横須賀うわまち病院心臓血管外科

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右小開胸僧帽弁形成術における胸骨椎体間距離

2019-04-15 09:31:59 | 心臓病の治療
 右小開胸での心臓弁膜症手術が2018年4月から新たな保険の加算が認められるようになり、今後、各施設でもその手術が広まっていくものと考えられます。
 僧帽弁の手術は、右の小開胸から胸骨と椎体の間のスペースの左側に僧帽弁が存在するため、この胸骨ー椎体間距離が狭いと視野が悪く、また手術操作が難しくなる可能性があります。実際には、逆流テストが正確でなくなるので、実際に心臓を動かしたときに、予想外の逆流が出たり、わずかな逆流が残っても、逆流ジェットが人工弁輪にあたって溶血が起こりやすくなるとも言われています。特に経験的には人工腱索を立てる、人工腱索の長さ調節が困難です。特に若い女性で薄い胸壁や漏斗胸の傾向がある症例がこれにあたり、Narrow Chest Syndromeとも言われます。Narrow Chestの場合は特に胸骨と椎体に心臓が挟まれていることによりレントゲンで心臓が左に寄って心拡大と見謝れたり、肺動脈弁が圧迫されて心房中隔欠損症のような、肺動脈弁性の収縮期雑音やII音の分裂を聴取することがあると言われています。
 一般にはこの胸骨ー椎体間距離が90mm以下の症例が視野が悪いと言われていて、術前のCTで計測して評価します。

 この胸骨ー椎体間距離を小さい症例にこの距離を拡大する方法として、胸骨を前方に吊り上げて持ち上げることが有効な可能性があります。一般に胸骨―椎体間が狭い症例は、肋骨が折りたたまれるように水平になっていることがおおいため、脊椎と肋骨の角度を大きくするように、肋骨が前方に向かって立ち上がるようにすれば、自然と胸骨自身が椎体から離れていくと思います。若い頃痩せていた人が、年をとって太ると、おなかが前に出て、それにあわせて段々ビア樽状の胸郭に変形していくのと同じ原理で、MICSの視野改善ができるのではないか、と考えます。

 こうしたちょっとした工夫の積み重ねが手術の質を改善していくものと考えます。



思いついたままに殴り描いたので、つたない絵ですみません。

本日の心臓血管外科カンファレンスでは、胸骨を牽引する方向は、胸骨を前方に牽引するよりも、より肋骨を挙上する方向、すなわち、斜め上方が妥当で効果的ではないか、との指摘があり牽引角度においてはまだ検討の余地があると思われました。
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