土浦駅前に24日開庁した市役所新庁舎は、ユニバーサルデザインやバリアフリーを特徴の一つに掲げる。開庁した24日、車いす利用者団体「アクセスジャパン」代表で同市バリアフリー推進協議会委員も務める今福義明さん(57)と、庁内を歩いてバリアフリー度を点検した。全体的な印象について今福さんは「大枠として高得点」と話す一方、県内初の盲導犬用トイレの誘導案内など課題も指摘した。
市は庁舎の設計段階から、障害者の意見を聞く場を複数回設け、当事者の意見を取り入れながら設計に生かしてきた。今福さんは、当事者の声が実際にどう生かされたのかを点検した。
土浦駅西口前の駅方面入り口から庁舎2階に入った。駅と庁舎を結ぶペデストリアンデッキには新たに屋根が設置され、駅から雨にぬれないで庁舎に行くことができる。屋根の設置は障害者団体の要望事項の一つだ。「雨にぬれないで駅から直行できるのは関東ではほかに、今年5月、東池袋駅と直結した豊島区庁舎ぐらい」と今福さん。
今福さんは、駅舎や公共施設などが新設されたという情報を得ると全国各地に出向き、長年、バリアフリー度をチェックし、改善の要望などをしている。
庁内に入るとまず館内の案内表示をチェック。「見やすいし多機能トイレばかりかATM(現金自動預け払い機)やAED(自動体外式除細動器)も表示されている」と評価。ただし「文字がやや小さいかな」とも。
入り口から続く点字誘導ブロックの色については「黄色なので床の色との違いがはっきりしている」と評価する。近年、デザイン性を優先して背景の色との違いが際立たない色の点字ブロックが出現し、議論になっているという背景がある。
庁舎1、2階は、一般市民が多く利用する市民課や福祉課、納税課などがあり、壁やカウンターのデザインは曲線で構成されている。「おしゃれでやさしい印象。庁舎がおしゃれになると市のイメージも変わりスマートに見える」と今福さん。
1、2階の総合案内カウンターには車いすでも利用しやすい、一段低くなったローカウンターも併設されている。
トイレは1~4階全階に多機能トイレが設置されているほか、1、2階には幼児用のキッズトイレが設置。「市役所にキッズトイレが設置されているのは珍しいのでは。ユニバーサルデザインの新しい技術が導入されている」と今福さんは驚きを隠さない。
補助犬トイレ誘導案内指摘
一方、課題の指摘もあった。庁舎隣りの立体駐車場2階には、視覚障害者の声を生かして、盲導犬・介助犬用の補助犬用トイレが県内で初めて設置された。しかしどこにも誘導案内表示がなく場所がわからない。「視覚障害者をどうやって誘導するのかの観点がない。県内で初めて設置したことは評価したいがお粗末」と今福さん。
ほかに、総合案内に聴覚障害者と筆談するための筆談ボードが置かれてない、点字誘導ブロックがトイレまで誘導案内していない、自動扉があることを知らせる点字警告ブロックがないなどの指摘もあった。
これに対し市は、筆談ボードの設置などすぐに改善できる点は改善したいとしている。
車いすで庁舎のバリアフリー度をチェックする今福義明さん
2015年09月26日 常陽新聞スマートフォン版