急性大動脈解離、特に上行大動脈に解離がおよぶStanford A型の解離は直ちに手術をしないと救命できない症例が多い重大な疾患です。心臓血管外科の診療の中では緊急手術のなかで最も多いのが、この急性大動脈解離です。死因の一位は、大動脈破裂による心タンポナーデで、他に、大動脈弁逆流、分枝の閉塞による臓器虚血(Malperfusion)などが命を脅かす病態です。
一刻を争う症例が多く、少しでも早く手術室へ入室し、人工心肺を開始して、種々の循環不全に対応する必要があります。
急性大動脈解離が搬送されてきた時点で、常にそのまま手術室に入れる状況とは限らないのが現状で、その時に心臓血管外科チームが他の手術中であったり、手術室がすべて使用中であったり、またICU入室が満床のためできない、心臓血管外科医はいても麻酔科医、臨床工学技士、ナースなどのスタッフが足りないなどの現実的な状況が常にあり得ます。というのも、年間の発生数10万にあたり5~10人の急性大動脈解離のためだけにスタッフが常備していることはあり得ませんし、その緊急対応が必要な症例が同時に複数発生することもあります。
いずれにしろ、一刻も早く手術室へ搬入して救命のための処置を開始することが救命に最も近づくことは間違いありません。そうした状況を少しでも打開するために、東京都では急性大動脈解離スーパーネットワークを立ち上げて、その発生時点で受け入れ可能な施設がネットワークを構築して情報共有することで、適切に対応できる施設はどこか、ということを効率よく受け入れできる体制を作っています。
前任地である自治医科大学さいたま医療センター心臓血管外科においても、急性大動脈解離の相談があるときは、直ちに手術室へ搬入できるかどうかを判断し、受け入れ困難な場合は近隣の主に関連施設に応需を依頼する方針とし、決して手術が出来ないのに不用意に受け入れはしないことで、患者さんが最も適切な対応が最短で受けることが出来るようにしています。
横須賀市においては横須賀市立うわまち病院以外に横須賀共済病院にも心臓血管外科があり、どちらの施設がより早期に対応できるかによって、場合によっては患者を転送することで救命を優先しています。この5年間に2例の急性大動脈解離を横須賀共済病院へ転送をお願いし、また横須賀共済病院からは年間数例の転送症例を受けれいています。この両病院が急性大動脈解離などの緊急手術が対応できないときは横須賀市街の病院へ転送することになり、現実としてはこの5年間で、横須賀市立うわまち病院から転送した大動脈の救急疾患は、横浜市立大学病院、湘南鎌倉総合病院、川崎幸病院にそれぞれ1例ずつを転送依頼しました。それでも9割以上の依頼症例を転送することなく受け入れており、こうした工夫によって急性大動脈解離の救命率は非常に高い数値を維持しております。
横須賀市立うわまち病院の急性大動脈解離の手術死亡率は約3%で、全国平均の約10%を大きく下回っております。これは、最も早く手術室へ搬入できる施設で治療することを優先している結果とも言えます。
多くの急性大動脈解離を治療している施設ほど、救命率が低い傾向にありますが、これはそれほど救命困難な重症例も数多く手術していることを表しており、必ずしも施設の診療レベルを表しているものではないということに注意が必要です。
一刻を争う症例が多く、少しでも早く手術室へ入室し、人工心肺を開始して、種々の循環不全に対応する必要があります。
急性大動脈解離が搬送されてきた時点で、常にそのまま手術室に入れる状況とは限らないのが現状で、その時に心臓血管外科チームが他の手術中であったり、手術室がすべて使用中であったり、またICU入室が満床のためできない、心臓血管外科医はいても麻酔科医、臨床工学技士、ナースなどのスタッフが足りないなどの現実的な状況が常にあり得ます。というのも、年間の発生数10万にあたり5~10人の急性大動脈解離のためだけにスタッフが常備していることはあり得ませんし、その緊急対応が必要な症例が同時に複数発生することもあります。
いずれにしろ、一刻も早く手術室へ搬入して救命のための処置を開始することが救命に最も近づくことは間違いありません。そうした状況を少しでも打開するために、東京都では急性大動脈解離スーパーネットワークを立ち上げて、その発生時点で受け入れ可能な施設がネットワークを構築して情報共有することで、適切に対応できる施設はどこか、ということを効率よく受け入れできる体制を作っています。
前任地である自治医科大学さいたま医療センター心臓血管外科においても、急性大動脈解離の相談があるときは、直ちに手術室へ搬入できるかどうかを判断し、受け入れ困難な場合は近隣の主に関連施設に応需を依頼する方針とし、決して手術が出来ないのに不用意に受け入れはしないことで、患者さんが最も適切な対応が最短で受けることが出来るようにしています。
横須賀市においては横須賀市立うわまち病院以外に横須賀共済病院にも心臓血管外科があり、どちらの施設がより早期に対応できるかによって、場合によっては患者を転送することで救命を優先しています。この5年間に2例の急性大動脈解離を横須賀共済病院へ転送をお願いし、また横須賀共済病院からは年間数例の転送症例を受けれいています。この両病院が急性大動脈解離などの緊急手術が対応できないときは横須賀市街の病院へ転送することになり、現実としてはこの5年間で、横須賀市立うわまち病院から転送した大動脈の救急疾患は、横浜市立大学病院、湘南鎌倉総合病院、川崎幸病院にそれぞれ1例ずつを転送依頼しました。それでも9割以上の依頼症例を転送することなく受け入れており、こうした工夫によって急性大動脈解離の救命率は非常に高い数値を維持しております。
横須賀市立うわまち病院の急性大動脈解離の手術死亡率は約3%で、全国平均の約10%を大きく下回っております。これは、最も早く手術室へ搬入できる施設で治療することを優先している結果とも言えます。
多くの急性大動脈解離を治療している施設ほど、救命率が低い傾向にありますが、これはそれほど救命困難な重症例も数多く手術していることを表しており、必ずしも施設の診療レベルを表しているものではないということに注意が必要です。