横須賀うわまち病院心臓血管外科

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心筋梗塞の機械的合併症

2018-04-03 18:27:57 | 心臓病の治療
急性心筋梗塞は生命の危機をもたらす重大な疾患です。突然死の約4割は心筋梗塞とも言われています。

心筋梗塞は突然胸痛が起こって突然死してしまう病気の代表ですが、実際のところ、何が具体的に悪いか、というと

1.心室細動、心室頻拍などの致死的不整脈が起こる
2.梗塞に陥った部位の心筋が動かなくなり、それにより心不全(呼吸不全、浮腫、ショックなど)になる
3.梗塞に陥った心筋が裂けてしまう ⇒ 機械的合併症

この機械的合併症には、
A 心室中隔先行 心室中隔に穴が空いて左室と右室が交通し、左室から右室に向かって大量のシャント血流ができ、心不全になる
B 乳頭筋断裂  乳頭筋に付着する腱索ごと僧帽弁が逸脱して、突然重症の僧帽弁閉鎖不全症が起きて、心不全になる
C 左室破裂   左室の自由壁が破裂することで出血し、心タンポナーデから心不全になる
この三つが言われています

機械的合併症が一度発生すると緊急で治療しないと救命できないことが多く、緊急手術での救命率は毎年行われる全国統計でも約半分と言われています。こうした緊急手術は、術前の状態が悪い患者さんが多く、この術前の状態によって救命率が大きく左右されます。また、それほど多くない頻度の病態なので、手術に慣れていない外科医も少なくないのも救命率の低さに関係していると思われます。心室中隔先行などは修復の仕方に工夫も必要なため、筆者の関連施設で、この緊急手術が必要な際には時々手術支援に呼ばれることも少なくありません。
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