人間やその他の「利口な」動物には、人の顔を識別するために用いられる脳の部位があるが、その部位を持たない熱帯魚の一部にも、人の顔を見分ける能力があるとする研究論文がScientific Reports発表されたそうです(AFPBB NEWS)。この驚くべき能力は、テッポウウオ8匹を使った実験で実証。テッポウウオは、空中の獲物を撃ち落とすために、加圧した水を口から噴射することで最もよく知られている熱帯魚の一種。実験では、獲物の虫を狙う代わりに水槽の上につるしたコンピューターのモニターに人の顔を表示して、そこに向けて水を噴射するようテッポウウオに「学習」。2種類の顔を見せ、一方の顔に水を噴射するとご褒美として餌がもらえるよう条件付け。次に、新たに表示された44種類の顔の中から、テッポウウオが見覚えのある顔を認識し、それに向けて水を噴射するかどうかを調査。その結果、テッポウウオは80%以上の確率で、正しい顔に水を命中させたというもの。テッポウウオがみな同様に習得が早かったわけではなく、訓練が1回で済んだものもいれば、最高で17回も実施しなければならなかったものもいたそうです。人の顔を見分けることは、驚くほど難しい作業で、基準となる顔は、鼻と口の上に目が2つあるもので、その微妙な違いを読み取るには、高い知能が必要と考えられていたそうです。この(見分け)作業は非常に難易度が高いため、大型で複雑な脳を持つ霊長類にしか成し遂げることができないとの仮説もあったそうです。知覚と言語をつかさどる大脳新皮質は、ヒトの脳の中では最も遅くに進化した部位とされています。テッポウウオはこの大脳新皮質を持たないが、難しい作業をこなすことができたのです。魚の知能に関するこのような理解は、顔認識が生まれつきの能力か、生後に習得される能力かといった、ヒトの脳機能を解明する一助となる可能性があるとしています。顔の特徴に基づく個人の識別が、人間に固有の能力ではないことも示唆されるそうです。