脂肪酸結合タンパク質を作り出す遺伝子の発現量や変異によって、統合失調症・自閉症を引き起こす可能性があることを明らかになったそうです(財経新聞)。統合失調症は、幻覚・幻聴・妄想など、自閉症は対人コミュニケーションの障害・限定的な行動や興味などの特徴がみられる精神疾患で、その原因解明や予防法開発が望まれているそうです。これまでに、脂肪酸を体内で運搬する脂肪酸結合タンパク質(FABP)のうち、FABP7を作る遺伝子が統合失調症の原因遺伝子の一つであることが報告されていたそうです。今回の研究では、FARB3・FARB5・FARB7という三つの脂肪酸結合タンパク質を発現させる遺伝子についてそれぞれ調べたところ、統合失調症の死後脳ではFARB5遺伝子の発現量が増加していること、統合失調症の生存している血液細胞ではFARB5遺伝子が減少していること、自閉症の死後脳ではFARB7遺伝子が増加していることが明らかになったというもの。また、マウスを用いた実験では、FARB3やFARB7遺伝子を欠損させると、統合失調症・自閉症と同じような行動変化が見られたそうです。現在、統合失調症や自閉症などの精神疾患の診断に用いる信頼性の高いバイオマーカーはないそうですが、今回の研究でFABP5の発現量と脂肪酸量の変動を組み合わせて検査することでより正確なバイオマーカーとして利用できる可能性が出てきたそうです。また、共同研究チームが以前行ったFABP7の研究と今回の研究によって、一部の統合失調症患者や自閉症患者では脳の発達期に脂肪酸機能の不全があることが示唆されたそうです。このことは、脳の発達期である妊娠期や乳児期・幼児期に適切な量と質の脂肪酸を摂取することや、脂肪酸機能不全であってもそれを補う適切な量と質の脂肪酸を摂取することが、予防につながる可能性を示唆しているそうです。さらに、発症後でも、脂肪酸の適切な摂取が症状の軽減に有効である可能性も。今後は、どの脂肪酸をどの程度、どのぐらいの期間・時期に摂取すれば症状を軽減できるのかを明らかにすることで、新たな治療法の確立につながると期待できるそうです。
大学院進学を考えている皆さんは、「研究課題の設定」についてどのように考えているのでしょうか。前回も触れたように、そもそも「研究」とは、ある事象を説明する新たな考え(仮説)を証明すべく、仮説を証明するために実験などを計画し、それに基づいて自分の仮説を説明して納得してもらうことです。身近にいろいろな未解決の問題や解決すべき事柄などが結構あることから、こうした課題を研究テーマに設定する学生をよく見かけます。この時、注意しなければならないことがあります。それは、「研究課題」としては良いのですが、「仮説」があるか、そしてその「仮説」を立証するような研究計画になっているか、よく考える必要があります。特に、身近な問題は一見単純に見えるようでも実は非常に複雑で、多くの要因が複雑に絡み合って問題を引き起こしているのがほとんどだと思います。と考えると、そうした課題から「仮説」を導き出すのは非常に難しいことであるということができます。仮に「仮説」を設定しても、その仮説は問題の背景にある断片的な事象であることが多いと思います。また、そうした「仮説」の立証も難しくなります。ですので、大学院とくに修士課程での研究課題は、きわめて単純な基礎的な事象に焦点を当てた方がよいと考えています。例えば、「サルコぺニアの予防と改善方法における○○運動の有効性の検討」という研究課題は難しいですね。そもそも、「サルコぺニア」の発症機序が解明されていないのに、「サルコぺニアの予防法や改善法」が見いだせるとは思えません。仮に、ある運動を試してみたら効果的だったという結果が得られても、それはその対象にのみ限定された効果である可能性は否定できません。では、どのような課題を設定すればよいのでしょうか。これについては指導教官にお尋ねください。(以上はあくまでも私見です。特定の組織や団体の考えを反映するものではありませんので、予めご注意ください。)
大学院進学を考えている皆さんは、「研究」ということをどのように考えているのでしょうか。研究とは、ある事象を説明する新たな考え(仮説)を証明すべく、仮説を証明するために実験などを計画し、それに基づいて自分の仮説を説明して納得してもらうことです。従いまして、まずは対象となる事象、つまりこれまでには説明できていない、自分が対象として研究してみたい事象を探すことから始まります。といっても、簡単なことではなく、これまで多くの先人たちが様々な考えをめぐらして多くのことを説明してきていますので、その中からまだ未解明な部分を見出すのは容易な事ではありません。これまでの研究を精査して初めてわかることです。そのためには、最新の研究成果を参照していく必要があります。では、最新の研究成果はどこに記録されているのでしょうか?それは雑誌(ジャーナル)と言われるものです。