放射線医学などの水準向上を目指して4月に発足する国立研究開発法人「量子科学技術研究開発機構」が、放射線の一種「アルファ線」でがん細胞を「狙い撃ち」にする転移がんの治療薬開発を始めるそうです(YOMIURI ONLINE)。アルファ線を使った薬剤開発は国内に例がないそうで、2022年度までの臨床研究開始を目指すそうです。新薬は、アルファ線を放出する物質に、がん細胞だけに集まる性質を持たせるというもののようで、基本的には静脈から注射し、血流に乗って全身に運ばれることを想定しているようです。放射線の照射を受けると、がん細胞だけでなく、正常な細胞も傷ついてしまいますが、アルファ線は体内での放出距離が約10マイクロ・メートル(細胞約1個分)と短く、体内に取り込んでも正常な細胞を傷つけにくい特徴があるそうです。
アスピリンを定期的に服用することで、主に大腸や胃などの消化管がん発症リスクが有意に減少するとの研究結果がJAMA Oncologyに発表されたそうです(AFPBB NEWS)。定期的なアスピリン服用が大腸がん予防の助けになることは、これまでの研究でも示されていたそうですが、あらゆる種類のがんに対するアスピリンの予防効果はそれほど明らかにされていなかったそうです。研究チームは、看護師や医療従事者13万6000人近くを対象とする健康調査で収集された32年分相当のデータを分析。その結果、常用量または低用量のアスピリンを週に2回以上服用している人々は、アスピリンの定期的な服用を報告しなかった人々に比べて、あらゆる種類のがんの発症リスクが3%低いことが分かったそうです。アスピリンの予防効果は、標準錠剤を週に0.5~1.5錠または低用量錠剤を1日1錠、5年間継続して服用した後に現れたそうです。そして、アスピリンの使用は、大腸がんのリスクを19%、各種の消化管がんのリスクを15%、それぞれ減少させたとも。一方で、今回の調査では、乳がん、肺がん、前立腺がんなどの一般的ながんでは、アスピリンの使用による発症リスクの減少は認められなかったそうです。アスピリンは出血や脳卒中などのリスクを伴うため、誰でも服用してよいわけではないとも。米国予防医学専門委員会(USPSTF)は、多くの米国成人の大腸がんと心臓血管疾患を予防するために、アスピリンを推奨しているそうです。
人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)から、目の角膜の一部「角膜上皮」を作り、ウサギに移植して治療効果が確認されたという論文がNatureに発表されたそうです(YOMIURI ONLINE)。iPS細胞から角膜上皮を作った例はあるそうですが、効果を実証したのは初めてだそうです。黒目を覆う角膜のうち、最も外側の組織が角膜上皮で、異物が目の中に入るのを防ぐ機能を持ちます。人のiPS細胞を培養して、目の元になる細胞塊を作成し、そこから角膜上皮に変化する部位を分離し、特殊なたんぱく質を加えて、透明な角膜上皮のシートを作ったそうです。これを角膜上皮がないウサギの目にシートを移植し、目の表面に異物を点滴したところ、異物は目の内部に侵入せず、シートが働いていることを確認できたということです。
世界保健機関(WHO)は、世界の人々の死因の約4分の1は、大気や水、土壌などの汚染といった環境因子によるとする報告書を発表したそうです(AFPBB NEWS)。2012年に全世界で報告された死者数の23%に当たる1260万人が、不健康な環境下での生活や労働により死亡したと推定されるというのです。うち820万人については、心疾患やがん、慢性呼吸器疾患の原因である大気汚染が死因の可能性として指摘し、これにはたばこの副流煙も含まれているそうです。また170万人は交通事故など「不慮のけが」によるとしているそうです。さらに、84万6000人は環境問題に関連する下痢が死因とされ、その多くは汚染や有害な飲料水によるものだということです。ほかに、自殺を含む故意に加えられた傷害による死者が、24万6000人。こうした死は、重火器や農薬などの不適切な保管や入手機会と関連性があり、農薬の使用は世界の自殺の3分の1を占めているとも。地域別では、環境要因に関連する死者数が2012年に最も多かったのは東南アジアで380万人、次いで西太平洋地域の350万人。WHOでは環境管理の向上によって、特に呼吸器感染や下痢などから深刻な疾患に陥りやすい5歳未満の子ども170万人の死亡を防ぐことができると訴えているそうです。
