ゴエモンのつぶやき

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相模原障害者殺傷事件・植松聖被告の近況と、報道をめぐる議論

2018年08月15日 15時28分25秒 | 障害者の自立

植松被告の精神鑑定が異例の延長に

 相模原障害者殺傷事件の植松聖被告の精神鑑定が異例の延長という事態に至っている。身柄を立川拘置所に移送して3月から行われていた鑑定は、7月第2週に数日間にわたる都内松沢病院での様々な検査を経て、7月中に終わる予定だった。それが8月に入っても問診が続けられ、延長となっているのだ。最終的にくだすべき診断内容について、精神科医がこれは簡単ではないという判断をしているためのようだ。

 2017年に出された第1回の精神鑑定の診断は「自己愛性パーソナリティ障害」だった。第2回の鑑定でも刑事責任能力ありという結論になる可能性は高いのだが、第1回鑑定の「自己愛性パーソナリティ障害」については、精神科医の間でも異論が出ている。

 典型的なのは創出版刊の『開けられたパンドラの箱』の中で、精神科医の香山リカさんと松本俊彦さんが語っているやりとりだが、松本さんはその診断についてこう指摘している。

「彼を鑑定した先生も、それがドンピシャだと思って診断を下したわけではないでしょう。当てはまるものが一番多そうな無難なところで自己愛性パーソナリティ障害としたように思えてなりません」

 私ももう植松被告とは20回以上の面会を含め、相当やりとりしているが、かつて12年つきあった宮崎勤死刑囚(既に執行)などよりも精神鑑定は難しいケースではないかと思う。鑑定結果が裁判の大きな争点になることは必至だから鑑定医も苦慮しているのかもしれない。

 『開けられたパンドラの箱』刊行後も、私は植松被告に2度接見しているが、相変わらず彼はいろいろな人との接見を重ねている。7月前半には事件から2年という節目の報道のために新聞・テレビの記者が連日接見を行っていた。その接見報告も含めて、事件から2年後の7月のマスコミ報道について検証しておきたいと思う。

新聞・テレビの両論併記報道に感じた疑問

 その7月の新聞・テレビの報道では、私が編集・出版した『開けられたパンドラの箱』についても相当、俎上にのぼった。発売前には、植松被告の手記を1冊にまとめた単著だと勘違いして、差別的考えを拡散するもので怪しからんと非難したり出版と中止せよという声も少なくなかったが、刊行後はさすがに誤解に基づく意見は見かけなくなりつつある。

 出版の是非については、抗議する側と編集部の意図を両論併記するという報道が大半だった。こういう難しい事件について報道のあり方を議論するのは大事なことなので、最初は私も歓迎していたが、あまりにもそのパターンが続くのには次第に疑問を感じるようになった。両論併記しているメディアは中立で第三者だという前提で、自分のところは報道についてどう考えるのかという表明が全く見られないのだ。

 植松被告の動機や主張をどう報道すべきかというのはかなり難しい問題で、新聞・テレビなどのメディア自身にもそれが問われているにもかかわらず、多くの両論併記報道には、自分のところに火の粉が飛んでこないようにという意識が感じられた。

 そもそも今回の本を刊行したのは、障害者が事件によって感じた恐怖が解消されないまま、事件そのものが風化していく現実に危機感を持ったためだ。そういう現実に一番責任があるのは、まさにメディ自身ではないかと批判したのがこの本なのだが、それについての報道もまた他人事のように見えた。実際には報道の現場で悩んでいる記者も多いはずなのだが、両論併記で他人事ふうな報道をやっているメディアには、「いったいあなたのメディア自身はどう考えているのか」と問いかけたくなった。

抗議や騒動に巻き込まれることにビビッてしまう空気

 出版後、多くの人からたくさんの意見をもらったが、考えさせられたのは、下関市立中央図書館の西河内靖泰館長からのこういうメールだ。西河内さんは、これまでも差別表現などと図書館の自由をめぐって多くの発言をしてきた人で、月刊『創』とも長いつきあいだ。

