元AKB48メンバーで俳優の秋元才加さんが、鹿児島県大崎町を舞台にしたヒューマン劇映画「マンゴーと赤い車椅子」(2月7日公開)で、突発事故で車いす生活を送ることになった主人公、彩夏を演じます。受けいれがたい現実と格闘しながら前を向いていく。立ち直るまでの心の動きを鮮やかに表現する秋元さんをGet!
-作品の見どころは。
★秋元 私、不倫をしていて自殺を図ろうとして転落事故で半身不随になった彩夏の役なんです。家族の支えであったり、リハビリセンターで出会った仲間と過ごすことによって、現実を受け止めて、今をどう精いっぱい生きていくか考えるようになっていく。
仲倉重郎監督は実際、車いすの監督で、「車いす、障害者となるとお涙ちょうだいの映画が多い。でも僕は、同情だったりかわいそうっていうの、要らないんです」って。「こういう風に生活してる、ひたむきにリハビリをして、もう一歩踏み出して力強く生きている、っていうところを描きたかった」とおっしゃってました。私も勇気を与えることができる映画になったらいいなと思っています。
撮影では鹿児島の大隅半島にある大崎町の人たちに町ぐるみでご協力いただきました。障害者にやさしい町づくりをしている町なんです。たくさんの人に見ていただいて、少しでも地域活性化のお役に立てたらいいな。
-熱演ですね。リハビリを始める最初の頃のいらだちは真に迫っていた。
★秋元 あとで見て、ああ、私こんな顔してたんだ、うわーと思って。思った以上に顔が怖かったんで、びっくりしたんですけど(笑)。
-突然の脊髄損傷、不倫相手との別れ…感情表現、難しかったですか。
★秋元 彩夏は直情、激情的なところがあるんです。自分なりに想像してみたり、いろんな人に話を聞いて役を作りました。不倫の心情も想像して表現してみましたけど、なかなか難しかった(笑)。でも、撮影中はもうがむしゃらに必死でやってただけなんで。車いすだから動きは地味じゃないですか。だからこそ(うまく感情表現する)主演の責任を担っていたんだなと今あらためて感じています。
映画の前に(別件でたまたま)パラリンピックの選手の方々と対談する仕事をしたんです。みなさん自分の現実を受け入れて一生懸命生きてる方ばかりで、まず“かわいそうと思ってる自分は失礼だな”って思って。“どこまで手を差し伸べるのがやさしさなのか”と考えさせられました。車いすはちょっとの段差でも(乗り越えるのが)怖かった。バリアフリーの場所ってまだまだ整備さ
れていないですよね。
-手応えある演技ができた場面は。
★秋元 (リハビリ病院の入院仲間の)ちいちゃんという女の子と二人で真夜中、車いすから地面に倒れ込んでしまって語り合うシーンは自分の中でもしっくりきたところ、かな。
-お互いのつらい過去を語り合う。
★秋元 自分のいいところだけじゃい、すべてをぶつけ合ったときに(関係が)近くなれる。好きなシーンなんです。あの場面の「もうちょっと生きよう」という言葉が見てくださってる方に響いてくれたら、この映画は成り立つんじゃないかなって思いました。
-俳優としての売りは。
★秋元 売りですか~?…これまで強い役が多かった。顔も結構、強くて、体もおっきくてがっちりしてるので、アクションものが続いていました。身長ですか、166センチです。幼少期から合気道をやっていたり、バスケットボールをやってました。ハーフなので、普通の日本人より体が動けるみたいで。アイドルだったときは弱みだったかもしれない、自分的にはつい最近までコンプレックスだったりしていた強さの部分。それが生きる役をこれからいただけるのかな、という感じはしています(笑)。
-将来の夢は。
★秋元 この仕事を続けられたら万々歳だなって。女優業はまだ1年たったところ。叱咤(しった)激励を受けながら、さらに精進していけたらいいなあと思っています。近い将来、「役者秋元才加」と認知していただくことが一つの夢ですね。
▼あきもと・さやか 1988年千葉県生まれ。2013年8月、7年在籍したAKB48を卒業し、女優の道へ。これまで三谷幸喜作・演出の舞台「国民の映画」や特撮テレビドラマ「牙狼-GARO-魔戒ノ花-」などに出演した。
=2015/01/25付 西日本新聞朝刊=