諏訪地方6市町村が、一昨年4月施行の障害者優先調達推進法に基づき、年度ごとに調達方針を策定し、障害者が働く事業所への物品・役務の発注を拡大している。障害者就労施設の「仕事量の増加や工賃アップにつながる」と成果を期待し、「民間にも活用の輪が広がってほしい」と願いを込める。一方で、行政側の発注と事業所側が受注可能な物品・役務との「マッチングが難しい」といった課題も挙げられている。
3市でみると、昨年度は岡谷市が51万円、諏訪市が112万円、茅野市が130万円を発注。選挙啓発用のクッキーや保育園のおやつ、公共施設の草刈り、印刷物の製本などで、諏訪市の担当課は「きちんとした仕事で品質もいい」とし、「発注は着実に増えているが、掘り起こせばまだまだ仕事はあると思う」と話す。
岡谷市によると、件数には反映されないが、施設で作ったコップ袋や給食袋などを入園準備品として公立全14保育園で紹介し、売り上げは10万円以上になるという。3市は今年度の目標額をそれぞれ100~120万円に設定する。
富士見町は昨年度、35万円の目標をほぼ達成した。「従来(封筒詰めなどの)役務利用は保健福祉分野からの発注にとどまっていたが、全庁的に利用を促進し、浸透しつつある」と担当課。「対応可能なサービス、物品の情報共有が進み、民間にも活用の思想が広がれば」と願う。
原村は、昨年度実績が74万円と、11年度比で12万円ほど上積みした。下諏訪町は「地域の障害者自立の支援ができる」と利点を強調。岡谷市内の福祉作業所の女性スタッフは「菓子の発注があり、行政主催のイベント会場に置いてくれる。地域住民に施設をPRできる」と喜ぶ。
施行から1年半余り、成果だけでなく課題も出ているようだ。「施設側で受託できる用務・物品のメニューが明確でなく、問い合わせたり相談をしながら決めている。(選挙啓発物品など)突発的に調達が必要な場合もあり、利用が難しい面もある」と富士見町。「行政側のニーズと相手側の物品が合いにくい」(下諏訪町)と、マッチングの難しさを指摘する声も多い。
障害者就労施設からの調達は国の基準で随意契約ができるが、茅野市は、競争入札を基本とする。担当課は「公平性を確保するためにも、できる限り一般業者と同じ土俵(競争入札)で勝負してほしい。そうすることで施設側の品質が向上し、仕事が増える」とし、「競争に耐えうる仕事や施設運営を考えることが、結果的に障害者の社会参加と自立を促すことになる」と指摘している。
:2015-1-13 6:01 長野日報