スポーツに挑戦する障害者を支援しようと、企業が全面的にバックアップする取り組みが倉吉市で始まっている。鳥取県内では企業のサポート体制は十分ではなく、関係者らは「障害がある人も夢に向かって競技力を高めていける環境に、一歩でも近づけたい」と意気込んでいる。
2020年の東京オリンピック・パラリンピックや、来春に鳥取市で開催される日本パラ陸上大会など、障害者スポーツへの関心は高まりつつある。一方で、障害者の多くは働き始めると競技から離れ、意欲があっても指導者不在や練習会場への参加手段、大会遠征費が確保できないなど環境は厳しい。
日本障がい者スポーツ協会公認指導員で、県障がい者卓球協会副理事長を務める若原優二さん(40)は、「何とかしたい」と悩みながら指導していた際、倉吉市のペットフード製造販売会社「ドアーズ」の柴田智宏社長(41)と出会った。
柴田社長は、社会福祉法人で障害者の工賃月平均5万円(当時の県内平均1万4429円)を実現。就労の選択肢を広げようと、2013年4月に「ドアーズ」を創業した。
柴田社長は「このまま工賃を上げるのを追求していくだけが、彼らの幸せだろうか。環境さえ整えればもっと自己実現できる。夢を追いかける人を支援したい」と考えていた時に、若原さんと思いが合致した。
2人は「上を目指す選手を育てよう」を目標に掲げ、約1年間の準備期間を経て、NPO法人「かがやきプロジェクト」鳥取支部に、パラリンピック挑戦プロジェクトを設置。ドアーズが選手のユニホームや用具費、遠征費などをNPOに支援する形で支援体制が整った。
選手は高校生から30代まで20人弱。若原さんら指導者も確保し、同市関金町の施設を拠点に陸上と卓球に打ち込む。中には19、20日に大阪市で開催されるジャパンパラ陸上に出場する選手もいる。柴田社長と若原さんは「関係機関とも連携しながら、障害のある人たちが夢を追っていくのを支援していきたい」と話している。
陸上の練習をするメンバーを見守る柴田社長(後列右)と若原さん(右から2人目)ら=倉吉市内
2015年9月4日 日本海新聞