障害者─進まない「脱施設化」、「地域福祉」
2000年に社会福祉基礎構造改革が行われた。その時のテーマは、地域福祉の推進であった。地域福祉とは、住み慣れた地域で誰もが安心して住み続けられるように、支援システムを整備していくことである。
障害者が一人暮らしをしたいと思ったときにも可能なように支えていくことだろう。しかし、未だにその支援システムの整備は進んでいない。そのため、家族などの介助者がいれば、地域で住み続けることは可能だが、介助者がいなくなった場合、介助困難を理由として、施設への転居を勧められることは頻繁に行われている。
軽度知的障害のある50歳代の男性は、介助者の母親の死をきっかけに、役所から施設への転居を勧められたが、拒否をした。その後、家賃の支払いや生活全般に関して、介助なしでは困難なため、住み慣れた公営住宅を解約し、ホームレス生活に至ってしまう。公営住宅で一人暮らしを支える仕組みや支援者がいれば、施設入所することなく、その場で生活することは可能であっただろう。
そして、障害者にとって必要な住宅支援とは何か、という議論が不足している。障害年金で住み続けることが可能であり、バリアフリーなどの特別な配慮のある住宅は、十分な量の供給がない。移動に制限があるにもかかわらず、公共交通機関から離れた不便な場所に住み続けざるを得ない人々の姿も見られる。
また、社会福祉分野では「社会的入院」という言葉がある。これは、医療機関における治療や静養が必要なく、退院が可能にもかかわらず、医療機関に留まっている人々を表す言葉である。例えば、精神科病院の患者は、平均291.9日間、療養病棟では171.8日間、入院継続している。20年、30年というより長期間にわたる入院患者も存在している。
このように何らかの障害を有し、日常生活に何らかの配慮を必要とされる人々の住宅が足りない。病院以外の場所で生活することは可能であるが、低廉な、バリアフリー住宅、グループホーム、ケア付き住宅が不足している。
地域福祉が推進され、「脱施設化」が叫ばれ、障害者の地域生活支援を支える仕組みが整えられてきているが、障害者にとって住みやすい住宅とは何か、という議論は今も不足したままだ。
参考文献・資料:厚生労働省「平成24年(2012)医療施設(動態)調査・病院報告の概況」
ビッグイシュー・オンライン: 2013年12月27日 09:00
2000年に社会福祉基礎構造改革が行われた。その時のテーマは、地域福祉の推進であった。地域福祉とは、住み慣れた地域で誰もが安心して住み続けられるように、支援システムを整備していくことである。
障害者が一人暮らしをしたいと思ったときにも可能なように支えていくことだろう。しかし、未だにその支援システムの整備は進んでいない。そのため、家族などの介助者がいれば、地域で住み続けることは可能だが、介助者がいなくなった場合、介助困難を理由として、施設への転居を勧められることは頻繁に行われている。
軽度知的障害のある50歳代の男性は、介助者の母親の死をきっかけに、役所から施設への転居を勧められたが、拒否をした。その後、家賃の支払いや生活全般に関して、介助なしでは困難なため、住み慣れた公営住宅を解約し、ホームレス生活に至ってしまう。公営住宅で一人暮らしを支える仕組みや支援者がいれば、施設入所することなく、その場で生活することは可能であっただろう。
そして、障害者にとって必要な住宅支援とは何か、という議論が不足している。障害年金で住み続けることが可能であり、バリアフリーなどの特別な配慮のある住宅は、十分な量の供給がない。移動に制限があるにもかかわらず、公共交通機関から離れた不便な場所に住み続けざるを得ない人々の姿も見られる。
また、社会福祉分野では「社会的入院」という言葉がある。これは、医療機関における治療や静養が必要なく、退院が可能にもかかわらず、医療機関に留まっている人々を表す言葉である。例えば、精神科病院の患者は、平均291.9日間、療養病棟では171.8日間、入院継続している。20年、30年というより長期間にわたる入院患者も存在している。
このように何らかの障害を有し、日常生活に何らかの配慮を必要とされる人々の住宅が足りない。病院以外の場所で生活することは可能であるが、低廉な、バリアフリー住宅、グループホーム、ケア付き住宅が不足している。
地域福祉が推進され、「脱施設化」が叫ばれ、障害者の地域生活支援を支える仕組みが整えられてきているが、障害者にとって住みやすい住宅とは何か、という議論は今も不足したままだ。
参考文献・資料:厚生労働省「平成24年(2012)医療施設(動態)調査・病院報告の概況」
ビッグイシュー・オンライン: 2013年12月27日 09:00