障害者が働くことが当たり前の社会に――。社会福祉法人明光会(静岡市葵区)が開く知的障害者の「就職お祝いの会」が7月下旬に19回目を迎えた。結婚式の宴会場に120人が集い、笑顔で近況を報告した。
この1年間に、明光会の就労移行支援事業所「けやきワークセンター」から就職したのは9人。代表して今年4月、コカ・コーラボトラーズジャパン(同市清水区)に就職した遠藤哲さん(24)が、壇上に立った。配属された部署は自動販売機用の飲料のピッキング。倉庫で飲料を仕分けし、台車に載せて運ぶ。
センターの訓練で日用品の仕分けをしたことや、あいさつ、返事、報告、連絡、相談の五つを学んだことが「仕事に生かされている」。休みの日には趣味のダイビングでリフレッシュし、「一日でも早く職場で必要な存在になり、長く勤めたい」と話した。
5年の永年勤続表彰を受けたのは林由梨さん(30)。学校給食の委託を受けて提供する「日本国民食」(同市駿河区)でエプロンの洗濯と清掃業務に就く。調理員のエプロンを一日数百枚洗って乾かす。乾燥室は最高40度以上にもなり、体調管理に気をつける。カラオケや映画も楽しみ、「充実している」という。
会にはセンターの訓練生や特別支援学校高等部の生徒らも参加。先輩の職場での様子を映したDVDも上映された。
センターは県から中部地域の障害者就労支援の委託を受け、1998年に開所。2012年から国の指定就労移行支援事業所になった。センターを通じて就労した知的障害者はこの20年間にのべ217人。就職率は約8割と高い。
だが就職がゴールではない。障害の特性を理解されなかったり、人間関係につまずいたり。14年、浜松市では軽度の知的障害がある18歳の男性が就職して間もなく自死した。明光会は07年に障害者就業・生活支援センター「さつき」を開所。仕事が終わった後に悩みを聞く「ゆうやけ相談会」を設け、スマートフォンの使い方など仕事に役立つ講座を開いて「最近どう?」と尋ねるなど、きめ細かな支援を重ねている。
最近は介護ヘルパーの資格を取り、老人施設に勤める人も増えた。寺田亮一会長は「労働力人口が減る中で、障害者の雇用を経営に組み入れないと企業はもたない。採用したからには、うまく使ってもらいたい。こうした会が、その潤滑油になれれば」と話した。
「お祝いの会」では5年、10年の永年勤続者が表彰された
2018年8月1日 朝日新聞