 《この度、創出版で発行された『開けられたパンドラの箱』の本は、うちの図書館でも入れましたし、個人でもアマゾンで注文して入手しました。職員もみて、なんで事前に騒がれたんでしょうか、そんなに問題になるような内容とは思えませんが、といっていました。》

 《いつもですと淡々と購入するのが普通なのですが、事前に出版を止めろという抗議があったことがニュースで流れましたので、図書館に入れるのを躊躇するところがあったとことは否めません。現に私あてに、いくつかの図書館から問い合わせや相談がありました。私のところでも、“どうしましょうか”と聞かれましたが、“なんら問題なし”、むしろ、予約も入るし、積極的に買っておくべきものと答えておきました。》

 《図書館の自由の原則からは、判断にブレはないはずなのですが、どうしようかと考え出していることに、私たち図書館界としては無視できない問題点も浮かびあがってきます。自分たちの仕事に誇りを持ってやっているなら、堂々としていればいいのに、何か言われたら、抗議されたらどうしようとって思っているのです。ビビること自体が、障害者に対する偏見ではないかと、私は思うのですが。》

 《私のところに相談をくれた図書館の方は、日本図書館協会自由委員の私が40年以上にわたって障害者運動に関わりにある者だとわかって、なにかしらホッとしたような反応をすることがあります。この反応から、皆さん、はっきりおっしゃられませんが、何を心配しておられたかの本音が垣間見えた感じがします。》

本を読んでくれた神奈川県知事や障害者関係者のコメント

 障害者の家族やその運動に関わってきた人たちがこぞって今回の出版に反対しているかのような、対立を煽るだけの一部報道には本当に疑問を感じたが、この問題についてコメントしたいろいろな人の声には、考えさせられたものが多かった。

 津久井やまゆり園のある神奈川県の黒岩祐治知事は、事件から2年の追悼式の後の会見でこの本について訊かれてこう答えている。

 「この本は植松被告の考え方がすばらしいんだとか、なんの評価もせずそのまま出すということではなくて、どうしてこういうとんでもない考え方をしているんだというのを問い続けるという本だと思いました」

 神奈川県知事という責任ある立場のコメントで、実際に本を読んだうえでの率直な感想だと思う。

また相模原事件を学会でも取り上げたという井上英夫・金沢大学名誉教授(社会保障法)は静岡新聞の取材にこう答えている。

 《差別的主張が広まることも懸念されるが、「障害者は不要」という植松被告の考えは多くの人の心にある。これを認めた上で、なぜ彼は殺すという一線を越えたのかを解明すべき。相模原事件は特殊な例ではない。どこでも起こりうる普遍性がある。横浜市の旧大口病院で入院患者が殺害された事件も植松氏の動機と根は同じではないか。類似犯罪が今後も起こる危険性は十分にある。遺族の気持ちや障害者家族の意見はよく分かる。配慮は必要だが、施設や行政、遺族も情報を出し合ってよりオープンな議論をすべき。植松被告の手記は議論の材料に重要。出版はしなければならない。》

 もちろん配慮は必要だが、それでも出版はやるべきだという意見だ。

 メディア法が専門の服部孝章・立教大名誉教授が読売新聞に応えたコメントはこうだ。

《捜査段階での供述は全てが公になるわけではないので、背景を知るには主張を記録する必要がある。むしろ、出版の差し止めは表現の自由の幅を狭め、危険だ。》

 横浜で障害者福祉に40年間関わってきた岩坂正人さんからも「関係者は必読です。機会をみて横浜で掘り下げる場を持ちたいと思っています」というメッセージが届いた。そのほかにも障害を持った人たち自身や福祉に関わってきた人たちから多くの支持の声が届いている。

