うつ病など心の病を抱えた人にとって、「がんばれ!」などの励ましの言葉は禁句といわれる。この夏、帰省やボランティア活動などで被災地に向かう人もいるだろうが、未だ復興の途上で、心に深い傷を負った被災者にどう接したらいいのか。専門医に聞いた。
【弱音を吐けない状況がストレス】
日本うつ病学会が先日開かれた総会で、東日本大震災の被災者を支援する人たちや報道機関に向けて緊急提言を発表した。
提言では、「がんばれ」、「強く」、「絶対」、「大丈夫」といった言葉は、被災者の立場では、ときにはつらく感じる場合がある、と指摘している。
被災者の心の状態について、精神神経科「池上クリニック」(川崎市)の池上秀明院長は「気分が沈み、脱力感、食欲がなくなり眠れない。うつ病に似た状態だが、かなり違うのは被災者の場合は同じ状況に置かれた人が周りに大勢いること」と話す。
うつ病では自ら孤立感を強めてしまう。だが、被災した人の場合は「つらい思いは自分だけじゃないのだから…」と、周囲に気兼ねして素直に弱音を吐けない状況が過剰なストレスとして重くのしかかってしまうのだ。
【うつ病への進展やPTSDの悪化も】
そんな心の状態で、すべてを失った被災者の中には「がんばれ」の励ましの声に対して、「これ以上、何をどうがんばれというのか」という思いもあることを知っておかなければいけない。
「うつ病の人の場合も同じで、『こんなに努力しているのに』『がんばっているのに…』という思いがある。『なんとかなるさ』のような言葉も、自分のことを全然分かってもらえていないと感じます。なんとかならないから悩んでいるわけですから」(池上院長)
震災による心の傷は、多くは時間の経過と共に軽減していくもの。だが、その過程で不安定な心の状態が悪化すれば本格的なうつ病の発症や心的外傷後ストレス障害(PTSD)となって引きずる懸念もでてくる。
【安心感を与える励ましの言葉】
では、被災者の支援を考えた場合、どんな言葉をもって接することが適切といえるのか。
池上院長は「寄り添って見守るような気持ちが大事」とこう指摘する。
「被災者の方たちに『素直に弱音を吐いてもいいんだ』と感じてもらえることが大切です。『何かあったら相談してください』『いつでも手を貸します』などの、安心感を与えるような言葉で対応する方がいいでしょう」
一方、被災者の人たちに対しては「少しでもつらく感じたら過度に我慢しないことが重要になります。早期に専門のケアチームに打ち明けて、時間をかけてゆっくり日常生活を取り戻していくことが大切です」と話す。
■落ち込んでいる被災者に対する禁句の例
×頑張れば何とかなる
×みんなが応援しているから大丈夫
×みんなが心配しているからしっかりして
×強い気持ちで困難に立ち向かおう
×努力の積み重ねが大事
×真面目にやれば絶対に立ち直れる
ZAKZAK -
【弱音を吐けない状況がストレス】
日本うつ病学会が先日開かれた総会で、東日本大震災の被災者を支援する人たちや報道機関に向けて緊急提言を発表した。
提言では、「がんばれ」、「強く」、「絶対」、「大丈夫」といった言葉は、被災者の立場では、ときにはつらく感じる場合がある、と指摘している。
被災者の心の状態について、精神神経科「池上クリニック」(川崎市)の池上秀明院長は「気分が沈み、脱力感、食欲がなくなり眠れない。うつ病に似た状態だが、かなり違うのは被災者の場合は同じ状況に置かれた人が周りに大勢いること」と話す。
うつ病では自ら孤立感を強めてしまう。だが、被災した人の場合は「つらい思いは自分だけじゃないのだから…」と、周囲に気兼ねして素直に弱音を吐けない状況が過剰なストレスとして重くのしかかってしまうのだ。
【うつ病への進展やPTSDの悪化も】
そんな心の状態で、すべてを失った被災者の中には「がんばれ」の励ましの声に対して、「これ以上、何をどうがんばれというのか」という思いもあることを知っておかなければいけない。
「うつ病の人の場合も同じで、『こんなに努力しているのに』『がんばっているのに…』という思いがある。『なんとかなるさ』のような言葉も、自分のことを全然分かってもらえていないと感じます。なんとかならないから悩んでいるわけですから」(池上院長)
震災による心の傷は、多くは時間の経過と共に軽減していくもの。だが、その過程で不安定な心の状態が悪化すれば本格的なうつ病の発症や心的外傷後ストレス障害(PTSD)となって引きずる懸念もでてくる。
【安心感を与える励ましの言葉】
では、被災者の支援を考えた場合、どんな言葉をもって接することが適切といえるのか。
池上院長は「寄り添って見守るような気持ちが大事」とこう指摘する。
「被災者の方たちに『素直に弱音を吐いてもいいんだ』と感じてもらえることが大切です。『何かあったら相談してください』『いつでも手を貸します』などの、安心感を与えるような言葉で対応する方がいいでしょう」
一方、被災者の人たちに対しては「少しでもつらく感じたら過度に我慢しないことが重要になります。早期に専門のケアチームに打ち明けて、時間をかけてゆっくり日常生活を取り戻していくことが大切です」と話す。
■落ち込んでいる被災者に対する禁句の例
×頑張れば何とかなる
×みんなが応援しているから大丈夫
×みんなが心配しているからしっかりして
×強い気持ちで困難に立ち向かおう
×努力の積み重ねが大事
×真面目にやれば絶対に立ち直れる
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