横須賀うわまち病院心臓血管外科

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Redo CABGの適切なアプローチ=MICS

2021-10-10 05:20:12 | 心臓病の治療
 過去に心臓手術の既往のある患者さんで、冠動脈病変の進行により再開胸しての冠動脈バイパス術(Redo CABG)が必要な場合はまれですが経験します。通常、再開胸での心臓手術は高度の癒着があるため副損傷の危険があり、手術リスクは初回手術よりも高くなります。特に過去に冠動脈バイパス術を行った患者さんの場合、開存しているバイパス血管(グラフト)があると、再開胸の際にグラフト損傷して心筋虚血をさらに悪化させてしまう可能性があり、また心膜と心外膜が癒着しているためターゲットとなる冠動脈の同定が困難な可能性があります。
 そこで過去に左開胸していない場合は、左小開胸によるいわゆるMICSアプローチでこの再手術を行うことで、胸骨下の癒着を触ることなく心臓に到達できるので最初に検討すべきアプローチと考えられます。実際に横須賀市立うわまち病院では今年2例のMICSアプローチによるRedo CABGを2例経験しましたが、ターゲットになる冠動脈さえ同定できれば初回手術と同等の視野、操作性での手術が可能でした。可壁にある右冠動脈領域のターゲット同定、吻合のための視野固定が困難な可能性がありますが、左前下行枝、対角枝、回旋枝領域はおそらく正中アプローチよりも手術しやすい可能性があるため是非とも検討すべき術式です。注意点として、左内胸動脈が胸壁に前回手術の影響で癒着している可能性があります。これは正中アプローチで左内胸動脈採取を行ったとしてもこの癒着は変わらず、より癒着の強い方から剥離を開始する必要があるため、MICSアプローチのほうがより有利と思われます。実際に経験した2例のうち、1例は左内胸動脈が胸壁に一部強固に癒着しており、剥離に通常より1.5倍長い時間を要しました。多枝血行再建の場合は、上行大動脈への中枢側吻合は困難なので、左腋窩動脈を利用するか、左内胸動脈へ吻合してCompositeグラフトとして実施するかを検討する必要があります。
 いずれにしろ、普段からMICSアプローチになれておくことが重要と思われます。
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