 障害者家族や関係者にもいろいろな意見はある。それは健常者と言われる人たちにもいろいろな異なる意見があるのと同じことだ。それを単純な対立構図でまとめあげるような報道を行うことからは、議論も生まれず萎縮を生むだけだ。

犠牲者の遺族をめぐるこの1年の注目すべき変化

 7月26日は相模原事件から2年目だった。それを機に、新聞・テレビが大きな特集を組んだ。総じていうと、1年前よりは、真相解明に一歩近づこうという記者たちの意思が感じられたといえる。

 大きな違いのひとつは、6~7月に主なマスコミがほとんど植松被告に面会取材を行ったことだ。昨年は、植松被告がマスコミとの接見を基本的に拒否していたこともあって、夏頃の段階で植松被告に接見できていたのは『創』だけだった。

 そしてもうひとつ大きな変化は、犠牲者19人の家族が、実名は出していないが、少しずつ取材に応じるようになったことだ。

出色なのは、7月26日付の朝日新聞と読売新聞だ。いずれも犠牲者の家族の声を大きく取り上げている。読売新聞に登場した50歳代の女性は、事件で兄を亡くしたが、講演会に出かけて家族会前会長の尾野剛志さんの話に勇気づけられ、この6月、初めて取材に応じることにしたという。尾野さんの話は、『開けられたパンドラの箱』にも収録されているのでぜひ読んでほしい。

 一方、朝日新聞の取材に応じているのは、植松被告に何度も面会している男性だ。姉を殺害されたのだが、事件に向き合おうと面会を重ねている。記事は朝日新聞デジタルで読むことができる。有料記事だが、お金を払っても読む価値があるものだ。

https://www.asahi.com/articles/ASL7P5HXBL7PULOB00X.html

 一部を引用しよう。

 《初めての面会は、事件から1年を前にした昨年6月。姉(当時60)を殺害された男性はそのころ、「死刑にしてほしい」と思っていた。だが今回の面会で、かつてのような憎しみは湧いてこなかった。

この1年で変わったことが、もう一つある。

 事件の報道に接するたび、「遺族が被害者の実名を明かさないから、被害者は命を奪われただけでなく、この世に存在した事実さえ消し去られている」と言われている感じがして、葛藤を覚えるようになった。当初は匿名を選択していた。でも、殺害された姉は単なる「入所者の女性」ではなく、個性ある一人の人間だ。実名を出すことは、生きた証しを残すことにもなる――。

 家族の了承を得られた姉の名だけを、明かすことにした。》

 この6月に3回目の面会をした時の植松被告の様子はこうだった。

 《押し黙る場面もあった。事件前に戻れたら同じことをするか、と尋ねたときだった。しばらくして「やらないかもしれない」と絞り出すように言い、「今の(拘置所での)状況が楽しくないから」と続けた。将来について聞くと、「外に出るイメージ、自分が生き残っているイメージが湧かない」……。

 「青空はいいよ」。男性は25分間の面会時間の最後に告げた。退室まで、植松被告は深々と頭を下げ続けていた。

 「彼はやっぱり普通じゃない。何を考えているかわからないし、本音を言えば怖い」。男性は言う。その一方で「私も彼も、変わってきたのかもしれない」。

 これからも面会を続けるつもりだ。「会う義務があると思うし、この先も自分の気持ちが変わらないか確かめたい」》

 19人の犠牲者の遺族たちは確かに現状でも実名を伏せたままではあるが、彼らも立ち止まっているのでなく、この1年間、悩みながら事件と向き合い、前へ進もうとしているのだ。

真相を解明しないといつまでも恐怖が続く

 この事件については、障害を持った人たちがいまだに恐怖にかられている一方で、それ以外の人たちは事件そのものを忘れつつあるという風化が進んでいる。恐怖をなくすための一番の方策は、きちんと真相を解明することだ。真相がわからないままだと、恐怖はいつまでも払拭されない。だからジャーナリズムの果たすべき役割は極めて大きいのだ。