書籍ではありませんので注意してください。自分の追求したい事象に関連する研究が報告されている雑誌を探し当てることが重要になります。ただ、最近は研究雑誌はたくさんあり、どれを参照すればよいかわからない方も多いと思います。その際は、指導教員あるいは先輩に聞いてみてください。身近にそういう方がいらっしゃらない場合は、その道の先人に直接連絡してみるのもいいと思います。骨格筋に関する研究であれば、お問い合わせください。私が可能な範囲で答えます。さて、仮説が立てられた後、それを証明するための実験を行いますが、実験計画が非常に重要です。その実験を通して得られると予想される結果により、当初の仮説が本当に証明できるか十分に吟味しなければなりません。ただ、実験すればよいというわけではないのです。ですので、実験をしていく途中で、自分の仮説が正しいか間違っているのかがわかっていきます。結果が全部得られたら、それを読者にわかってもらうように丁寧に説明するために考察を書き、論文として仕上げます。最近、科学技術の進歩が目覚ましく、新しい手法を用いて以前には考えられなかった結果が次々に得られています。ところが残念なことに、ただ結果を得ているだけで、仮説が曖昧だったり、結果が仮説を証明していない研究をよく見かけます。なかなか、初めからしっかりとした研究をできる方は少ないものです。ですので、指導者が重要になります。指導者をしっかり選らぶことから研究が始まります。指導者選びを間違えないようにしましょう。(以上はあくまでも私見です。特定の組織や団体の考えを反映するものではありませんので、予めご注意ください。)
地球温暖化により暑い日が増えるとともに汗をかいて脱水症状になるケースの増加が予想されますが、脱水症状の増加が腎臓結石を急増させる主要な危険因子になるという研究論文が発表されたそうです(AFPBB NEWS)。研究は、米国アトランタ、シカゴ、ダラス、ロサンゼルス、フィラデルフィアの各都市で腎臓結石患者6万人の医療記録を調べた結果、暑い日と腎臓結石との関連性が明らかになったというもの。日々の気温が上昇すると、その後の20日間で患者が腎臓結石を発症する確率が急増することが分かったそうです。日平均気温10度と30度での腎臓結石リスクを比較。アトランタで38%、シカゴで37%とそれぞれ増加したことを確認し、高気温が同リスクに関連していることを発見。同様の腎臓結石リスクは、ダラスで37%、フィラデルフィアで47%増加していた。ロサンゼルスは他よりも増加の割合が小さく、高気温日のリスク増加率は11%だったそうです。また高気温から3日以内に腎臓結石を発症するケースが最も多かったとも。腎臓結石は、尿に含まれるカルシウムやリンなどの物質が高度に濃縮されると発生すると考えられているようです。十分な量の水分を摂取できないことにより、この問題が深刻化する恐れがあるとも。米国における腎臓結石患者の割合は、全人口の約10%とみられているそうで、腎臓結石は女性より男性に多く見られるようです。さて、日本あるいは日本人にも当てはまるのでしょうか?
他人に対して敵対心や意地の悪い感情を抱くと、後の人生で脳卒中リスクが倍増する可能性があるとした研究論文が発表されたそうです(AFPBB NEWS)。論文によると、抑うつや高ストレスによっても、脳卒中リスクが増加することが明らかになったとそうです。研究は、45歳から84歳までの成人6700人以上を対象に、自身の精神状態と行動に関するアンケート調査を実施したものだそうです。2年以上にわたって行われたこの調査では、慢性ストレス、抑うつ症状、怒り、敵対心などを評価。研究開始時点で、被験者の中に心臓疾患がある人はいなかったそうです。同じ被験者らに対しては、その後、8年~11年に及ぶ追跡調査を実施。この期間中に被験者147人が脳卒中を起こし、48人が脳への血流が一時的に妨げられる「一過性脳虚血発作(TIA)」を起こしたそうです。他人の動機に対する「意地悪な思考」の程度を評価して判定される「敵対心」の点数が最も高いグループは、点数が最も低いグループに比べて、脳卒中やTIAを起こす確率が2倍以上高かったそうです。同様に、抑うつ症状の点数が高いと、脳卒中やTIAのリスクが86%高くなり、慢性ストレスがある場合はリスクが59%高かったとも。研究では、年齢、人種、性別、健康的な行動や他の既知の脳卒中リスク因子を考慮に入れた後でも、心理状態と脳卒中との関連性が失われることはなかったそうです。コレステロール値、血圧、喫煙などの従来のリスク因子への注目度が高いが、心理的特徴も同等に重要であることが明らかになったということです。皆さん気を付けましょう。
