横須賀総合医療センター心臓血管外科

お気軽にコメントいただければ、一般の方の質問にも心臓血管外科専門医が答えます。

明日で震災から9年

2020-03-10 09:37:38 | その他
 明日2020年3月11日は東日本大震災からちょうど9年です。9年前何をしていか、皆さんはどのように過ごしていたでしょうか?
 ちょうどその時は、筆者は初代横須賀市立うわまち病院部長として、勤務していました。金曜は今と同じように外来日で、通常の診察が終わり、予定していたインタビューーの仕事を受けている最中でした。けっこう揺れが長いのに、そのままインタビューを終了するまで継続しました。まさかそのあとあのような大災害になっていることを知るとはその時点では想像もしていませんでしたが、横須賀市内全域が停電し、電車もストップ、信号も点いていない状況を初めて体験しました。
 津波がくるかもしれない、ということで横須賀湾添いの地下に自分の車を駐車していたので、自宅へ夕方もどり、当時はビルの一階に居住していたので可能な限りのブルーレイデッキやテレビなど電化製品を少しでも高いところにあげてから、ショッパーズで帰るだけのお弁当を山のように購入して自家用車で病院に戻り、購入したお弁当を夜勤のナースに配布しました。当日はレンジで解凍するような夕食のナースが多く、電気が使えない状況で夜ご飯がないという人がたくさんいたので配りましたが、その時は全くお金を払ってくれる人はいませんでした。筆者もお弁当の代金をもらおうとは全く思わなかったので、それでいいと思うのですが、そういうときってその日の食事もない人ってけっこう多いという事実を実感しました。
 当日のうちに自衛隊員は横須賀から援助に出向したので横須賀湾は空っぽになりました。
 停電の夜を過ごし、そのあと繰り返される計画停電のため自分の送別会もすべてキャンセルになり、ちょうど4月からさいために転勤だったので、計画停電の中の引っ越しという得意な体験をしました。自分はまったく苦労はしませんでしたが、停電の中、エアコンの取り付け作業をしてくださった人に非常にご苦労をかけてしまい、たいへん感謝しています。
 友人知人に数日連絡をとれませんでしたが、周りの人全員が元気であることを確認したときには安堵しました。

 今までたくさんの災害を経験しましたが、定期的にやってくる災害を毎回のりこえなくてはならい日本、ALL  JAPANで難局をのりこえていきたいものです。
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NP(Nurse Practitioner)に心臓外科医の代わりに大伏在静脈を採取してもらう?

2020-03-09 17:35:20 | 心臓病の治療
 働き方改革の名の下に事務職やその他の業務が軽減化しているなか、帰って仕事が集中して業務が増える一方の医師に対して、医師の仕事の補助、肩代わりを目的にナースの業務範囲を拡大したNP=Nurse Practitionerに期待を寄せられています。横須賀市立うわまち病院でも特定行為認定看護師に、心臓血管外科でチーム医療を行っていくにあたり、外科医は手術に集中できるようにたいへんなサポートを頂いています。他病院からの特定行為の研修を多く受け入れていますが、その中で、
「大伏在静脈の採取もいずれはさせてもらえるんでしょうか?」と素朴な質問を頂きました。
 たしかに、海外ではアシスタントが大伏在静脈を採取し、外科医は後からやってきて冠動脈バイパス術において実際の冠動脈の吻合をおこなうだけ。開胸も閉胸もアシスタントが行う、ということを聞いたことがあります。
 たくさんの手術症例を一人の外科医がこなすにはこうした分業が必要ですが、そこまでのハイボリュームセンターはまだ国内ではなかなかないのが実情です。ナースに大伏在静脈を採取してもらうまえに修練医に経験させる方が優先されるからです。もっとまえに器械だしをするスクラブナースの人手不足のほうがはるかに申告です。
 外科医が一人で心臓血管外科診療を実際に行っている病院も現実としてあるので、そうした限られた施設においては需要があるかもしれませんが、そうした小規模の施設は今後なくなっていく可能性があることをかんがえると、まだまだ日本の施設においては、病棟管理や術後管理、麻酔の補助などに需要が大きいと考えられます。
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上手な医療のかかり方アワードをうわまち病院小児科が受賞しました!!

