横須賀うわまち病院心臓血管外科

お気軽にコメントいただければ、一般の方の質問にも心臓血管外科専門医が答えます。

下肢静脈瘤についての最新記事

2018-09-21 07:33:12 | 心臓病の治療
https://medicalnote.jp/contents/180904-005-BA

下肢静脈瘤の診断と治療などについての最新の取材記事です。





下肢静脈瘤はどのようにして起こる?

ふくらはぎ

下肢静脈瘤とは、下肢の静脈が瘤こぶ状に拡張して血管がボコボコと浮き出るなどの症状が現れる病気です。それでは、下肢静脈瘤はどのようなメカニズムで発症するのでしょうか。

下肢の皮膚表面近くには表在静脈という血管があり、表在静脈を流れる血液は重力に逆らうような形で足首から心臓に向かって流れています。このとき、血液の逆流を防ぐ役割を担っているものが「逆流防止弁」です。

下肢静脈瘤では、逆流防止弁が壊れることによって、あるいは静脈径が拡大して弁が緩むことによって、本来心臓に向かっていくはずの血液が足首に向かって逆流していきます。すると、行き場を失った血液によって血管が瘤こぶ状になり、ボコボコと浮き出るようになります。下肢静脈瘤の発症原因には、そのほかにもさまざまな説があります。

下肢静脈瘤を発症しやすい方の特徴

下肢静脈瘤の発症要因にはいくつかの特徴があり、主に以下のようなものが挙げられます。
・立ち仕事をしている
・血縁関係にある家族に下肢静脈瘤の方がいる
・妊娠・出産経験がある
・高度肥満
・加齢

下肢静脈瘤の症状

見た目の症状

下肢静脈瘤 1

下肢静脈瘤では、血管が皮膚表面にボコボコと浮き出るような症状がみられます。

また、赤や青、紫色の網目状やくもの巣状の血管が薄く浮き上がってくることも、下肢静脈瘤でみられる特徴的な症状です。

しかしながら、痩せている方や高齢の方の場合には、下肢静脈瘤ではなくても血管が浮き出て見えることは多々あります。

自覚できる主な症状

下肢静脈瘤の自覚症状としては、足のむくみやだるさ、起床時のこむら返り(足がつること)などが挙げられます。むくみやだるさは、朝よりも夕方に感じることが多いです。

また、先述した網目状やくもの巣状に血管が浮き出るタイプの下肢静脈瘤の方の場合、血管が浮き出ている部分がピリピリと痛むこともあります。

下肢静脈瘤が進行すると、皮膚症状が現れる

下肢静脈瘤が進行すると、皮膚の痒みやポツポツとした赤い皮疹がでることがあります。

さらに進行すると、主に足の内側のくるぶしの近くの皮膚に茶色いシミのようなものができる色素沈着が起こることがあります。

その後さらに重症化すると、強い痛みを伴う皮膚潰瘍ひふかいよう(皮膚が深くえぐれたような状態になること)が生じます。また、潰瘍部分から水のように無色透明な浸出液が漏れ出してくることもあります。

下肢静脈瘤の検査・診断

下肢静脈瘤は、先述したような見た目の症状や、患者さんが日頃感じている自覚症状を聞き取ることなどで診断に至ることがほとんどです。

診察の結果、下肢静脈瘤が積極的な治療の適応と判断された場合、あるいはそうでなくても精密検査が必要と考えられた場合に、下肢の超音波検査(エコー検査)を行います。

超音波検査は血液の流れをカラー画像によって確認できる検査で、外来で簡便に行うことができます。

下肢静脈瘤の治療

治療を行うタイミングは?

下肢静脈瘤の治療は、基本的に下肢静脈瘤による何らかの自覚症状(足のだるさやむくみ、瘤の痛み、下肢のけいれん、皮膚症状など)がある場合に行います。

血管がボコボコと浮き出ていても自覚症状がほとんどない場合には、すぐに治療を行う必要はなく、経過をみることがほとんどです。その場合には、弾性ストッキングや着圧ソックスの着用といった、足を外から圧迫して余計な血液が逆流してこないようにする対症療法を昼間の活動時間に行うことや、下肢挙上(椅子に座っているときに足を座面と同じくらいの高さにあげること)という生活習慣をおすすめしています。

治療の方法

下肢静脈瘤の治療法は、現在はレーザーや高周波を使って血管を閉塞させる「血管内治療」が第一選択となっています。そのほか、瘤の部分を小さな複数の傷で引き抜く瘤切除術や、瘤に硬化剤(血管を固める薬)を注入して血管を閉塞させる硬化療法、伏在静脈を引き抜くストリッピング術、伏在静脈の根元を縛って切離する高位結紮術こういけっさつじゅつなどがあります。

どの治療を選択するかは、瘤のタイプや治療を受ける病院によって異なります。当院では、レーザーを使った血管内治療である「血管内レーザー焼灼術しょうしゃくじゅつ」を主に行っています。

血管内レーザー焼灼術

血管内レーザー焼灼術とは、血管内にカテーテル(医療用の細い管)を挿入し、逆流が起きている血管をレーザーで焼灼・閉塞させる治療法です。血液が流れなくなった血管は、時間が経つにつれて徐々に小さくなっていきます。

使用されるレーザーにはいくつかの種類があり、保険適用で使用できるもののなかでもっとも波長の高いものが1,470nm(ナノメーター)のレーザーで、当院でもこれを使用しています。

治療は片足の場合、およそ20分で終了します。

瘤切除術

瘤の部分に局所麻酔をして2〜3mmの小さな複数の傷から瘤を引き出して切除します。血管内レーザー焼灼術などでおおもとの逆流が止まっても縮小が期待できない大きな瘤に対して行います。

硬化療法

血管内レーザー焼灼術では治療できないような小さな静脈瘤に対しては、硬化療法という治療を行うことがあります。

硬化療法とは、血管内に硬化剤を注入する治療で、麻酔を行う必要がなく、外来で行うことができます。

下肢静脈瘤は治る病気?

下肢静脈瘤では、治療した部分が再発することはほとんどありません。しかし、静脈は網の目のように広がっているため、治療していない部分の静脈が再び下肢静脈瘤を発症することはあります。

色素沈着や皮膚炎がみられる静脈瘤は病院へ

病院

下肢静脈瘤は命にかかわる病気ではありませんが、進行して皮膚潰瘍などが生じると、非常に強い痛みを伴いますし、毎日の傷の処置が必要となり、治療にも長い時間を要します。

そのため、何らかの皮膚症状が出てきた場合には、お近くの病院を受診していただきたいと思います。特に、足の内側のくるぶし付近が茶色く変色する色素沈着の症状は、皮膚潰瘍の前兆であるため注意が必要です。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする