横須賀うわまち病院心臓血管外科

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縦隔炎・胸骨骨髄炎に対する大網充填術

2018-09-05 17:34:35 | 心臓病の治療
 心臓血管外科における大網充填術は主に縦隔炎や胸骨骨髄炎に対して行う手術です。大網は非常に感染に強い組織なので、それを感染部位に充填することで治そうとするものです。胃袋から有茎で、胃大網動脈、左右大網動脈の血流を残した状態で、胸部まで持ち上げて充填します。術後管理はとくに注意はないですが、感染がそれでホントに制御されるかどうかでしょうか。大網はお腹の中のポリスマンって昔学生のころならいましたが、血流とリンパ組織が豊富なので感染にいいらしいんです。
 大網が使えない場合は腹直筋や大胸筋を充填することもあります。最近はVACだけでなおることも少なくないと思います。


 大網充填術は、腐骨した胸骨を削って、胸骨の間だけで終わることも少なくないです。感染の多くは縦隔炎もしくは心嚢炎よりは胸骨骨髄炎が感染の首座であることが多いので、心嚢内の炎症がなければ、そこまで大網を入れずに胸骨間だけで済むことも少なくないです。今まで経験した症例のほとんどは冠動脈バイパス術後の症例で、やはり内胸動脈を採取するので、胸骨の血流が低下して感染しやすくなるのだと思います。
 弁膜症や胸部大血管手術の術後の縦隔炎の経験は少ないですが、その場合は、胸骨骨髄炎のみで済むことは少なく、心嚢内までしっかり大網を重点しなければならないことがあります。
 術後は胸骨が閉められないので、骨が何年たってもぐらぐらです。大網がずっと生きているので、CTを撮影すると大網の脂肪組織で充満されています。有茎で大網を持ってきているのでその後も大網が生き続けます。造影すると脂肪内に血管が見えます。

 やはり一例でも感染が発生したことを考えると膨大なエネルギーが治療に必要なので、極力感染を減らすような努力は惜しむべきではないと考えます。
コメント
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