 犯罪は何らかの意味で社会への警告なのだが、2年前のあの事件が提示した深刻な問題に、この社会が何も立ち向かうことができないでいるという現実は、相当深刻だと言わなければならない。

 なぜ障害者施設の職員が障害者を殺害するという惨事が起きたのか、植松被告はどうしてそういう考えに囚われるようになったのか、そもそもそれは彼自身が精神的な疾病に冒された故なのかそうでないのか。そういう事件の解明を進めないと、恐怖と風化はますます進むだろう。

 この1年間、植松被告への取材を続けてきて、わかってきたことはたくさんあった。

例えば、彼が犯行につながる考え方に傾いていくのは2016年2月になってからなのだが、短期間に一気にそうなっている。何らかの病気を発症したのではないかという印象が拭えないのだ。しかも、彼はその考えに今も固執しており、その固執の仕方もいささか異様と言えないことはない。このへんを精神医学的にどう考えるべきかは今後、もっと議論を深めるべきだろう。

 問題は、今回の本の中で精神科医の松本俊彦さんが指摘しているが、「仮に病気であったとしても、それは社会のいろいろなものを吸い取りながら形成される」ということだ。植松被告が2016年2月に急速にそのような考えに傾倒していったきっかけのひとつが、テレビでトランプ大統領候補を何度も見たことと、イスラム国の人質殺害のニュースだったことは、本人自身が語っている。排外主義的な風潮や、力によって物事を解決しようという空気が拡大していることと、植松被告の犯行はつながっているように思えるのだ。

 今回の本に掲載して話題になっているのが、植松被告が獄中で何カ月もかかって描いたストーリー漫画だ。それは世界中で戦争が行われ、環境破壊が続くという人間社会に絶望し、それを暴力的に破壊するという筋書きだ。

 植松被告の母親がプロのホラー漫画家であることは既に知られている。植松被告は獄中でイラストやマンガを描くことに集中していくのだが、もしかするとそれは小さいころから見ていた母親の影響かもしれない。

 戦後ある意味でタブーとされてきた障害者差別の問題や、そもそも植松被告自身に精神障害があるのかどうかが大きな争点になるという、この事件は本当に深刻で難しいものだ。『開けられたパンドラの箱』は、そこに正面から向かったもので、それゆえに賛否を含めた大きな議論になった。本は反響を呼んで、発売から1カ月たたずに3刷まで増刷を重ねている。本を読んだ人たちの意見や感想も、今後、月刊『創』で取り上げ、さらに議論を続けたいと思っている。

『開けられたパンドラの箱』の詳しい中身は、下記の創出版のホームページをご覧いただきたい。

http://www.tsukuru.co.jp

相模原事件について議論する場を今後も

 この10月8日(月曜日だが祭日)午後1時から、新宿のロフトプラスワンにて、『開けられたパンドラの箱』を素材に、相模原事件についての議論を行うことにした。出演は、私のほかに、元やまゆり園職員の西角純志さん、精神科医の香山リカさん、その他関係者だ。凄惨なこの事件が何を提起したのか、私たちはこの事件から何を教訓にすべきなのか、時間をかけて議論したいと思っている。

 興味がある人はぜひ参加して一緒に考え、議論していただきたい。ロフトプラスワンの場所などは下記だ。

http://www.loft-prj.co.jp/PLUSONE/access.html


高齢者や障害者の現金管理代行の社協職員、1400万着服か

2018年08月15日 15時22分29秒 | 障害者の自立

 宮崎県川南町の町社会福祉協議会は13日、高齢者や障害者の現金管理を代行する事業を担当していた事務局長補佐の男性(48)が計約1400万円を着服した疑いがあると発表した。

 町社協によると、事務局長補佐は平成26年4月~今年6月、利用者の口座から無断で現金を引き出したほか、土地売却代金を入金しないなどした。一部の着服を認め、弁済の意思を示しているという。町社協は業務上横領の疑いで告訴を検討している。

