◇一歩踏み出す勇気を--患者や障害者を受け入れる作業所を運営する江頭邦子さん
連載「難病カルテ」はこれまで、生活や就職、症状の進行に不安を抱えながら、懸命に生きようとする患者の姿を伝えてきた。そんな患者たちを支えようと、さまざまな活動をしている人たちがいる。そこで連載10回ごとに「難病サポーター」の人たちに、思いや課題を聞くインタビューを掲載する。1回目は、膠原(こうげん)病の一種、混合性結合組織病を持つ一方、難病患者を受け入れる作業所を設立した江頭邦子さん=佐賀市=に話を聞いた。
--難病患者向け作業設立のきっかけは。
膠原病の患者会で活動していたのですが「ただ集まるだけでなく、何か収入を得る方法はないか」と考え始めました。私は有職者でしたが、仕事が無い患者が多かったのです。そこで、自宅を活動拠点に、02年に準備会を始め、翌年に3人で、ツルを使った手作りのリース製作・販売から始めました。
--現在は難病患者に限らず、障害者を受け入れている。
知的、身体、精神障害者の方々も受け入れています。自動車部品の組み立てなどを通し、就職の足がかりとする作業所、交流と簡単な作業を中心にする場所など、3カ所を運営しています。現在、利用者計30人のうち、難病患者は3人です。
--就職に結びついた難病患者もいる。
作業所で生活のリズムを作ることで、一般就労に結びつくこともあります。実際、今年も膠原病や重症筋無力症の患者2人が就職できました。
--一方で、就職には課題も多い。
受け入れ先の理解が広がりません。病気を明かさずに就職しても、体調を崩して結局離職する、というケースも多い。「疲れやすい」ということは本人しかわからず、外見からは見えにくい。サボっている、怠けていると思われ、理解を求めても「また言うの」と思われる。
--必要なことは。
一つは「障害者枠」との線引きをなくすこと。難病患者は障害者手帳などを持っていない人も多く、そのために、支援メニューが限定的になっています。20年前から、同じことを訴え続けているのに、なぜ改善しないのか、納得できません。
--難病患者へ呼びかけたいことは。
お茶を飲みに来るだけでもいい、作業所に来てみてほしい。勇気を持ち、一歩を踏み出してほしい。難病を持ち、多くの苦しみを受け「心の壁」を作っている患者も多いと思うけど、家の中で一人で苦しんでいるより、きっと、先が開けると思うから。
毎日新聞 2011年8月28日 地方版
連載「難病カルテ」はこれまで、生活や就職、症状の進行に不安を抱えながら、懸命に生きようとする患者の姿を伝えてきた。そんな患者たちを支えようと、さまざまな活動をしている人たちがいる。そこで連載10回ごとに「難病サポーター」の人たちに、思いや課題を聞くインタビューを掲載する。1回目は、膠原(こうげん)病の一種、混合性結合組織病を持つ一方、難病患者を受け入れる作業所を設立した江頭邦子さん=佐賀市=に話を聞いた。
--難病患者向け作業設立のきっかけは。
膠原病の患者会で活動していたのですが「ただ集まるだけでなく、何か収入を得る方法はないか」と考え始めました。私は有職者でしたが、仕事が無い患者が多かったのです。そこで、自宅を活動拠点に、02年に準備会を始め、翌年に3人で、ツルを使った手作りのリース製作・販売から始めました。
--現在は難病患者に限らず、障害者を受け入れている。
知的、身体、精神障害者の方々も受け入れています。自動車部品の組み立てなどを通し、就職の足がかりとする作業所、交流と簡単な作業を中心にする場所など、3カ所を運営しています。現在、利用者計30人のうち、難病患者は3人です。
--就職に結びついた難病患者もいる。
作業所で生活のリズムを作ることで、一般就労に結びつくこともあります。実際、今年も膠原病や重症筋無力症の患者2人が就職できました。
--一方で、就職には課題も多い。
受け入れ先の理解が広がりません。病気を明かさずに就職しても、体調を崩して結局離職する、というケースも多い。「疲れやすい」ということは本人しかわからず、外見からは見えにくい。サボっている、怠けていると思われ、理解を求めても「また言うの」と思われる。
--必要なことは。
一つは「障害者枠」との線引きをなくすこと。難病患者は障害者手帳などを持っていない人も多く、そのために、支援メニューが限定的になっています。20年前から、同じことを訴え続けているのに、なぜ改善しないのか、納得できません。
--難病患者へ呼びかけたいことは。
お茶を飲みに来るだけでもいい、作業所に来てみてほしい。勇気を持ち、一歩を踏み出してほしい。難病を持ち、多くの苦しみを受け「心の壁」を作っている患者も多いと思うけど、家の中で一人で苦しんでいるより、きっと、先が開けると思うから。
毎日新聞 2011年8月28日 地方版