政府は、障害者への福祉サービスを提供する事業者に対し、おもに税金から支払う報酬を2015年度から引き下げる方向で最終調整に入った。介護事業者に支払う「介護報酬」を引き下げるのに合わせ、増え続ける社会保障費の伸びを抑えるねらい。福祉の現場で働く人の賃金にあてる報酬は引き上げる方針だ。
障害者施設でのサービスや、障害者の自宅でのサービスにかかる費用は、国が定める公定価格の「障害福祉サービス等報酬」に基づき、国や地方自治体が事業者にお金を支払う。所得に応じてサービス利用者が一部を負担する場合もある。
14年度の国の負担は約9千億円。利用者数は08年の約40万人から14年は70万人近くに増えており、15年度は国の負担も約1兆円に増える見通しだ。財務省や厚生労働省などは事業者向けを1%前後引き下げる方向で調整している。
いまの報酬制度が始まった06年以来、ほぼ3年ごとに報酬を見直してきたが、マイナスとなるのは初めて。12年度の改定では2%の増額だった。
財務省によると、事業者が実際にサービスに使っている費用より公定価格の方が高く、事業者の実質的な「もうけ」は過大だという。同省の試算では、障害福祉サービスの事業者では、企業の利益率にあたる「収支差率」が12%程度あり、介護事業者(8・7%)より多い。このお金をサービスの充実や職員の賃金に回せば、事業者への報酬を下げても障害者へのサービス切り下げにはつながらないとみている。
一方、現場で働く職員は月額1万円程度の賃上げになるよう、賃金向けの報酬である「処遇改善費用」をつける。
2015年1月7日 朝日新聞デジタル