 事務局長補佐は7月中旬、町社協の事務所に侵入し、現金管理業務の資料ファイルなどにスプレーを掛けたとして、建造物侵入などの疑いで6日に高鍋署に逮捕された。

2018.8.13       産経ニュース


知的・精神障害ある人も応募可能に 県職員採用 2018年度から

2018年08月15日 15時15分44秒 | 障害者の自立

県職員採用 2018年度から

 新潟県は13日、障害者を対象にした県職員採用試験で、2018年度から知的障害や精神障害がある人も応募できるように改めたと発表した。これまでは身体障害者だけが対象だった。障害者雇用促進法の改正によって雇用義務の対象に知的・精神障害者が加わったことや、障害者の法定雇用率が引き上げられたことなどを受けて対応した。

 18年度に募集する障害者採用の正職員は、行政職、公立小中学校の事務職、警察職員など計11人。応募条件は、療育手帳や精神障害者保健福祉手帳を持っていることなど。筆記試験や面接、集団討論などを経て、採用を決める。

 障害者の法定雇用率を巡っては、18年度から地方公共団体は2・3%から2・5%に、都道府県教育委員会は2・2%から2・4%に引き上げられた。県の雇用率はいずれも17年6月1日現在で、知事部局は2・76%、県教委は2・25%だった。

 県人事委員会は「障害の種類にかかわらず、採用の門戸を広げていきたい」と説明している。

 県人事委は受験の申し込みを15日から9月28日まで受け付ける。県のホームページなどから申込書や履歴書を入手し、応募する。問い合わせは県人事委、025(280)5538。

2018/08/13      新潟日報

「アスペ入ってます?」発達障害の著者が描く生きづらさ

2018年08月15日 15時05分16秒 | 障害者の自立

 発達障害を抱える当事者たちが直面する「生きづらさ」に迫ったノンフィクションを、宮崎市出身のフリーライター姫野桂(けい)さん(30)=東京都=が今月、出版した。姫野さんは「当事者の現状や本音が少しでも伝われば」と願っている。

 タイトルは「私たちは生きづらさを抱えている―発達障害じゃない人に伝えたい当事者の本音―」(イースト・プレス、定価税別1500円、256ページ)。東洋経済オンラインでの同名連載を書籍化した、姫野さんにとって初めての刊行となる。

 大学進学を機に上京。卒業後、建設関係の会社に就職したが、3年後に退職し、25歳の時にフリーライターに転身した。

 ある日、取材で出会ったカウンセラーから「軽く、アスペ入ってますよね?」と言われた。「アスペ」は自閉症スペクトラム障害の一種「アスペルガー症候群」のことだ。思い返せば、暗算が苦手、組織の中で浮いてしまう、集中力が高く原稿を書くのが早いなど、発達障害の特徴らしきものが自分にもあることに気付いた。「私は当事者なのでは」と考え始めたことをきっかけに、昨秋から発達障害を深く取材するようになった。

 賭け事や性欲を抑えられない男性、どうしても仕事が覚えられない京大卒、発達障害者バーを開いたマスター……。本には20人以上の当事者が登場し、それぞれが抱える悩みや望みが率直につづられている。

 当初、「人探しに難儀するかもしれない」と思いつつ、ツイッターで取材を受けてくれる当事者を募集した。すると、「ぜひ話を聞いてほしい」とさばききれないほどの返事が当事者たちから届いた。「きっと周囲に打ち明けられず、話す場を欲していたんだと思います」

 取材では「意外と明るくしゃべる方が多かった」という一方、話し出すと止まらずに10分以上話し続けてしまう人や、質問と答えがずれてしまう人もいた。「それも発達障害の特性の一つなので」と、時間をかけてひたすら傾聴することに徹した。

