雄と雌の脳を入れ替えたニワトリを作ることに成功し、遺伝的に雄の脳を持った雌は性成熟や産卵の開始が遅れることが明らかになったそうです(日本経済新聞)。性徴は精巣や卵巣から分泌される性ホルモンによると考えられていますが、脳も関係していることになるのでしょうか。研究では、受精卵を孵卵器に入れて1日半後に、脳になる神経組織を入れ替え、脳が雌で体が雄、脳が雄で体が雌のヒヨコをそれぞれ作ったそうです。脳が雄で体が雌のニワトリは、産卵開始が正常の雌より24日遅れ、産卵も正常の雌が1カ月に24個だったのに対し8個に減ったそうです。脳が雌で体が雄のニワトリは、性行動を含めて通常の雄と区別がつかなかったとも。遺伝的に雌の脳には、性成熟や性周期に関係する神経回路を作る仕組みが備わっているとみられるそうです。この神経回路を詳しく調べれば脳の性差や脳疾患の男女差の解明に近づくのではないかと期待されるそうです。
空腹になると脳内のたんぱく質の一種が活発に働き、記憶力が向上する仕組みがあることを、ショウジョウバエを使った実験で発見されたそうです(YOMIURI ONLINE)。絶食させたハエと満腹のハエに特定の匂いをかがせて電気ショックを与え、その1日後に、嫌な記憶に結びついたこの匂いを避けるかどうかを調べたそうです。その結果、9~16時間の絶食後にショックを与えた場合は、満腹時に比べ、匂いを避ける割合が約2倍高かったというのです。ハエの脳内の神経細胞を観察したところ、空腹になると「CRTC」と呼ばれるたんぱく質が活発化して記憶に関係する別のたんぱく質と結合し、この働きが高まることがわかったそうです。受験シーズンのさなか、人での効果が気になりますね。CRTCは人にもあるため、ヒトでも適度な空腹で記憶力が改善することは十分考えられるそうです。ただし、記憶力向上には、他にもさまざまな要因が考えられますので、空腹での勉強だけに頼るのはお勧めできないとも。
生きたままで骨の内部を観察することに成功し、破骨細胞が実際に骨を壊していく様子を、リアルタイムで可視化することに成功したそうです(大阪大学、科学技術振興機構)。この可視化により、「骨の表面にヒルのように強力に貼りついて骨を壊している破骨細胞(R型と命名)」と、「骨の表面でアメーバのように動き回っていて骨を壊していない破骨細胞(N型と命名)」の2種類の細胞が存在し、破骨細胞はR型とN型を短い時間で遷移していることも分かったそうです。さらに、骨粗鬆症などの状態では、破骨細胞の総数だけでなく、R型の数が増えていることや、治療薬(ビスホスホネート製剤)を投与すると、破骨細胞の総数が減るだけでなく、N型が増えることで骨の破壊が抑えられることが分かったそうです。さらに、関節リウマチなどの骨破壊に関与すると言われていたTh17という炎症性T細胞は、骨の表面で破骨細胞に接触し、N型をR型へと変換させることで骨の破壊を引き起こすことが、実際のライブイメージングで解明できたそうです。実は破骨細胞には骨を壊す働きだけではなく、骨芽細胞という骨を修復する細胞を活性化する作用もあり、現在の治療薬で破骨細胞の総数を減らすと骨の修復ができなくなり、逆に骨が脆くなってしまうことが大きな問題点となっているそうです。今回成功したライブイメージング系は、破骨細胞の総数は減らさずに、R型からN型に変化させる理想的な薬を今後開発していく上で、極めて重要な研究成果であると考えられるそうです。すごいですね。
2012年の世界の気温は平均を上回る高さだったが、今後10年間はさらに気温が上がる可能性が高いという発表がありました(YAHOO JAPANニュース)。米国航空宇宙局(NASA)によると、2012年の世界の平均気温は統計を取り始めてから9番目に高い14.6度で、20世紀の平均より0.6度高かったそうです。20世紀平均を上回るのは1976年から36年連続で、統計の始まった1880年以来、世界の平均気温は0.8度上昇したとも。NASAゴダード宇宙研究所(Goddard Institute for Space Studies)のジェームズ・ハンセン所長は記者会見で、2013年の世界の平均気温が2010年の過去最高記録を破る可能性が高いと語ったそうです。さて、どうなりますか。心配ですね。
メタボリックシンドローム対策を目指す特定健診・保健指導について、厚生労働省は健診の進め方などを盛り込んだ「標準プログラム」の改定案を公表したそうです(毎日新聞)。特定健診は40~74歳を対象に2008年度開始し、腹部肥満が生活習慣病につながるとして肥満対策を柱に、腹囲測定を始めました。実施を義務付けられている医療保険者が5年ごとに計画を策定するため、来年度に向け見直したというものです。現行制度では保健指導の対象は肥満の人だけですが、肥満でなくても血圧などが高めの人にも対応を求めたそうです。しかし、「(食事や運動など生活習慣の改善に)必要な支援を行うことが望ましい」とし、義務付けていないそうです。ちなみに、来年度から使用されるそうです。
