教科書的には先天性心疾患で最も多いのは、小児科領域では心室中隔欠損症、成人では心房中隔切開欠損症と言われています。実際に手術治療に至るものでは心房中隔欠損症でしょうか。近年は超音波検査で発見されたりで小児期に発見されることが多くなり、成人の心房中隔欠損症に遭遇することは少なくなりました。
成人の心臓血管外科診療をしていて最も多く遭遇するのは大動脈弁二尖弁による大動脈弁狭窄症です。人口の1%に大動脈弁二尖弁が見つかるとも言われています。
大動脈弁二尖弁(Bicuspid aortic valve = BAVということもありますが、バルーンカテーテルによる大動脈弁形成治療:Baloon Aortic Valvuloplastyと混同しやすいでしょうか)は、文字通り、通常は三尖で形成される大動脈弁が発生の過程で二尖しかない形態異常です。これにはいくつかの形状の違いによるタイプがあります。全くの二等分されたような形態であったり、一見三尖に見えますが、そのうちの二尖が癒合したような形態のものもあります。二尖が癒合している場合、その癒合したラインは飛行した丘状だったりしますが、この部分を縫線=Rapheと呼んだりします。
三尖から二尖に変形していることで、無症状の方もたくさんいますが、経時的変化も加わり、大動脈弁口の開閉や閉鎖に異常が生じ、弁口が狭くなり大動脈弁狭窄症になったり、合わさりが悪くなって大動脈弁閉鎖不全症になりやすくなります。その両者、狭窄症兼閉鎖不全症となることもあります。現在の大動脈弁狭窄症の一番の原因は加齢により弁尖が硬化することで、65歳以上になって発症することが多いのですが、二尖弁の場合は三尖の人に比較してより早期に発症することが多いです。65歳未満で大動脈弁狭窄症になる患者さんの多くは二尖弁のことも少なくありません。
大動脈弁は上行大動脈の組織と連続しており、心臓の組織の特徴より大動脈の組織の特徴が強いといわれており、大動脈の動脈硬化と大動脈弁尖の動脈硬化の変化は同時に起こったり、また二尖弁の患者さんは上行大動脈の異常が起こりやすいとも言われています。大動脈弁狭窄症の場合は、狭い大動脈弁口を血流が高速で通過する為、その高速の血流が上行大動脈にあたって、大動脈が拡大しやすい(狭窄後拡張Poststenotic Dilatation)と言われています。また大動脈弁閉鎖不全症の患者さんも上行大動脈が拡大していることが多いです。しかし、二尖弁の場合は有意に三尖と比較して上行大動脈が拡大している症例が多く、大動脈解離を発生する可能性も高いといわれており、これは上行大動脈の組織性状が二尖弁の場合は先天的に異常になっており、有意に嚢胞性中膜壊死の頻度が高くなっているそうです。
基本的に二尖弁の治療は人工弁と置換することになりますが、上行大動脈が拡大している場合は、同時に上行大動脈置換術を併施する必要があります。何センチ以上になったら人工血管置換を併施するかは議論となるところですが、一般に三尖の症例では5cm以上で同時手術をするところを、二尖弁の場合は、4.5cm以上、症例によっては4cm以上の症例では同時手術を行います。手術部位が増えることで若干の手術時間の延長(約30分)とリスクの上昇の可能性があるので、その辺を考慮したうえでの手術術式の検討が必要です。拡大した上行大動脈は術中に大動脈解離を発生する危険性も高い為、手術操作には非常に注意する必要があります。
最近は大動脈弁形成術を積極的に行っている施設もありますが、二尖弁の形成は一般に困難です。大動脈弁閉鎖不全症が病態の中心である若い症例に対しては、不均等に分かれている二尖を完全に前後もしくは左右に均等な二尖に変形させて基部再建する方法が行われたりしますが、将来的に再発や狭窄症への進展が見られた場合は再手術が必要になることを前提にした手術といえます。弁形成術の一種である自己心膜を使用した弁再建術(OZAKI手術=AV Neo)での対応も可能で、今後長期に自己心膜が生体弁以上に安定していることが証明されれば広まっていく術式と考えられます。
