秋空の下、黄金色の稲穂を収穫−−。東区九蟠で農作業に取り組む岡崎三千男さん(67)は2008年春、農業を仕事とする精神や知的、精神障害者たちの就労継続支援A型事業所「マルキュー」を設立した。高齢化する農家など農業はさまざまな課題を抱えているが、岡崎さんは「障害があっても、できる農作業はある。広い屋外での仕事は気持ち良いですよ」と笑顔で語った。
「やっと、うちの田んぼの収穫に取りかかります」。11月18日、岡崎さんは忙しそうにコンバインを操作した。マルキューは9・4ヘクタールの田畑で、米やダイコン、アスパラガスなどの野菜栽培を手掛けている。高齢の農家から収穫作業を請け負ったり、乾燥機や籾(もみ)すり機など設備投資ができない農家の籾の乾燥や玄米にするなど、今年は8軒から作業の依頼があった。そのためマルキュー自体が手掛ける田んぼでは、付近より遅めの今月中旬にピークを迎えた。
現在、精神や知的、身体の障害者23人が通い、午前9〜10時から草刈りや割れがないかなど米の選別、運搬などの農作業に取り組む。就業時間は1日約4時間で、月給6万円程度だという。
ゴォーと音を立て、岡崎さんがコンバインから刈り取った籾を勢い良くトラック上の大きな袋に注ぐ。袋がいっぱいになる直前に操作する岡崎さんに「ストップ」の合図を出すのは利用者の石浦昇さん(63)だ。「うつになってね。これまで仕事は転々としたよ。農業はしたことはなかったけど、ケースワーカーにここを紹介された」という石浦さん。手際良くトラックを運転して、田んぼから数百メートル離れた作業所へ運び、指導員の富山直さん(73)と一緒に乾燥機へ搬入した。富山さんは「作業を覚えるまでは苦労しているけどね」と苦笑いしつつも、根気よく、丁寧に指導している。
マルキューは、レンゲを土にすき込む「緑肥」で米を育て、減農薬の有機栽培に取り組む。岡崎さんが農業を始めたのは17年前の50歳の頃。それまでは家業の営業職を務めていたが、健康意識が高かった岡崎さんは「農薬や化学肥料を使わずに米作りができないか」と農業を始めた。その後、知人から「イチゴのハウス栽培もやってみないか」と勧められた。腰を曲げずに作業できる「高設栽培」のハウス内の通路を見て「これなら、車椅子の人でも作業ができるのではないか」と考えたのが事業所設立のきっかけだ。
農機具の泥を落とし、手入れをしていた利用者の男性(42)は「ええ時期に取材に来られたなぁ。今が一番忙しくて、やりがいのある時ですよ」と笑顔で話してくれた。岡崎さんは「作付けから収穫まで、全員が全てを理解してできるわけではないが、それぞれが出来る作業に取り組めたらいい。イチゴ栽培も今後2〜3年後に始めますよ」と自信を見せた。
毎日新聞 2013年12月04日 地方版
「やっと、うちの田んぼの収穫に取りかかります」。11月18日、岡崎さんは忙しそうにコンバインを操作した。マルキューは9・4ヘクタールの田畑で、米やダイコン、アスパラガスなどの野菜栽培を手掛けている。高齢の農家から収穫作業を請け負ったり、乾燥機や籾(もみ)すり機など設備投資ができない農家の籾の乾燥や玄米にするなど、今年は8軒から作業の依頼があった。そのためマルキュー自体が手掛ける田んぼでは、付近より遅めの今月中旬にピークを迎えた。
現在、精神や知的、身体の障害者23人が通い、午前9〜10時から草刈りや割れがないかなど米の選別、運搬などの農作業に取り組む。就業時間は1日約4時間で、月給6万円程度だという。
ゴォーと音を立て、岡崎さんがコンバインから刈り取った籾を勢い良くトラック上の大きな袋に注ぐ。袋がいっぱいになる直前に操作する岡崎さんに「ストップ」の合図を出すのは利用者の石浦昇さん(63)だ。「うつになってね。これまで仕事は転々としたよ。農業はしたことはなかったけど、ケースワーカーにここを紹介された」という石浦さん。手際良くトラックを運転して、田んぼから数百メートル離れた作業所へ運び、指導員の富山直さん(73)と一緒に乾燥機へ搬入した。富山さんは「作業を覚えるまでは苦労しているけどね」と苦笑いしつつも、根気よく、丁寧に指導している。
マルキューは、レンゲを土にすき込む「緑肥」で米を育て、減農薬の有機栽培に取り組む。岡崎さんが農業を始めたのは17年前の50歳の頃。それまでは家業の営業職を務めていたが、健康意識が高かった岡崎さんは「農薬や化学肥料を使わずに米作りができないか」と農業を始めた。その後、知人から「イチゴのハウス栽培もやってみないか」と勧められた。腰を曲げずに作業できる「高設栽培」のハウス内の通路を見て「これなら、車椅子の人でも作業ができるのではないか」と考えたのが事業所設立のきっかけだ。
農機具の泥を落とし、手入れをしていた利用者の男性(42)は「ええ時期に取材に来られたなぁ。今が一番忙しくて、やりがいのある時ですよ」と笑顔で話してくれた。岡崎さんは「作付けから収穫まで、全員が全てを理解してできるわけではないが、それぞれが出来る作業に取り組めたらいい。イチゴ栽培も今後2〜3年後に始めますよ」と自信を見せた。
毎日新聞 2013年12月04日 地方版