先日、神経細胞の減少を防ぐたんぱく質を使って、パーキンソン病の進行を抑えることに成功したという研究成果がNature Communicationsに発表されたそうです(YOMIURI ONLINE)。パーキンソン病は細胞内の小器官、ミトコンドリアが傷つくことで、脳の神経伝達物質の1つであるドーパミンを作る神経細胞の減少を引き起こし、手足の震えや歩行障害などの症状が出ます。神経細胞の減少を防ぐことで知られるタンパク「ネクジン」が、ミトコンドリアの働きを促進することを発見。パーキンソン病を発症させたマウスの脳にネクジンの遺伝子を導入する実験を実施したところ、約90%の神経細胞が生き残り、症状の進行を抑制したそうです。一方、導入しない場合、30~40%しか生き残らず、症状が進行したと推定したそうです。
日常生活でほとんど笑わない高齢者は、ほぼ毎日笑う高齢者に比べ、脳卒中の経験がある割合が1・6倍、心臓病の割合が1・2倍高いとの調査結果が発表されたそうです(YOMIURI ONLINE)。研究では、65歳以上の男女に毎日の笑いの頻度、持病などを調査。回答のあった2万934人を対象に、笑いと脳卒中などの関係を分析。その結果、高血圧などの影響を除いても、ほとんど笑わない女性は毎日笑う女性に比べ、過去に脳卒中になったり闘病中だったりする人の割合が1・95倍、心臓病になっている人が1・41倍高かったそうです。男性では脳卒中が1・47倍、心臓病が1・11倍。月に1~3回笑う人でも、ほぼ毎日笑う人に比べ、脳卒中が1・27倍、心疾患は1・18倍だったそうです。特に笑わない高齢女性の危険が大きかったそうです。
細胞が死ぬ際に放出するDNAの変異パターンを基にした病気の検知方法の研究が、現在進められているそうです(AFPBB NEWS)。この検知方法をめぐっては、これまでに患者やコントロールグループなど320人を対象に試験的に行われており、すい臓がんやすい炎、糖尿病、外傷性脳損傷、多発性硬化症などの発見に成功しているそうです。細胞の死は、病気が体内に定着しはじめていることを意味しているとの見方もでき、細胞が死ぬ際にDNAの断片が循環する血液中に放出されることは、これまでにも知られていたそうです。新たな方法では、メチル化と呼ばれる固有の科学的改変の特定が可能となり、こうしたメチル化のパターンが、細胞の特定の固有性を明らかにするそうです。実用化までにはさらなる研究が必要で、現時点では検知対象となる病気も限られているそうです。でも、がんや多発性硬化症を含む、多岐にわたる病気は、将来的には血液検査で検知可能となるかもしれないということです。
世界の大気中の二酸化炭素(CO2)濃度が昨年、記録的な速度で上昇したことが、米国海洋大気局(NOAA)の科学者たちの報告で明らかになったそうです(AFPBB NEWS)。NOAAは声明で「2015年の大気中のCO2濃度の年間上昇率は<中略>3.05ppmの急上昇で、56年間の調査中、最大の年増加量だった」と述べたそうです。また年間の上昇が連続して2ppmを超えたのは、昨年で4年目となったとも。観測値はHawaii州にあるNOAAのMauna Loa Observatoryの測定によるものだそうです。1800年以前では約280ppmだった大気の平均CO2濃度は、今年2月の時点で402.59ppm。産業革命期前と比べて大幅に増えているそうです。NOAAによるとCO2の飛躍的上昇の原因は、部分的にはエルニーニョ(El Nino)現象として知られる気候現象によるものだということです。エルニーニョは世界の海洋の一部を暖め、異常な降雨と干ばつを引き起こしているそうです。他の上昇原因は、化石燃料の燃焼により高レベルの排出が継続していること。同じようなCO2の飛躍的上昇が前回観測されたのは1998年で、同じく強力なエルニーニョの年だったそうです。
問題解決に向けて積極的、計画的な行動をとる人は、消極的な人に比べ、がんや脳卒中、心臓病で亡くなるリスクが低くなるとの調査結果を国立がん研究センターなどの研究チームがまとめたそうです(YOMIURI ONLINE)。調査は、50~79歳の約5万7000人を7~11年間追跡。日常生活での問題対処法についてのアンケート調査で、「計画を立て実行する」「誰かに相談する」「状況のプラス面を見つける努力をする」などの積極的な行動をとる頻度が高い群と低い群に分け、がんや脳卒中などの発症やそれに伴う死亡のリスクに違いがあるか調べたそうです。その結果、積極的な行動をとる頻度が高い人は、低い人に比べ、がんの発症には差がなかったが、がんでの死亡リスクは15%低かった。脳卒中の発症リスクも15%低く、脳卒中と心臓病を合わせた循環器疾患で亡くなるリスクは26%低かったというものです。
第93回日本生理学会大会が、今日(3月22日)から24日(木)まで、札幌コンベンションセンターにて開催されます。魅力的なプログラムが満載で、いずれも興味深い内容となっています。物理的な問題で全てのプログラムに参加することはできないのが残念です。また、教育プログラムもあり、生理学の授業展開などの情報も収集したいと考えています。