成人の心臓血管外科診療をしていて最も多く遭遇するのは大動脈弁二尖弁による大動脈弁狭窄症です。人口の1%に大動脈弁二尖弁が見つかるとも言われています。
大動脈弁二尖弁(Bicuspid aortic valve = BAVということもありますが、バルーンカテーテルによる大動脈弁形成治療:Baloon Aortic Valvuloplastyと混同しやすいでしょうか)は、文字通り、通常は三尖で形成される大動脈弁が発生の過程で二尖しかない形態異常です。これにはいくつかの形状の違いによるタイプがあります。全くの二等分されたような形態であったり、一見三尖に見えますが、そのうちの二尖が癒合したような形態のものもあります。二尖が癒合している場合、その癒合したラインは飛行した丘状だったりしますが、この部分を縫線=Rapheと呼んだりします。
三尖から二尖に変形していることで、無症状の方もたくさんいますが、経時的変化も加わり、大動脈弁口の開閉や閉鎖に異常が生じ、弁口が狭くなり大動脈弁狭窄症になったり、合わさりが悪くなって大動脈弁閉鎖不全症になりやすくなります。その両者、狭窄症兼閉鎖不全症となることもあります。現在の大動脈弁狭窄症の一番の原因は加齢により弁尖が硬化することで、65歳以上になって発症することが多いのですが、二尖弁の場合は三尖の人に比較してより早期に発症することが多いです。65歳未満で大動脈弁狭窄症になる患者さんの多くは二尖弁のことも少なくありません。
大動脈弁は上行大動脈の組織と連続しており、心臓の組織の特徴より大動脈の組織の特徴が強いといわれており、大動脈の動脈硬化と大動脈弁尖の動脈硬化の変化は同時に起こったり、また二尖弁の患者さんは上行大動脈の異常が起こりやすいとも言われています。大動脈弁狭窄症の場合は、狭い大動脈弁口を血流が高速で通過する為、その高速の血流が上行大動脈にあたって、大動脈が拡大しやすい(狭窄後拡張Poststenotic Dilatation)と言われています。また大動脈弁閉鎖不全症の患者さんも上行大動脈が拡大していることが多いです。しかし、二尖弁の場合は有意に三尖と比較して上行大動脈が拡大している症例が多く、大動脈解離を発生する可能性も高いといわれており、これは上行大動脈の組織性状が二尖弁の場合は先天的に異常になっており、有意に嚢胞性中膜壊死の頻度が高くなっているそうです。
基本的に二尖弁の治療は人工弁と置換することになりますが、上行大動脈が拡大している場合は、同時に上行大動脈置換術を併施する必要があります。何センチ以上になったら人工血管置換を併施するかは議論となるところですが、一般に三尖の症例では5cm以上で同時手術をするところを、二尖弁の場合は、4.5cm以上、症例によっては4cm以上の症例では同時手術を行います。手術部位が増えることで若干の手術時間の延長(約30分)とリスクの上昇の可能性があるので、その辺を考慮したうえでの手術術式の検討が必要です。拡大した上行大動脈は術中に大動脈解離を発生する危険性も高い為、手術操作には非常に注意する必要があります。
最近は大動脈弁形成術を積極的に行っている施設もありますが、二尖弁の形成は一般に困難です。大動脈弁閉鎖不全症が病態の中心である若い症例に対しては、不均等に分かれている二尖を完全に前後もしくは左右に均等な二尖に変形させて基部再建する方法が行われたりしますが、将来的に再発や狭窄症への進展が見られた場合は再手術が必要になることを前提にした手術といえます。弁形成術の一種である自己心膜を使用した弁再建術(OZAKI手術=AV Neo)での対応も可能で、今後長期に自己心膜が生体弁以上に安定していることが証明されれば広まっていく術式と考えられます。