障害者に安定した賃金を得られる場を提供するため、伊勢崎市の社会福祉法人「明清会」は10月、畑の上に太陽光パネルを設置して農業と売電を行うソーラーシェアリングを始める。土地の有効活用で利益を上げ、障害者約20人を雇い、1人あたり月給10万円を目指す。
明清会は、同市や前橋市で農作業やレストラン運営などによる障害者の就労支援を行っている。障害者により高い賃金を支払おうと、2012年6月に株式会社「さくら」を設立し、準備を進めてきた。
前橋市荒子町に、地元の農家から約1・3ヘクタールの畑を借り、縦1メートル05、横1メートル46の太陽光パネル約2240枚を設置。地面とパネルの間に約2~2メートル80の空間を確保し、トラクターを使って農作業ができる。
太陽光発電は最大出力計650キロ・ワットで、東京電力に売電。年間2800万円の売り上げを見込む。畑の一部(約3500平方メートル)に11月中旬、タマネギの苗を植えるほか、来春にはイモ類の栽培も始める。タマネギは年間約1・5トンを収穫する予定で、県内の食品加工会社などに販売することが決まっている。農業では当初、年間計約360万円の売り上げを目指す。
雇用は来年4月から始める。明清会の就労支援事業を利用している精神障害者が中心になる見通しで、農作業に従事してもらう。福祉専門職員や農業に詳しいスタッフなど5人程度を雇用し、障害者のサポートや発電事業を任せる。
明清会の小暮明彦代表は「月給10万円を実現できれば、障害基礎年金と合わせて月に約17万~18万円の収入になる。自立した生活を送れる障害者も増える」と意欲をみせる。
一般社団法人「ソーラーシェアリング協会」(千葉県市原市)も「障害者の就労支援にソーラーシェアリングを活用する取り組みは珍しく、新しいモデルとなる」と注目している。
<ソーラーシェアリング>農地の上に太陽光パネルを設置し、営農しながら発電を行う仕組み。パネルによる遮光率は30%程度で作物の生育に支障がない。主に支柱を立てる部分だけ農地の用途を変更すればよく、農地転用に伴う煩雑な手続きが少なくて済む利点もある。農林水産省は「年間収穫量が地域の平均より2割以上減らない」などをパネル設置の条件としている。
10月の稼働に向け整備が進む前橋市荒子町の畑。太陽光パネルの下をトラクターが通ることができる
2015年09月18日 Copyright © The Yomiuri Shimbun