知的障害にもいろいろある。鳥取市気高町勝見の山本秀美さん(22)は一見、障害があるようには見えない。その場の空気を読むこともできる。だから傷つきやすい。駅の階段を下りるのが怖くて足取りが重く、後ろの人に舌打ちをされた。悔しくて家に帰ってから泣いた。お金の計算も苦手なので、家でドリルを使って勉強している。米子市で今月開かれた県民総合福祉大会で、知的障害について知ってもらい仲良くなりたい、という山本さんのメッセージが代読され、聴衆の心を打った。山本さんを訪ねた。
山本さんは、うぶみ苑多機能型事業所(鳥取市湖山町)に所属し、4月からは平日の週5日間、仲間4人と養護老人ホーム・鳥取市なごみ苑(同市的場2丁目)で終日、清掃作業をしている。
仕事場では「人とのコミュニケーションに気をつけている」と話す。入所のお年寄りには「体調はどう」「元気にしてる」などと声を掛ける。お礼を言われるとうれしいという。
うぶみ苑の山根美代子職業指導員(50)によると、体調のよくない仲間に「休んどきんさい。私たちが頑張るけん」と気遣うことも。山本さんは「表情とかでしんどそうだと分かる」と話す。
県民大会に寄せたメッセージについて聞くと「いろんな障害があることを知ってもらいたい」と答えた。
自宅で母るり子さん(52)に話を聞いた。山本さんは小さい時から人が好きで、活発だった。小学校高学年になると、自分が周りの人とちょっと違うことに気付き、恥ずかしがり屋になった。
山本さんがつづったメッセージについて「人の迷惑にならないよう、こんなにも気にしているとは思わなかった」と振り返る。
レジでお金を支払うときは、時間がかかって後ろの人の迷惑にならないよう、紙幣を出すようるり子さんが助言した。時計の2時40分を8時10分や2時8分に間違えたりするので、家で時計のドリルもする。頑張り屋さんだ。
「今の清掃の仕事がもっと上手にできるようになってほしい。正義感が強く潔癖過ぎるところがあるので、広い心でくよくよ気にせずに楽しく過ごせるように」と願う。
障害への社会の理解については「いろんなタイプの障害者がいる。直接関わらなくても、何か事情があるのだと、おおらかな気持ちで接していただければ」と話した。
■自分なりに頑張っています 山本秀美さんのメッセージ(要約)
私は、たきのうがたじぎょうしょにかよって4年目です。まいにち、しょくどうのそうじや、はこおりのしごとをいっしょうけんめいがんばっています。
私は、こんなけいけんをしました。えきのかいだんをおりるのがこわく、ゆっくりとしかおりれなくて、うしろの人に、「おそい。」といって、したうちをされたのです。くやしくて、いえにかえってから、なきました。
また、かいもののときには、レジでお金をはらうのがむずかしく、じかんがかかって、うしろにぎょうれつができてしまいました。はずかしさとくやしさでいっぱいになりました。
そんなけいけんがあって健常者のかたに知的障がいについてしっていただきたいとおもったのです。そして、いっしょになかよくなりたいです。
私は、レジでスムーズにはらえるようにおさつを出して、おつりをもらうようにしています。いえでは、けいさんドリルやとけいのドリルをして、べんきょうしています。人にめいわくをかけないようにしたいからです。
わたしは、こうしてじぶんなりにがんばっています。そのことをまわりの人びとにもわかってもらいたいとおもいます。
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仕事場での清掃作業の合間、仲間に笑顔を見せる山本さん=鳥取市的場2丁目の養護老人ホームなごみ苑
2015年9月26日 日本海新聞