練習通じ あいさつ堂々
■知的障害者のスポーツクラブ運営「ハートネット西条」
「チャンス、前にいこう」「中へ、中へ」。真夏の昼下がり、松山市内の体育館に声が響き渡った。フットサルをプレーするために集ったのは、知的障害がある約20人の若者らだ。
うち12人が、西条市のNPO法人「ハートネット西条」が運営する「オール東予スポーツクラブ」のメンバー。軽やかなステップで相手を交わして鋭いシュートを放つ経験者も、思わずパスをよけてしまう初心者も同じフィールドでボールを追い、充実感に満ちた表情を見せた。
◆
ハートネット西条は、今治特別支援学校教員だった野口征次郎さん(64)が退職後の2006年12月、同校卒業生の就労支援の場として地域活動支援センターを設けるために設立。しかし、平日はセンターで農業などの活動に精を出すのに、土日には地域社会になじめず、自宅にひきこもる利用者が多かった。
野口さんは「自宅でテレビゲームばかりに興じるのではなく、外へ出て楽しめる受け皿はできないだろうか」と思案。スポーツならば様々な人同士が交流しやすいだろうと、半年後にスポーツクラブをつくった。
クラブのメンバーは18~45歳の26人。月に一度、ボール一つあれば、初心者でも参加しやすいサッカーに取り組む。指導は障害者福祉施設の職員らが担当するが、時にはサッカーJ2・愛媛FCの選手に教えを請うこともある。当初は物おじするメンバーもいたが、練習を続けるうち、障害者以外の人に対しても、堂々とあいさつや会話ができるようになったり、素晴らしいプレーを見せたメンバーの元に仲間が駆け寄ってほめたたえたりと、目に見える変化が現れた。
昨年から障害者介護施設で働く徳永陵さん(24)は2年前にクラブへ加入。週末に気の合う仲間と楽しんで気持ちを発散させると、仕事での自信にもつながるという。「友人とプレーできる時間が楽しみ」と笑顔を見せる。
◆
ハートネット西条では、同様のクラブを中予、南予にも各特別支援学校の体育館などを拠点にして設立する計画を立てている。野口さんは「障害者が実社会で壁にぶつかっても、スポーツで得た自信を糧に乗り越える力を身につけられる場となってほしい」と願っている。
(奥原慎平)
(「集おう! えひめのNPO」は今回で終了します)
【メモ】 現在の主な活動拠点は、松山市の県身体障害者福祉センターで、第1日曜の午後1~4時。無料。基本的に40歳代前半まで。問い合わせは、ハートネット西条が運営する地域活動支援センター「あけぼの」(0898・68・8015)。
ボールを追うオール東予スポーツクラブのメンバー(松山市の県身体障害者福祉センターで)
(2011年8月14日 読売新聞)
■知的障害者のスポーツクラブ運営「ハートネット西条」
「チャンス、前にいこう」「中へ、中へ」。真夏の昼下がり、松山市内の体育館に声が響き渡った。フットサルをプレーするために集ったのは、知的障害がある約20人の若者らだ。
うち12人が、西条市のNPO法人「ハートネット西条」が運営する「オール東予スポーツクラブ」のメンバー。軽やかなステップで相手を交わして鋭いシュートを放つ経験者も、思わずパスをよけてしまう初心者も同じフィールドでボールを追い、充実感に満ちた表情を見せた。
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ハートネット西条は、今治特別支援学校教員だった野口征次郎さん(64)が退職後の2006年12月、同校卒業生の就労支援の場として地域活動支援センターを設けるために設立。しかし、平日はセンターで農業などの活動に精を出すのに、土日には地域社会になじめず、自宅にひきこもる利用者が多かった。
野口さんは「自宅でテレビゲームばかりに興じるのではなく、外へ出て楽しめる受け皿はできないだろうか」と思案。スポーツならば様々な人同士が交流しやすいだろうと、半年後にスポーツクラブをつくった。
クラブのメンバーは18~45歳の26人。月に一度、ボール一つあれば、初心者でも参加しやすいサッカーに取り組む。指導は障害者福祉施設の職員らが担当するが、時にはサッカーJ2・愛媛FCの選手に教えを請うこともある。当初は物おじするメンバーもいたが、練習を続けるうち、障害者以外の人に対しても、堂々とあいさつや会話ができるようになったり、素晴らしいプレーを見せたメンバーの元に仲間が駆け寄ってほめたたえたりと、目に見える変化が現れた。
昨年から障害者介護施設で働く徳永陵さん(24)は2年前にクラブへ加入。週末に気の合う仲間と楽しんで気持ちを発散させると、仕事での自信にもつながるという。「友人とプレーできる時間が楽しみ」と笑顔を見せる。
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ハートネット西条では、同様のクラブを中予、南予にも各特別支援学校の体育館などを拠点にして設立する計画を立てている。野口さんは「障害者が実社会で壁にぶつかっても、スポーツで得た自信を糧に乗り越える力を身につけられる場となってほしい」と願っている。
(奥原慎平)
(「集おう! えひめのNPO」は今回で終了します)
【メモ】 現在の主な活動拠点は、松山市の県身体障害者福祉センターで、第1日曜の午後1~4時。無料。基本的に40歳代前半まで。問い合わせは、ハートネット西条が運営する地域活動支援センター「あけぼの」(0898・68・8015)。
ボールを追うオール東予スポーツクラブのメンバー(松山市の県身体障害者福祉センターで)
(2011年8月14日 読売新聞)