昨年12月、NHK教育テレビで放送された障害者の芸人が出演するバラエティー番組「笑っていいかも!?」が話題を呼んでいる。新潟県内を拠点に活動する「脳性マヒブラザーズ」の2人も出演。障害ネタで笑わせることへの歓迎と困惑、両方の反響を受け止めつつ、「笑いのバリアフリー」を模索している。
「笑っていいかも!?」は昨年12月4日、ゴールデンタイムの2時間特番として放送された。「障害者芸人」のナンバーワンを決める「M―1」ならぬ「SHOW―1グランプリ」や「障害者による障害物競走」などパフォーマンスで楽しませる一方、「障害を笑っていいのか」などをテーマに議論するコーナーも盛り込まれた。
「うまくしゃべれない」DAIGOさん(37)=ツイッターは@noubura= と、「歩けない」周佐則雄さん(36)。県立新潟養護学校の同窓生で同じ脳性まひの2人によるコンビ「脳性マヒブラザーズ」は、「SHOW―1グランプリ」でコント「お医者さん」を披露した。
「風邪だと思うんです」と受診した患者役のDAIGOさんに、車いすに乗った医師役の周佐さんが症状を尋ねる。DAIGOさんが「手が動かない、体が震える、うまくしゃべれない」と答えると、周佐さんがこう返す。「風邪じゃなくて、脳性まひですね」
出場7組の中からグランプリに輝いた。2人のコントを見た司会のカンニング竹山さんは番組の中で「どれだけ武器生かしてんだよ。おまえら汚いよ」と絶賛。「脳ブラ」のコントは放送後、インターネットの動画共有サイトに投稿され、約1週間で20万回のアクセス数を稼いだという。コメント欄でも「ふつうに面白すぎ」「これ、笑っていいのか?」「全然笑えない」など議論が起こっていた。
3年前に一緒に新潟刑務所を慰問して以来、脳ブラと親交があるという「WAHAHA本舗」所属の芸人コラアゲンはいごうまんさんは、放送翌日に収録があった人気番組「人志松本のすべらない話」の楽屋が、「笑っていいかも!?」の話題で持ちきりだった、と話す。
「よく実現したな」「共演することになって絡むとしたら、どの角度から突っ込めばいいのか」。第一線で活躍する芸人たちが真剣に話し合っていたそうだ。
コラアゲンさんは刑務所慰問で一番ウケていたのが脳ブラだったことを思い出す。「自分の中でハンディだと思っていることを面白がること、悲劇を喜劇に変えていくことで心豊かな人生を送れるようになる。2人の強みも、芸人の可能性も、そこにあると思う」と語る。
本人たちにも戸惑いはある。「芸人だから障害を武器にするけど、一般の人なら笑われたくないはず」と周佐さん。実際、年末の養護学校の同窓会でも「不愉快だった」と話す同級生がいたという。
ただ周囲の気遣いや困惑も、「面白いなら笑うはず」ととらえている。「あの番組で本当にウケたなら、もっと仕事が増えているはずですから」と冷静に分析する。
全国放送の番組への出演で、意識が高くなったことは確か。「『障害者なのにがんばってますね』と最初から違う目で評価されないようにするためには、まずはいいネタができるようにしないといけない。もっと高いレベルでやりたい」と意気込んでいる。
ネタ合わせする周佐さん(左)とDAIGOさん=新潟市
朝日新聞