2020-03-07 15:30:12 | 心臓病の治療
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000027.000017233.html

 第一回「上手な医療のかかり方アワード」厚生労働省医政局長賞 医療関係者部門に横須賀市立うわまち病院小児科が受賞しました!
 病院部門では他に同じ地域医療振興協会の飯塚病院が受賞しました。第一回ということで、認知度は低いのかもしれませんが、たとえ何でも、受賞するということは誇らしいことにかわりありません。内容は上手な小児科のかかり方という内容で、公開医学講座で講演したことが表彰されたことと思います。
 横須賀市立うわまち病院の売りのひとつは、多くのスタッフをかかえる小児科であることは間違いありません。100名を超える医師が在籍する横須賀市立うわまち病院ですが、その1割以上の16名が小児科医で、毎日2名当直体制を敷き、NICUも運営しています。
 
 心臓血管外科がまだ県内でも導入している施設が少ないNO吸入療法(一酸化窒素吸入療法)の施設認定を取得し実際に治療を開始した際、NICUを抱える小児科も同時にこの施設認定を取得しています。

 次年度のアワードには心臓血管外科も応募してみようと思います。
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外科医の手洗い

2020-03-07 12:17:08 | その他


 外科医が手術の際に手の滅菌のために行う手洗いには、いくつかの作法がありますが、その中の基本的なこととして、指先を最も清潔に扱うということです。手を消毒することによって手術時の感染が減るということが発見されたのは1800年代後半で、さらに手袋をしたほうがさらに感染率が低下するということも、消化器外科手術が始まった1800年代後半に提唱された、と外科学の歴史の授業で習いました。
 その中で、特に指先、手掌など手首より末梢の滅菌が最も重要である為、滅菌水で手洗いする場合は、手から肘にかけて手洗いしたときに、肘についた水が手先の方へ垂れてこないようにして洗う作法が重要、ということで、外科医のドラマのイメージのように、手を挙げた状態で手術室に入ってきて、ガウンを着せてもらい最後に手袋をはくという手順になります。

 上記の過程の中で、手洗い中や手袋を履くまでの間に肘から下に手首を決して下げないように教育されてきた古い外科医?としては、昨今のドラマ(脳外科医の話)で手洗いシーンで肘より下に手を下げて手洗いしているシーンをみるとどうしても納得いきません。医療監修がその道のプロが指導してることが多い昨今ではその辺まで気を付けてドラマつくりがされていることが多いと思うのですが。

 この感想への反論としては、最近は手洗いは滅菌水ではなく水道水で十分で、手洗いは手の汚れや皮脂を落とす作業が目的であり、手指の滅菌はそのあとに行うアルコール液の擦り込み(ラビング法)が主な作業によるため水道水での手洗いでの今までの作法はもはや関係ない、ということなのかもしれません。
 また、脳外科の手術では創部感染はほとんど発生しないため(脳が露出するような外傷であっても、その創部は感染しないと言われている)、手洗いや滅菌ついていちいちうるさく言う必要はない、ということかもしれません。

 こうした年寄りの小言のような内容を書いている時点でもう「お年」なのかもしれません。
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喫煙は新型コロナウィルス感染の重症化させる

2020-03-05 18:44:37 | 心臓病の治療
NEJMに武漢を中心とした中国のCOVID19感染症患者1099名の臨床所見のまとめが発表されました。

1、喫煙者は生涯非喫煙者よりも重症化あるいはICU・レスピレータ管理・死亡というエンドポイントに到達するリスクが大きかったことがわかりました。
2、生涯非喫煙者とくらべて、現在+過去喫煙者の重症化リスクが2.19倍、人工呼吸器装着or死亡のリスクが3.24倍となっていました。

また日本禁煙学会からは「喫煙所こそが、ウイルス感染のクラスター製造所である」とうことも、ぜひ合わせて拡散していただきたいとのことです。早急な喫煙所の閉鎖を
お勧めしたいとのことでした。

横須賀中央地区は路除喫煙禁止に指定されているにもかかわらず未だに路上で喫煙したり、歩きたばこしていマナーの悪い人間がたくさんいます。これはやはり、強制力ももって取り締まりしないと、なくならなそうですが、喫煙者には他人の迷惑のことも考えてもらいたいものです。

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CABG術後の再CABG

2020-03-04 09:36:51 | 心臓病の治療
 冠動脈バイパス術後に、新たな冠動脈病変が進行して再度冠動脈バイパス(CABG=Coronary Artery Bypass Grafting)を追加しなければならなくなった場合、どのようなアプローチがあるか。
①再胸骨正中切開で、癒着を剥離してCABGを追加する
②左開胸や上腹部切開のみで、再胸骨正中切開を避けてCABGを追加する
という選択肢があります。いわゆる後者はMICSアプローチでのCABG追加ということになりますが、こちらの最大のメリットはCABGが開存している場合は、その損傷のリスクを避けることが出来るということに限ります。しかしながら左開胸から上行大動脈への中枢側吻合や右内胸動脈の採取は困難と考えられますので、基本的には長めの大伏在静脈を採取して、下行大動脈や左腋窩動脈に中枢側吻合を行っての、左前下行枝、回旋枝領域への末梢吻合、と実施可能な手技は限られると思います。
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大網充填術:最も読まれている記事

