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フットケアの重要性は特に、下肢の血流障害、糖尿病や腎臓病を抱えている患者さんにとって重要です。
血流障害があると創が治りにくいので、ちょっとしたキズから感染や壊疽に発展して最悪の場合は切断にいたることもあります。普段からの注意事項も大事です。
下肢壊疽とは?
糖尿病性神経障害*や下肢閉塞性動脈硬化症*などによって「下肢壊疽えそ」を生じることがあります。
下肢壊疽とは、皮膚や組織が腐ってしまい黒や茶色に変色してしまう状態を指します。壊疽が皮下組織までにとどまっている場合であれば、壊疽した部分を削り取って再生を促す治療を行ったり、その部分に皮膚などの組織を移植する治療を行います。
しかし、さらに奥深くにある腱や骨にまで壊疽が進行している場合には、足や指を切断する必要があります。
* 糖尿病性神経障害…糖尿病によって末梢神経(感覚神経・運動神経・自律神経)が障害されること
* 下肢閉塞性動脈硬化症…動脈硬化の進行によって、下肢の血管が狭くなったり閉塞したりする病気
糖尿病による下肢壊疽は重症化しやすい
糖尿病性神経障害の場合、下肢壊疽が重症化しやすい傾向があります。なぜなら、糖尿病性神経障害では感覚神経が麻痺するため、足が壊疽していても痛みを感じないためです。壊疽による苦痛をご本人が感じないため、病院にかかるタイミングが遅れてしまい、切断に至るケースは少なくありません。
一方、下肢閉塞性動脈硬化症の場合には、壊疽による強い痛みを伴うため、早い段階で治療の介入ができることが多いです。治療方法は血管内治療やバイパス手術で、下肢の血流を改善させて下肢切断を防ぎます。
もっとも重症化しやすいのはその両方を患っている場合であり、最近はそのような患者さんが増加しています。
下肢壊疽に至るきっかけは?
歩いている人の足元
きっかけは「下肢の外傷」
下肢壊疽は、下肢の血流が高度に障害されている方や下肢の神経障害の方すべてに起こるわけではありません。
下肢壊疽が起こるきっかけの多くは、靴擦れや深爪、胼胝たこ、水虫などによってできた小さな外傷です。
たとえば、足の指に靴擦れができたとき、健康な方であれば傷は時間と共に自然と治癒していきます。しかし、下肢の血流が途絶えている方の場合、傷を治すための栄養や酸素を傷口に届けることができません。このように傷を治す力がないため、皮膚や組織はだんだんと壊疽していきます。
下肢の血流が少ない方であっても、下肢の外傷さえ防ぐことができれば、下肢壊疽を防げる可能性があります。そしてそのためには、自分の足の形に合ったフットウェアを使用することが非常に重要です。
自分に合ったフットウェアを身につける重要性
靴擦れなどによる壊疽を防ぐフットウェア
フットウェアとは、靴や中敷など「足に身につける物」のことです。
自分の足に合わない靴を履いて、靴擦れや胼胝たこができる経験は誰しもしたことがあると思います。下肢の血流障害や感覚障害がある方の場合には、それが下肢壊疽を引き起こす原因になります。
そのため、靴擦れや胼胝たこから生じる下肢壊疽を防ぐためには、一人ひとりの足の形や体のバランス、歩き方などに合わせたフットウェアを使用する必要があります。
足の変形が強かったり、下肢壊疽の既往がある方の場合、フットウェアは、治療用装具(靴型装具や足底装具)として保険診療で製作することができます(一部実費となる場合もあります)。
当院では、フットウェア外来という専門外来で足の健康を考えている靴屋さんや介護靴会社さんをご紹介したり、装具としてのフットウェアを作成したりしています。
自分の足で歩き続けることの大切さ
「自分の足で歩くことができる」ということは、生活の質を維持するうえで非常に重要な要素です。
自分の足に合ったフットウェアを使用しないと、歩くことによって靴擦れや胼胝たこができる恐れがあるため、「歩かないこと」が一番の治療になってしまいます。すると、せっかく足があっても歩くことから遠ざかり、足を切断した場合と同じくらいに日常生活を送ることが難しくなるでしょう。
