横須賀総合医療センター心臓血管外科

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左心時閉鎖術が保険適応に

2020-03-28 05:59:59 | 心臓病の治療
 心房細動に対する左心時閉鎖術は、抗凝固療法と同等の心房内血栓形成に関する予防効果があると言われています。
 心房細動は左房内に血栓ができて、それが剥がれ落ち、血流にのって脳梗塞などの塞栓症を起こす重大な問題となる病態です。この心房細動の社会に対する問題点とは、心房細動の患者さんがものすごく多いということです。心房細動そのものを治す治療としてメイズ手術やカテーテルアブレーションが広く行われていますが、長時間経過した心房細動は、もとの洞調律には治らないので、血栓形成を予防する必要があります。
 血栓形成予防に最も多く行われている方法は抗凝固療法です。従来の凝固の第II,VII,IX,X因子を活性化させて凝固を助けるビタミンKを阻害する作用のあるワーファリンに加えて、最近は第Xa因子(凝固因子)やトロンビンを直接阻害する経口抗凝固薬(NOAC=New Oral Anti Coagulant、DOAC=Direct Oral Anticoagulant, OAC=Oral Anticoagulantとも呼ばれています)が主流になりつつあります。
 しかし抗凝固薬は血栓形成に関する有効性が認められている一方、出血イベントが一定頻度で発生するというデメリットもあります。重大な出血イベント(脳出血、消化管出血など)を一度発生したあとは、そのあとの抗凝固療法が継続できなくなる患者さんも少なくありません。そうした患者さんは脳梗塞などの塞栓症を常に恐れながら生活していく必要があります。
 こうした中、左心耳閉鎖術がこの4月から保険適応になります。約9割の左房内血栓は左心耳内に発生すると言われている為、左心時を閉鎖することで9割の血栓形成が予防でき、これによって抗凝固療法と同等の効果があると言われています。左心耳を閉鎖することで心房細動の患者さんが一生抗凝固療法を継続することから解放されるのです。左心時の閉鎖は、経カテーテル的に左心耳内に傘のようなデバイスを留置する方法と、開胸して左心時の外から、もしくは左房内から左心時を閉鎖する方法があります。カテーテルで閉鎖する方法では抗凝固療法と同等の予防効果があるとの報告もあります。
 この春から左心時閉鎖術が保険適応になることにより、脳梗塞発症の予防が社会的に広まり、不幸な病気の発症が少しでも防ぐことができるようになることを期待します。横須賀市立うわまち病院心臓血管外科では、二種類のデバイスを使用して左心耳閉鎖術を行っており、右小開胸アプローチで弁膜症手術と併施したり、左小開胸アプローチで冠動脈バイパス術と併施することも可能です。また、左小開胸アプローチで単独に人工心肺を使用せずに左心耳閉鎖のみを行うことも可能です。
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新型コロナウィルスパンデミックのための心臓血管外科関連イベント自粛

2020-03-28 04:54:18 | その他
 新型コロナウィルスのパンデミックにより、ほぼすべての国内イベントなどが自粛、延期などの措置が行われていますが、心臓血管外科に関連するものもほぼすべて延期などの措置がとられています。
 主なものとして、2月に福島市で開催予定だった心臓血管外科学会総会が8月に延期、5月に東京都で開催予定だった血管外科学会が10月に延期となり、いずれも会場が変更になりそのためのキャンセル料などの費用も甚大なものとなりそうです。
 当科に関係する内輪のイベントとして、4月の新任者研修会、7月のサマーセミナー、7月の症例検討会なども今年度中止となります。
 世界中のイベントや人の行き来も極度に制限され、この様相はおそらく第二次世界大戦以来ではないでしょうか。

 今後の日本国内、および世界経済の行く末が心配でもあり、また経済状況に伴って個人の貯蓄や資産運用がどうなってしまうのかが不安でもあります。イベント自粛により個人的な支出は減少しますが、住宅ローンなど必然的にかかる費用は減少しません。すでにこの一か月で株価の暴落は著しく、投資信託の基準価格も軒並み半減しており、おそらく配当も半減してしまうのではないでしょうか。収入が減少する人にとっては非常に手痛い打撃です。この経済的なショックも、パンデミックが治まるまでの短期的な辛抱かもしれませんが、それまでに耐えきれない人がたくさん出現してしまうことが不安です。これはまさに、人と人や国の国が戦う戦争とは違いますが、新たな形の戦争と同じです。
 しかし、このパンデミックは必ず終息することを信じて、耐えるのみです。
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