2020-03-04 09:27:33 | 心臓病の治療
 この心臓血管外科診療に関して雑多なコメントを記載している内容となっています。
 もともと、これは心臓血管外科の診療や現実に関して間違った内容で記載されている他のブログ等に関しての反論として始めたものになりますが、かれこれ二年がたっています。いろいろと私見を記載させて頂きましたが、この中で最も読まれている記事は、「大網充填術」に関するものです。
 ホームページ等にはいろいろな心臓や血管の病気や治療法の説明が記載されていて検索する人は主にこのホームページの情報を集めて知識を集めているのが現状だと思います。しかしながらこうしたホームページに記載されている内容は、情報提供側が知って欲しい内容を記載しているのであって、知って欲しくない内容や不必要と判断された内容は一切記載されていません。まさにただのコマーシャルです。
 大網充填術の内容に関して記載されている記事はそういう意味で少ないのだと思います。それでいて、実際に術後感染が発生したりした際に、病院側から説明されてそれを理解しようとして検索すると実際はあまり情報が得られないという現実があるのだと思います。
 こちらで記載している内容は私見でもありますが、スタッフや患者さん、ご家族の方々から実際にあった質問や筆者が行った説明の内容などに関して記載してあるので、現実に近いものと思います。こうした疑問がある、など、あった場合はこれからも私見ながら記載を続けていきたいと思います。
 他には、左上大静脈遺残など、ニッチな内容の記事も多く読まれ散る内容です。
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心室中隔欠損症の閉鎖手術:MICS可能かどうか

2020-03-03 17:30:13 | 心臓病の治療
 心室中隔欠損症は最も多い先天性心疾患の一つで、左心室から右心室へ短絡する血液量が多いと右心室の負担が増加し、そこから左心房、左心室へ回ってくる血液量も増加するため左心室の負担が結果的に増加する両心負荷の状態となります。この短絡量が多い場合は手術で欠損孔を閉鎖する必要があります。
 一般的には胸骨正中切開での正中アプローチでの手術が行われていますが、症例によっては右小開胸によるいわゆる低侵襲アプローチも可能です。これは心室中隔欠損症のタイプによって、すなわち欠損孔の位置によって可能かどうか決定されます。成人の場合は、ほとんどの場合は肺動脈弁下型か、膜性部型のどちらかです。他に漏斗部型や心内膜床型は珍しいうえに複雑な手術が必要となることが多く、また筋性中隔型は手術適応にならないことが多いと認識しています。肺動脈弁下型の場合は肺動脈を切開して、肺動脈弁ごしに欠損孔に到達してパッチ閉鎖するため、正中からのアプローチにする必要があります。一方、膜性部型の場合は、右房切開からのアプローチになるので通常のMICS=右小開胸によるいわゆる低侵襲アプローチが可能となります。
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新型コロナウィルス感染症(COVID-19)と心臓血管外科診療

2020-03-03 17:19:33 | 心臓病の治療
 連日新型コロナウィルス感染症のついてのニュースが世間を賑わせているだけでなく、社会生活に深刻かつ重大な影響を与えている今日この頃です。まさにこれは災害に対する対応を迫られている現状ですが、大地震などと違うのは、社会資源が破壊されることなく一時的に停止しているだけ、という状況ですので、正常に機能が回復した途端にもとの日常に復帰できるという点です。マスクやその他の資材が手に入らない状況も、向上が破壊されたわけではないので不足の状況は一時的なはずです。

 心臓血管外科診療に関しては横須賀市立うわまち病院は、指定感染症の入院施設ではないため、新型コロナウィルス感染症が発生しても入院治療を現時点では行う段階ではなく、診断された患者様が発生した場合、保健所と協議の上、最初は指定施設へ移動して入院してもらうことになります。今後患者数が増加して指定された施設では収容できなくなった場合は、一般病棟へ入院することになり、そうなった場合は、横須賀市立うわまち病院にも感染した患者様を入院受け入れしていく可能性があります。その対策のために毎週対策会議が繰り返し行われていますが、まず最初に段階としては、隔離可能な病状へ入院してもらい、それでも数が多くなった場合は一般病棟へ影響が出て、場合によっては集中治療室で管理するということになると、集中治療室を二つに機能と場所を分けて管理することになります。それでも集中治療室の機能が損なわれるまでに患者数が増加した場合は、予定の心臓血管外科手術は延期となり、緊急手術にのみ対応することになります。現在休校措置などいろいろな対策が行われておりますが、それでも大流行した場合は、こうした日常診療に大きな影響がでる可能性があり、我々心臓血管外科医も、COVID-19に対する診療に直接従事する可能性があります。現時点では内科のドクターが診察に当たりますが、万が一、内科医師が感染したりして手が足りなくなると我々外科医にも必然と対応を迫られることになります。
 このまま終息してくれることを祈るばかりです。
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