患者さんによっては、下肢壊疽を回避しなければならないために仕事を続けることができなくなる場合もあり、生活を維持することも困難になります。そのため、医師から歩かないようにといわれても、無理して仕事を続けてしまい、最終的には足を失ってしまう方もいらっしゃいます。
ですから、自分の足で歩き続けて生活の質を維持するためにも、自分に合ったフットウェアを使用することはとても大切なことなのです。
日本の足医療は、発展途上にある
中田弘子先生
欧米には足を専門にみる「足病医」がいる
お話ししてきたように、下肢壊疽を防ぐためにはご自身に合ったフットウェアの着用が必要不可欠です。それにもかかわらず、足を守ることの重要性に対する認識は、日本においてまだまだ薄いのが現状です。
欧米では足の治療の歴史が長く、一般的な医師とは別に、足だけを専門的に診療する「足病医」という資格を持つ医師がいます。そのため、足にトラブルが起きたときの受診先が明確です。
しかし、日本では足を専門にみている医師は数少なく、足にトラブルが生じたときにどの診療科に受診すればよいのか判断に迷われる方は多くいらっしゃいます。
さらに、日本の保険診療の制度上、保険診療として作成できるフットウェアは1年半に1足に限られます(2018年現在)。日本は家の中で靴を脱ぐ文化があり、裸足では足がストレスにさらされている状態であるため、本来であれば家の外用と内用の2足のフットウェアが必要です。
しかし、こうした文化に十分対応した医療保険制度が整っているとは言いにくい状態です。このように、日本における足医療は、まだまだ解決するべき課題が残っています。
足を守る重要性を、できるだけ多くの人に知ってほしい
足のトラブルは、癌や心筋梗塞、脳梗塞などの病気と違って直ちに命に直結することはほとんどありません。しかし、生活をしていくうえで足は非常に重要で、足の病気によって困っている患者さんはとても多くいらっしゃいます。
また、直接的に命にかかわることはなくても、下肢閉塞性動脈硬化症や下肢切断した方の5年生存率は、癌の5年生存率とあまり変わらないという結果も出ています※。
少しでも多くの方に、自分で歩くことができる大切さや、正しいフットウェアを身につける大切さを知っていただき、足を守る重要性について意識が高まっていくことを望んでいます。
フットケアの重要性は特に、下肢の血流障害、糖尿病や腎臓病を抱えている患者さんにとって重要です。
血流障害があると創が治りにくいので、ちょっとしたキズから感染や壊疽に発展して最悪の場合は切断にいたることもあります。普段からの注意事項も大事です。
下肢壊疽とは?
糖尿病性神経障害*や下肢閉塞性動脈硬化症*などによって「下肢壊疽えそ」を生じることがあります。
下肢壊疽とは、皮膚や組織が腐ってしまい黒や茶色に変色してしまう状態を指します。壊疽が皮下組織までにとどまっている場合であれば、壊疽した部分を削り取って再生を促す治療を行ったり、その部分に皮膚などの組織を移植する治療を行います。
しかし、さらに奥深くにある腱や骨にまで壊疽が進行している場合には、足や指を切断する必要があります。
* 糖尿病性神経障害…糖尿病によって末梢神経(感覚神経・運動神経・自律神経)が障害されること
* 下肢閉塞性動脈硬化症…動脈硬化の進行によって、下肢の血管が狭くなったり閉塞したりする病気
糖尿病による下肢壊疽は重症化しやすい
糖尿病性神経障害の場合、下肢壊疽が重症化しやすい傾向があります。なぜなら、糖尿病性神経障害では感覚神経が麻痺するため、足が壊疽していても痛みを感じないためです。壊疽による苦痛をご本人が感じないため、病院にかかるタイミングが遅れてしまい、切断に至るケースは少なくありません。
一方、下肢閉塞性動脈硬化症の場合には、壊疽による強い痛みを伴うため、早い段階で治療の介入ができることが多いです。治療方法は血管内治療やバイパス手術で、下肢の血流を改善させて下肢切断を防ぎます。
もっとも重症化しやすいのはその両方を患っている場合であり、最近はそのような患者さんが増加しています。
下肢壊疽に至るきっかけは?