 取材場所に大量の買い物袋を抱えてきた女性は、二次障害の買い物依存に悩んでいた。発達障害のひとつの吃音症に苦しむ男性との取材では、事前にびっしりと書いたメモをもとに筆談を交えてやりとりした。当事者に会うと驚きの連続だった。

 「自分も発達障害かもしれない」と疑ってきた姫野さん。本の後半の書き下ろし部分では、著者自身が1月に心療内科を訪れ、検査を受けたことについても、つづられている。

 「発達障害は天才的な人が取り上げられることが多い。でも『自分には得意なことがなにもない』と悩む当事者がたくさんいる。ぜひ定型発達(健常者)の方に読んでもらい、偏見や誤解を防ぐ一助になりたい」(大山稜)

ログイン前の続き発達障害専門医、地方で不足

 姫野さんは地元宮崎について、発達障害のあるピアニスト野田あすかさん=宮崎市=がメディアで取り上げられていることなどから、「認知が多少進みつつあるのでは」と話す。

 一方で、「東京の隣の千葉県ですら『相談する病院が見つからない』と悩む当事者がいる。宮崎ならもっと厳しい状況のはず」と医療環境についての懸念を示す。宮崎県発達障害者支援センター(宮崎市)の弓削真一郎・福祉課長は「宮崎に限らず、地方では発達障害専門医不足が深刻な課題」と話す。

 発達障害は早期発見が望ましいとされる。しかし、障害の軽重や症状は千差万別で、専門医でも判別・診断するのが難しい。受診できる医療機関はあるものの、予約がなかなか取れなかったり、医師によっては精神疾患と診断されてしまったりするケースもあるのが現状という。

発達障害とは

 生まれつきの脳機能障害が原因とされ、後天的な疾患とは区別される。強いこだわりがあったりコミュニケーションが苦手だったりする自閉症スペクトラム障害(ASD)、落ち着きがない注意欠陥・多動性障害ADHD)、読み書きや計算に困難を抱える学習障害(LD)などがある。また、うつ病や睡眠障害自律神経失調症などが二次障害として現れるケースもある。

写真・図版

姫野桂さんは「取材を通して、どうすれば発達障害当事者と定型発達(健常者)の溝をなくせるかを探りたかった」と話す

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格安航空会社の愚行!障害を持つ10歳の少年に 「障害者である証明を見せよ」

2018年08月15日 15時00分16秒 | 障害者の自立

7月末、障害を持つ10歳の少年が格安航空会社Jet2を利用した際に「障害者であることを証明」するよう迫られ、精神的苦痛を与えられたことがわかった。「インディペンデント」紙(電子版)が報じた。

一見するだけでは障害者とはわからなくても、世の中には様々な障害を持つ方がいる。ジャック・ジョンソンくん(10)もそのひとりで、関節が拘縮し、体の筋肉が壊れやすいという難病、デュシェンヌ型筋ジストロフィー疾患を持っており、クロアチアのスプリット空港でも歩行しやすいよう電動スクーターを携行していた。

ジャックくん一家が英国に戻るためリーズ空港行きの搭乗手続きをしようとすると、「電動スクーターを機内に持ち込むには2日前に知らせなければならない。障害者であることを証明せよ」と求められ、ジャックくんは身体障害者が保持するブルー・バッジを提示したものの、2時間待たされた末にようやく搭乗が許可されたという。

ジャックくんの母アレックスさんは「クロアチアでの楽しい夏休みはこの一件ですべて台無しになった。ジャックは空港でとても恥ずかしい思いをし、今回のひどい体験がトラウマとなって、精神的苦痛を受けている。今後このようなことがほかの障害者にも二度と起こらないよう徹底し、スタッフには障害者に尊厳を守って対応してもらいたい」とコメント。

Jet2の広報は「ジャックくんおよびそのご家族が大変ご不快な思いをされたことに対し、深くお詫びするとともに、二度とこのようなことが起こらないよう現場の見直しを致します」と謝罪している。

by 週刊ジャーニー(Japan Journals Ltd, London)