横須賀うわまち病院心臓血管外科

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見栄えの良い冠動脈バイパス術の吻合形態にするには

2019-06-13 02:34:46 | 虚血性心疾患



冠動脈バイパスの術後造影は心臓外科医の腕の見せ所です。この術後造影で、循環器内科を唸らせるにはやはり、出来映えよいフンゴウ形態が最も重要です。一方、残念ながら、出来映えの悪いフンゴウとは、閉塞ではないにしても、フンゴウ部が狭窄してるように見えてしまうものです。こうならないためにはどうするか、なぜ狭窄しているようにみえるのか、詳細な分析が必要です。一般に吻合部の狭窄がないことを見るには、流量とその時の波形を数値化したPI(Pulsulty Index)が指標になり、流量>20ml/分、PI<5が一つの基準と言われています。しかし、こうした数値が良くても、術後の造影で見る角度によっては狭窄に見えてしまうことがあります(A')。一般にはAのような造影、実際にはBのような形態が理想で、Cobra Head Shapeとも言われます。A'のような、実際の吻合の形態ではB'のように、ブーツのような形態になっていると考えられます。B'のような形態になる原因として、B"のように、ブーツにおける足首の前関節部分にかかる糸が両外側方向に牽引して緊張するような位置および角度になっていることが考えられます。この現象を防ぐためには、Yのような位置関係にあるNative血管にある糸の位置をXのようにすることで防止できます。現実的には、気持ち的に糸の運針を、Graftを相対的に歩んで、Nativeを小さくとる、という風にする必要があります。また、この位置のNative側の糸の支出点が切開線から遠すぎても同様の狭窄形態になる可能性があります。また、特に周囲組織の多い静脈では、一見Cobra Headになっているように見えても、内部では狭窄のような形態をしていることがあります。ITAでも同様ですが、これを防ぐには、吻合後の圧をかけた形態のまま、外膜を少し剥離すると圧迫が解除されてCobra Headに直ることがあります。


こうした不安を感じなくていいのは、側側フンゴウにすることも一つの方法です。また、1本の糸で一周する連続縫合が関与している面もあるため、複数の本数の糸で、単結節縫合とすることも一案です。
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