横須賀うわまち病院心臓血管外科

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虚血性心筋症に対する最新の治療

2018-04-14 13:36:01 | 心臓病の治療
 虚血性心筋症 すなわち冠動脈からの血流障害が原因で左室心筋の収縮が悪くなり心不全を呈する病態。これに対する治療としては、治療は限られており、カテーテル治療や冠動脈バイパス術によって血流を改善することができれば、心筋の収縮が改善し、心不全の改善が期待できます。
 しかし、問題になるのはこうした血行再建術が困難な患者さんです。

 これに関していくつか可能性のある治療として、
①TMR Transmyocardial Laser Revasculization :レーザー照射によって心筋に穴をあけて、その穴に内膜が張って新しい血管が新生されるという治療が一時注目され、保険適応にもなりました。もともと、実験的に心筋に針を刺すと、その刺した穴が新たな血管として発達することから始まった治療です。10年以上前に注目を浴びましたが、最近はその治療を行っているという話をめっきりきかなくなりました。

②心筋細胞シート : 世界で初めて日本から発信される先進治療。大阪大学が主導になり、2014年より保険適応となった治療で、骨格筋の細胞を培養してシート状にして、心臓表面に数枚貼り付けることで心筋収縮力が改善することを期待する治療。拡張型心筋症は反応しないNon-Responderが多いため、より効果の期待できる虚血性心筋症が現在の保険適応の治療対象。バイパス手術や僧帽弁形成など可能な治療をすべて行ってもなお、心不全が持続する重症の患者さんが対象。テルモの施設で細胞培養して、実施施設でシート状に細胞の調整を行った後に移植。移植された細胞シートが生存している間に、この細胞から産生されるサイトカインが血管新生や心筋収縮の回復を促すと考えれています。
 最近大阪大学では骨格筋ではなく、iPS細胞を使用した心筋シートを使用した治療を倫理委員会を通過させ、年内にも実際の患者さんに治療開始となることが期待されています。骨格筋細胞よりiPS心筋細胞のほうがより心筋細胞としての機能を有しており生着期間延長と効果の延長が期待されています。

③超音波治療 : 東北大学が細胞に超音波を当てると血管新生作用があること発見し、それを心筋の血管新生に応用するという臨床治験中の治療。装置が安価で効果が立証されれば、お近くのクリニックなど、どこでも手軽に治療が可能になることが期待できる。現在東北大学や都内の大学病院などで治験進行中。2020年までの治験の結果によっては、その次に保険適応になる可能性あり。

既存のベータ遮断薬療法やACE阻害剤、ARB、抗アルドステロン薬に加えて最新の治療を組み合わせることで効果の相乗効果が期待できます。
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