横須賀うわまち病院心臓血管外科

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LIQS手術の落とし穴

2021-10-08 15:53:07 | 大動脈疾患
 LIQS手術=Less Invasive Quick open-Stentingは弓部大動脈瘤に対して大動脈弓部の切開口から遠位側に向かってオープンステント挿入し、大動脈内側から人工血管部分を縫着する術式です。弓部大動脈置換術をオープンステントの近位側に行なわなくて良いので短時間で手術可能です。当院で行なった症例でも、通常4時間以上かかることの多い、弓部大動脈置換+オープンステント挿入術が3時間ほどで終了することが可能です。
 しかしながら、この低侵襲な術式にも落とし穴があり、重大な合併症を発生するリスクがあります。

① 一つは、Blindで行なう連続縫合で人工血管部分を大動脈内側に縫着する場合に、針の運針で食道をあやまってかけてしまい、食道損傷から縦隔炎を発生するリスクがあります。この合併症を発生させないための工夫としては全周にわたってできるだけ大動脈壁を周囲組織から剥離しておくこと、また、過去に全周マットレス縫合で固定した場合は全ての運針の支出点が食道をひっかけていないことが確認できるため、こうした方法も良い方法です。

② 上記に関連してブラインドで縫着する部分でもし針穴から出血した場合は止血に非常に難渋することがあるということです。全周マットレス縫合で固定し、その大動脈の外側の固定にもフェルトなどを置いて補強することで出血を予防することが出来ます。

 どんな良い術式にもちょっとした落とし穴がありえます。こうしたピットフォールを常日頃から熟知しておくことは重要です。
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