歩いている人の足元
きっかけは「下肢の外傷」
下肢壊疽は、下肢の血流が高度に障害されている方や下肢の神経障害の方すべてに起こるわけではありません。
下肢壊疽が起こるきっかけの多くは、靴擦れや深爪、胼胝たこ、水虫などによってできた小さな外傷です。
たとえば、足の指に靴擦れができたとき、健康な方であれば傷は時間と共に自然と治癒していきます。しかし、下肢の血流が途絶えている方の場合、傷を治すための栄養や酸素を傷口に届けることができません。このように傷を治す力がないため、皮膚や組織はだんだんと壊疽していきます。
下肢の血流が少ない方であっても、下肢の外傷さえ防ぐことができれば、下肢壊疽を防げる可能性があります。そしてそのためには、自分の足の形に合ったフットウェアを使用することが非常に重要です。
自分に合ったフットウェアを身につける重要性
靴擦れなどによる壊疽を防ぐフットウェア
フットウェアとは、靴や中敷など「足に身につける物」のことです。
自分の足に合わない靴を履いて、靴擦れや胼胝たこができる経験は誰しもしたことがあると思います。下肢の血流障害や感覚障害がある方の場合には、それが下肢壊疽を引き起こす原因になります。
そのため、靴擦れや胼胝たこから生じる下肢壊疽を防ぐためには、一人ひとりの足の形や体のバランス、歩き方などに合わせたフットウェアを使用する必要があります。
足の変形が強かったり、下肢壊疽の既往がある方の場合、フットウェアは、治療用装具(靴型装具や足底装具)として保険診療で製作することができます(一部実費となる場合もあります)。
当院では、フットウェア外来という専門外来で足の健康を考えている靴屋さんや介護靴会社さんをご紹介したり、装具としてのフットウェアを作成したりしています。
自分の足で歩き続けることの大切さ
「自分の足で歩くことができる」ということは、生活の質を維持するうえで非常に重要な要素です。
自分の足に合ったフットウェアを使用しないと、歩くことによって靴擦れや胼胝たこができる恐れがあるため、「歩かないこと」が一番の治療になってしまいます。すると、せっかく足があっても歩くことから遠ざかり、足を切断した場合と同じくらいに日常生活を送ることが難しくなるでしょう。
患者さんによっては、下肢壊疽を回避しなければならないために仕事を続けることができなくなる場合もあり、生活を維持することも困難になります。そのため、医師から歩かないようにといわれても、無理して仕事を続けてしまい、最終的には足を失ってしまう方もいらっしゃいます。
ですから、自分の足で歩き続けて生活の質を維持するためにも、自分に合ったフットウェアを使用することはとても大切なことなのです。
日本の足医療は、発展途上にある
中田弘子先生
欧米には足を専門にみる「足病医」がいる
お話ししてきたように、下肢壊疽を防ぐためにはご自身に合ったフットウェアの着用が必要不可欠です。それにもかかわらず、足を守ることの重要性に対する認識は、日本においてまだまだ薄いのが現状です。
欧米では足の治療の歴史が長く、一般的な医師とは別に、足だけを専門的に診療する「足病医」という資格を持つ医師がいます。そのため、足にトラブルが起きたときの受診先が明確です。
しかし、日本では足を専門にみている医師は数少なく、足にトラブルが生じたときにどの診療科に受診すればよいのか判断に迷われる方は多くいらっしゃいます。
さらに、日本の保険診療の制度上、保険診療として作成できるフットウェアは1年半に1足に限られます(2018年現在)。日本は家の中で靴を脱ぐ文化があり、裸足では足がストレスにさらされている状態であるため、本来であれば家の外用と内用の2足のフットウェアが必要です。
しかし、こうした文化に十分対応した医療保険制度が整っているとは言いにくい状態です。このように、日本における足医療は、まだまだ解決するべき課題が残っています。
足を守る重要性を、できるだけ多くの人に知ってほしい
足のトラブルは、癌や心筋梗塞、脳梗塞などの病気と違って直ちに命に直結することはほとんどありません。しかし、生活をしていくうえで足は非常に重要で、足の病気によって困っている患者さんはとても多くいらっしゃいます。
また、直接的に命にかかわることはなくても、下肢閉塞性動脈硬化症や下肢切断した方の5年生存率は、癌の5年生存率とあまり変わらないという結果も出ています※。
少しでも多くの方に、自分で歩くことができる大切さや、正しいフットウェアを身につける大切さを知っていただき、足を守る重要性について意識が高まっていくことを望んでいます。