明るい光の下で運動をすることで体内時計が調整され、時差ボケ解消に有効であることが明らかになったそうです(財経新聞)。といっても、こうしたことは既に言われていましたので、ヒトを対象とした実験で検証できたということでしょうか。ヒトは24時間周期の睡眠・覚醒リズムを持っており、体内の生物時計によって調整されています。時差飛行などによて急激に生活リズムを変えると、生物時計の支配から一時的に外れるため時差ボケが起きると考えられています。明るい光を適切に使えば生物時計を目的地の時刻に合わせられることが知られていますが、実際はなかなか難しいですね。今回の研究では、時間隔離実験室で睡眠時間帯を8時間前進させる実験を実施。覚醒している時間帯に5,000ルクスの高照度光の下で自転車エルゴメーターをこぐ運動を実施したところ、部屋を明るくしただけで身体運動を行わなかった場合と比較して、生物時計の指標である血中メラトニンリズムが速やかに前進することが明らかになったというもの。また、身体運動を行わなかった場合には睡眠の質が大きく低下したのに対して、運動した場合は睡眠の質の低下も防ぐことが出来た。この結果は、明るい光の下で運動をおこなうことで、素早く目的地の時刻に調整されることを示していることに。
ヘビーメタル音楽のファンが、英バンドのモーターヘッドのコンサートで激しく頭を上下に振る「ヘッドバンギング」をした1か月後、脳出血していたことが発覚したというニュースが先日報道されていました(AFPBB NEWS)。1970年代のヘビーメタルの全盛期に生まれたヘッドバンギングは、むち打ち症や頸椎損傷などとしばしば結び付けられてきたそうです。ですが、ヘッドバンギングによる硬膜下血腫の事例をがあるというのです。硬膜下血腫の報告事例は少ないそうですが、自然と治まる中度の頭痛を起こす程度だったり、症状を示さなかったりすることが多いので、症例は実際にはさらに多い可能性があるというのです。論文によると、50代の男性ファンは2013年1月のライブ後、徐々に悪化する頭痛に悩まされたそうです。この男性ファンは他の点では健康で、頭部損傷の既往歴もなく、本人によれば薬物を乱用したこともなかったそうです。男性の症例は、ヘッドバンギングで脳細胞に強い加速と減速を加えたために脳の毛細血管が破裂したことが原因と推測されているそうです。この男性は鍵穴手術でたまった血液を排出する手術を受け、8日後に退院。頭痛はなくなり、2か月後の検査で異常なしの判断を下されたとも。
米国では、職場で長時間座っていることの危険性を認識し、立って仕事をする人が増えているそうです(AFPBB NEWS)。いくつかの研究によると、長時間座りっぱなしライフスタイルは、腰痛や筋肉の退化、心臓病、糖尿病、大腸がんを患う可能性を高め、早死にする恐れもあるというのです。ある研究によれば、早死にする確率は、1日に座ったままの時間が4時間の人を基準にすると、8時間の人は15%、11時間の人は40%、それぞれ高くなるというのです。米国医師会は2013年、長時間座ったままの状態でいることのリスクを正式に認め、職場の通常の机や椅子の代わりに、立ちながら仕事ができる机の他、トレッドミルやバランスボールを取り入れるなど、代替策を検討するよう呼び掛けたそうです。そして、この呼び掛けがきっかけとなり、米国では立って仕事をする人が増えているというのです。欧州では立って使うデスク(スタンディングデスク)は20年前くらいから注目されていたそうでうが、米国ではばかげたものとみられていたそうです。ですが、しかし2013年には、スタンディングデスクの売り上げが50%増加し、大きな変化が。日本でも立って仕事をするという時が来るのでしょうか。
カレーの香辛料を調合した薬で血圧を下げるラット実験に成功したとの研究論文が発表されたそうです(AFPBB NEWS)。研究では、インド料理によく用いられる材料のショウガ、カルダモン、クミン、コショウ、白ハスの花弁などを混ぜ合わせたものをラットに与え、腎臓内の動脈が狭くなることが原因で発症する続発性高血圧症の「腎血管性高血圧症」の症状を軽減することに成功したということです。慢性疾患の高血圧症の治療に向けた、天然由来の安価な薬剤の開発に期待が高まる結果ということです。
嗅覚神経細胞が老化によって死んでいることがショウジョウバエを用いた実験で明らかになったそうです(財経新聞)。一般に、老化に伴って嗅覚機能は低下するとされていましたが、そのメカニズムは明らかではなかったそうです。老化による脳機能の低下に関して、神経変質疾患を患っている場合の細胞死については研究がおこなわれていたものの、正常な老化における細胞死についてはほとんど研究されていなかったそうです。今回の研究では、モデル動物としてショウジョウバエを使い、細胞死を引き起こす酵素「ガスパーゼ」がリンゴ酢や酵母の匂いを感知するOr42b神経細胞で活性化していることを突き止め、実際に老化したショウジョウバエはこの神経細胞の数が減少していることを明らかにしたというものだそうです。