくても、ボールを転がす器具ランプスと介助者の助けがあればゲームに参加できる。最終的に最もジャックボールに近づけた方が勝つ。
毎日新聞 2010年10月7日 地方版
車いすに乗った男性が真剣なまなざしで白ボールめがけて赤ボールを投げた。隣に転がる青ボールにぶつかってボールの位置関係が変わると、喜びの声が上がった。北区祇園の障害者支援施設「竜ノ口寮」の食堂で、毎週金曜日に利用者十数人がボッチャを練習する。竜ノ口寮は06年、日中の活動を充実させようとボッチャを導入。08年に県内唯一のチーム「岡山ボッチャクラブ」を立ち上げた。
生活支援員の永島義久さん(36)によると、竜ノ口寮の利用者は脳性まひが約6割を占め、施設生活が長く活動の機会が持てない人もいた。ボッチャは意思表示ができれば参加できる。最初はビデオを見ながら試行錯誤し、選手同士の駆け引きや試合展開が読めない面白さに「やればやるほど引き込まれた」という。利用者の表情も変わった。日々の生活では職員が先回りして介護しがちだが、ボッチャは選手の指示がないと介助者は動けない。永島さんは「ボッチャは利用者が主役になる。社会参加と自立の切り札です」と話す。
練習に参加していた片岡三徳さん(46)は、首を痛めて電動車いすサッカーから転向した。脳性まひで手が不自由なため、専用の器具ランプスを使ってボールを転がす。片岡さんは「小さいころからいろいろスポーツをやったけど一番はまっている」と語った。
「ボッチャは命」。クラブ代表の杉本正治さん(59)はその魅力をこう表現した。脳性小児まひのため80年から寮で暮らす杉本さんは約3年前にボッチャを始めた。当初は軽い遊びのつもりだったが、ボール1球で試合の流れが変わるおもしろさに夢中になった。週1回の練習が待ち遠しい。現在はろっ骨を骨折して練習を休んでいるが間もなく復帰する。杉本さんは「ボッチャで初めて楽しみが見つかり、生活が変わった」と笑顔で話した。
竜ノ口寮がボッチャを始めて4年。小学校との交流試合や講習会などを開き、競技者の輪は広がりつつある。来年2月に北区いずみ町の桃太郎サブアリーナで大会が予定され、練習に一層熱が入っている。
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◇ボッチャ
パラリンピック正式種目の球技。欧州で重度脳性まひや四肢重度機能障害がある人のために考案された。日本では97年に日本ボッチャ協会が設立され、99年から全国大会が毎年開かれている。ジャックボールと呼ばれる白ボールを投げ、赤と青のボール6球ずつを投げたり転がしたり、他のボールにぶつけるなどして、いかにジャックボールに近づけるかを競う。手足が動かせなくても、ボールを転がす器具ランプスと介助者の助けがあればゲームに参加できる。最終的に最もジャックボールに近づけた方が勝つ。
毎日新聞 2010年10月7日 地方版