腸や肝臓の細胞の生存に欠かせない遺伝子が見つかったそうです(47NEWS)。cFLIP(フリップ)と呼ばれる細胞死を抑制する遺伝子が欠損したマウスを作成したところ、この遺伝子を欠くマウスは重い腸炎や肝炎を起こし、生後2日以内に死亡したというのです。したがって、腸や肝臓の細胞を維持する必須遺伝子であると考えられるそうです。この研究結果は、腸炎や肝炎、肝がんの新しい治療の標的になる可能性があるそうです。いろいろなことが明らかになっていきますね。
人工多能性幹細胞(iPS細胞)を用い、毛髪を作り出す組織「毛包」を部分的に再生させることに成功したと発表がありました(時事通信)。ヒトのiPS細胞を、皮膚になる手前の細胞に変化させ、皮膚細胞に毛包を作るよう働き掛ける「毛乳頭」の代わりに、同様の力を持つ若いマウスの皮膚細胞を皮膚になる前の細胞に混合して、マウスに移植したところ、マウスとヒトの細胞が混ざった毛包の組織と毛髪ができたというのです。ヒトの毛乳頭には大量採取が難しいなどの問題があるそうです。そのため、今回は採取が容易な若いマウスの細胞を用いたそうです。ヒトiPS細胞から毛乳頭を作ることができれば、今回の方法を応用して完全なヒトの毛包を再生させることが可能になると期待できるそうです。脱毛症の治療や、育毛剤開発につながる成果ですね。
神経難病の一つ、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の発症に、タンパク質の分解異常が関与することを示す研究成果が発表されたそうです(わかやま新報)。ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリーに掲載されたそうです。ALSやパーキンソン病などの神経細胞が変性する疾患では、 異常なタンパク質の蓄積がこれまでに確認されており、細胞内のタンパク質分解機構の機能障害が病因との仮説が挙げられていたそうです。今回の研究では、主なタンパク質分解経路である「ユビキチン・プロテアソーム系」と「オートファジー・リソソーム系」をそれぞれ阻害する遺伝子操作を行ったマウスを開発し、「ユビキチン・プロテアソーム系」を阻害したマウスでのみ、体の震えや運動機能の低下などのALSと類似した症状、神経細胞の変性が認められたというのです。したがって、「ユビキチン・プロテアソーム系」の障害が、遺伝的要因を伴わない孤発性のALSの発症に関係することが証明されたというものです。今後はこの遺伝子改変マウスを研究に用いることで、 病因の解明や治療法の開発の促進が期待されるそうです。
唐辛子の成分カプサイシンに筋肉の肥大を促し、萎縮を抑える効果があるという研究が発表されました(毎日jp)。ネイチャーメディシンの1月号に。筋肉が肥大することは経験的に知られていますが、そのメカニズムは未だ完全に解明されていません。研究では、筋ジストロフィーの原因となるたんぱく質「ジストロフィン」に注目し、筋肉に大きな負担がかかると、一酸化窒素を合成する酵素の働きが活発化するとともに、カルシウムイオン濃度が高くなって筋肉が肥大することを確認したそうです。そして、カルシウムイオン濃度はカプサイシンと結合する分子が調整役を担うことが判明したそうです。マウスに1日1〜2回、1週間にわたってカプサイシンを筋肉注射すると、未注射のマウスに比べ筋肉量が約15%増えたそうです。人工的に筋萎縮させたマウスの脚にも同様の頻度で注射すると、萎縮率が約20%軽減したとも。驚きです。
食べ物の好き嫌いが起こる原因について興味深い記事がありました(Benesse教育サイト))。食べ物の好き嫌いの原因には、遺伝的要素と環境的要素があるというのです。人間は食べ物を食べた時、その食べ物に含まれる化学物質の一部を、舌の味蕾という感覚受容器で感知します。この時に食べ物の味を感じるのが「味覚」です。味覚には、甘味・塩味・酸味・苦味・うま味の5つの種類があります。甘味・塩味・うま味は、生きていくために必要不可欠な栄養素であるもののシグナルで、自然とその食べ物を好んで食べるようになっていると考えられています。一方、苦味や酸味は、毒物や腐敗物など身体に悪そうなものを判別するためのシグナルと考えられています。つまり、子どもが甘いケーキや塩味の強いフライドポテトを好み、苦みの強いピーマンや酸味の強い酢の物を嫌うのは、本能的なものだといえるというのです。新しい食べ物を食べた時にお腹が痛くなると、その食べ物が嫌いになり、逆にその食べ物を食べた時に元気になったり満足感が得られたりすると、その食べ物への嗜好が増す、というのが環境的要素の代表例だそうです。最近の研究では、小さいころからさまざまな食べ物の経験が豊富な子どもほど、いろいろな食べ物をよく食べる、新しい味への許容度が高いということがわかってきているそうです。また、胎児のころの食経験も関係している、という研究があるとも。味蕾は妊娠3か月の胎児から機能しはじめ、胎盤を通じて味覚を感じているそうです。母親が妊娠中からニンジンジュースを飲んでいた場合、ニンジン嫌いの子どもが少ないというのです。非常に興味深いですね。