エフピコ16%でダントツ、良品計画が大幅増
毎年9月は障害者雇用支援月間。当事者だけでなく幅広く国民全体で障害者雇用について考えていくことが期待されている。
東洋経済はこの時期に合わせて障害者雇用率ランキングを毎年公表している。今回は『CSR企業総覧』2015年版掲載1305社の中から、2013年度で障害者を5人以上雇用している843社を対象に作成した。早速、上位企業を見ていこう。
1位は昨年に引き続き食品トレーや弁当・総菜容器最大手のエフピコ。ダックス、ダックス四国といった特例子会社を持ち、障害者雇用率は16.00%とダントツ。人数も372人と多い。2011年度16.30%(同370人、以下同様)、2012年度16.10%(369人)と圧倒的な水準を維持している。
エフピコは、市場から回収した使用済み容器の選別工場、折箱容器の生産工場を中心に、全国23カ所の事業所で障害者を雇用。リサイクルペレットの品質向上など障害者雇用と環境問題の改善を一体化した事業として展開する。回収した容器やPETボトルはエコマーク認定の「エコトレー」「エコAPET」再生容器としてリサイクルを進める。
アイエスエフネットが11.5%で2位に食い込む
2位は未上場のアイエスエフネット。雇用率は11.52%で335人を雇用する。2020年までに1000人への拡大も目指す。特例子会社のアイエスエフネットハーモニーでは、障害者の活躍の場を拡大するために「匠カフェ」というカフェでの職場作りを進める。
「会社は社会の縮図であるべき」という考えの下、性別、障害の有無、国籍等の社員の割合を社会と同じにすることを目標に掲げ、障害者も含めた多様性の実現に取り組んでいる。
3位はヒューリックの6.92%(11人)。ダイレクトメール発送等の業務を行う「ヒューリック杉並オフィス」で障害者を雇用する。2013年度は新規採用を行い、2011年度5.66%(6人)、2012年度5.30%(6人)から比率を上げた。
4位は自動車向けなどの超硬工具メーカー上位ダイジェット工業の6.50%(20人)。2011年度7.11%(21人)、2012年度6.75%(21人)と高い水準を維持している。
以下、5位エイベックス・グループ・ホールディングス5.92%(20人)、6位リヒトラブ4.54%(11人)、7位極東開発工業4.21%(29人)、8位ツムラ3.75%(104人)と続く。

上位で人数を増やしているのが「無印良品」を展開する9位良品計画。2011年度79人(2.07%)から2012年度130人(2.89 %)、2013年度170人(3.57%)と2年間で100人近く増加。さらに雇用率5%を目標に拡大を進める。
他に19位ニッセンホールディングスも2011年度42人(2.03%)、2012年度79人(2.72 %)、2013年度96人(2.92%)と2年間で倍増している。不正会計に揺れる東芝は最多雇用数を誇る
ランキング100位内での最多雇用数は78位の東芝1781人(2.37%)。障害者ユニバーサルデザインアドバイザー制度、障害者とのコミュニケーション研修、自己アピールスキル研修、手話倶楽部の活動など多数の障害者が活躍できるよう支援を惜しまない。
特例子会社東芝ウィズでは知的障害者の採用を進めるとともに、障害者学校などからインターンシップを受け入れ、職業訓練サポートも実施する。現在、不正会計問題で大きく揺れる同社。ガバナンス面の問題が多く指摘されているが、障害者雇用では引き続き先進的な企業といえそうだ。
続いて業種別の集計を紹介する。


こちらは2013年度の障害者雇用率を開示している1051社が対象。全体の平均は1.78%だった。
社数が10社以上で業種別雇用率の平均値が高いのは、化学2.03%(85社)、食料品2.01%(46社)、銀行業2.00%(35社)、ガラス・土石製品1.99%(14社)など。
一方で低いのは、倉庫・運輸関連業1.07%(11社)、証券、商品先物取引業1.25%(11社)、不動産業1.30%(24社)などだ。高水準、低水準とも例年とほぼ同じ業種となっている。
さて、2018年からは精神障害者の雇用も義務化の対象となる。このため民間企業の法定雇用率は現在の2.0%から段階を踏んで引き上げられ、各企業に求められる雇用者数は増えていく。増加に伴い、自社の戦力として考えない受け身の障害者雇用では、仕事を提供することも難しくなってくるだろう。
先進企業は試行錯誤しながらも成果上げ始める
障害者が自分の収入で生活できるようにすることは社会としても大きなメリットがある。そのため国は障害者の活躍の場を提供することを企業にも求めている。先進的企業では障害者の特性を生かした雇用を試行錯誤しながら進め成果を上げはじめている。こうした企業は障害者以外の多様性にも前向きで、結果的に競争力が高まる可能性も高い。
一方でこれまでと同じように低い雇用率で法定に足りない分は「障害者雇用納付金を納めればよい」という考えでは多様な職場は生まれにくい。障害者雇用を真剣に取り組むことは単に法律を守るだけでなく、「ダイバーシティを進めるために欠かせない」という視点も忘れてはならない。
2015年09月27日 東洋経済オンライン